第2局は9月12日
2023.9/9 10:00
いよいよ藤井聡太七冠が、8冠達成なるかという注目の王座戦が、8月31日、神奈川県秦野市・鶴巻温泉『元湯陣屋』から始まった。
陣屋は1952年、木村義雄王将―升田幸三八段(ともに当時)の王将戦で、本来は升田が香を落として指す対局場だった。
しかし升田が前日、呼び鈴を押しても誰も出てこなかったという理由から、対局を拒否した事件があり、将棋界が大混乱となったことがある。現在も対局が行われる、歴史のある旅館だ。
タイトル保持者の永瀬拓矢王座はこの日、着物姿で対局場に現れた。
将棋のタイトル戦は着物でというのが普通だが、永瀬は最初の頃はともかく、最近はタイトル戦でも洋服で通してきた。
普段通りの背広の方が対局に集中しやすく、良い将棋が指せるということだろうが、それに批判的な人もいた。
しかし今回は対局規定の変更があり、久しぶりに着物で臨んだ。自分が藤井の8冠を阻止する大きな役目を担っていることや、タイトル保持者としての矜持(きょうじ)を見せたいという思いもあったのかもしれない。
振り駒はと金が多く出て、藤井の先手。今期先手番で負けなしの藤井に対して、永瀬が用意した作戦は、角換わり早繰銀だった。
後手番では勝率が悪いといわれる作戦をあえて選んだのは、相手の研究を外す意味もあったかと思う。ただし藤井がこの戦法が苦手ということはなく案の定、中盤過ぎは藤井のペースとなる。
しかし永瀬は、少し不利のところから崩れず、一見遅そうな歩で反撃すると、藤井はそれを無視して、一気に永瀬の玉に迫る。風前のともしびに見えた永瀬玉は意外に抵抗力があり、その後も自陣に飛車を打つなどして丁寧に受けに回り、隙を見て反撃に転じた永瀬が、第1局に勝利したのだった。
永瀬にすれば、この王座戦以外では、竜王戦の決勝は伊藤匠七段に敗れ、また棋王戦コナミグループ杯でも菅井竜也八段に敗れるなど、現在タイトル挑戦から遠い所にいるだけに、このタイトル防衛に対する意気込みは大きいはず。
永瀬にしても昨年、棋聖挑戦で初戦を勝った後、3連敗でタイトルを逃した経験があるので、これで五分くらいのつもりではないだろうか。
かつて7冠を目指す羽生善治六冠を、谷川浩司王将(ともに当時)が一度は止めたことがあったが、永瀬がその再来の壁となるか、やはり地力で藤井が8冠を達成するか、楽しみな王座戦となった。
■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。
情報源:【勝負師たちの系譜】先勝の永瀬拓矢王座、藤井聡太の〝8冠阻止〟なるか かつて羽生善治の7冠を一度は止めた谷川浩司の再来となるか(1/2ページ) – zakzak:夕刊フジ公式サイト
五番勝負
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▲藤井聡太竜王・名人-△永瀬拓矢王座(棋譜中継)
永瀬はそっと置くように☖3五銀を着手した。藤井はグラスに入ったお茶を口に含み、30秒を読まれたころで投了を告げた。終局時刻は21時11分。消費時間は☗藤井5時間0分、☖永瀬5時間0分。開幕局は永瀬が制した。第2局は兵庫県神戸市「ホテルオークラ神戸」で行われる。 投了以下は☗3五同歩☖同金☗同玉☖2五金☗4六玉☖3六金打までが一例の詰み。 【終局直後の様子】 https://kifulog.shogi.or.jp/ouza/2023/08/post-97fc.html
21時11分 終局
150手 3五銀まで、△永瀬王座 の勝ち
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防衛に向けて白星発進。
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