えぇ・・・
日常的に繰り返し強い音にさらされることで音響外傷を受け続け、内耳がダメージを受けることで「騒音性難聴」に陥る可能性があります。イヤホンやヘッドホンを通して爆音を音楽を聞き続けることで騒音性難聴になる危険性がありますが、惑星科学者であるPhil Metzger氏は「トイレのタンクのふたを落とした音」を原因として騒音性難聴になったことを明かしており、周波数や音の大きさを計算することで何が起こったのかを究明しています。
Thread by @DrPhiltill: “1. Wanna hear a weird but true story? (I have a few minutes to type, so here goes). I almost lost my hearing from the lid on the tank of a t […]”
https://threadreaderapp.com/thread/979583605637877760.htmlMetzger氏がトイレのタンク内の修理を終え、タンクにふたを戻そうとした時に、ふたが手を滑りおち便器のふちにぶつかったとのこと。ふたが落ちた距離は20センチメートルほどで、セラミック製の便器やふたが欠けたり割れたりすることはなかったのですが、その時に「音」が響きました。
この状況を聞いただけでは何か致命的なことが起こったようには聞こえないのですが、音が響いた瞬間にMetzger氏はショックを受け、よろめきながらトイレを後にし、リビングで膝をつきました。何が起こったのか理解できなかったMetzger氏ですが、次第に体の異変の正体に気づきます。Metzger氏がスペースシャトルの通信システムで行う音声テストのように「Commcheck 1,2,3」と声を出してみたところ、声は「カズーを通して話している時のように聞こえた」とのこと。カズーとは口にくわえながら声を発し、共鳴・振動させて演奏を行う楽器です。
「たった20センチ落下したタンクのふたが聴覚に深刻なダメージを与える」ということが信じられなかったMetzger氏がセラミックの音速とトイレのふたのサイズから周波数を求めると、発生した音は3.5キロヘルツであると推測されました。3.5キロヘルツという音は人の可聴範囲にあります。便器のふちのサイズを内側の小さい方で計算するとやや高い周波数が求められたため、2つの周波数が調和して特定の波長を生み出したものとMetzger氏は見ています。
便器のふちは欠けたり壊れたりすることがなかったため、衝撃のエネルギーのほとんどは「音」という形で現れました。タンクのふたはアンテナのようにへこんでおり、顔の近くでふたと便器のふちがぶつかることで、エネルギーが自分の顔に集中して注がれたのだとMetzger氏は述べています。
その後、エネルギーは耳の中にある聴覚を司る感覚器官・蝸牛に届きます。蝸牛の中にある基底膜は周波数によって振動しやすい位置が異なるので、トイレのふたによって生じた「特定の周波数」のエネルギーは、基底膜の特定箇所に集中し、Metzger氏はダメージを受けたというわけです。
翌日には聴覚がやや戻っていたものの、それでも人の話し声は「カズーを通して響く音」のように聞こえたとのこと。聴覚学者の友人から「48時間以内に改善しなかったらダメージは永遠に残ることになるので病院に行くように」という助言を受けたMetzger氏ですが、幸いにも48時間後には回復したとのこと。
by Linus Nylund
ケネディ・スペース・センターで仕事を行う際には聴覚保護を含めたラボの安全の責任を負っていたというMetzger氏ですが、トイレタンクのふたを落として聴覚にダメージを負う潜在的危険性については考えたことがなかった、と語っています。
便器のふちから響いた音について計算したところ、20分の1秒の速さで跳ね返り50センチメートルの距離を移動した音の大きさは138dBであったとのこと。140dBでジェットエンジンの近くの音に等しいと言われているので、これは相当の大きさといえます。また、周波数の幅が狭かったことも、衝撃が集中することになり耳に悪影響をもたらしたとのこと。素材の表面が固くエネルギーが音になるまでの時間が短かったことや、素材にダメージがなかったことも、強烈な音を作り出す原因として考えられています。「より安全な便器のふちを作るには、分子のつながりを破壊することにエネルギーを使わせ、衝撃を分散させる必要がある」とMetzger氏は説明しました。
情報源:「トイレのタンクのふたを落とした衝撃音で難聴になった」という科学者が何が起こったのかを究明 – GIGAZINE
マジかよ。