へぇ・・・
2023.8/19 15:00
世間から期待された、藤井聡太七冠の8冠独占が、いよいよ現実味を帯びてきた。
私は1年前、王座戦の永瀬拓矢王座―豊島将之九段戦の勝者が、来年最後の1冠を賭けて藤井と戦う相手になる可能性がある、と書いたことがあった。
考えてみれば普通はあり得ない話で、まだ名人と棋王は渡辺明九段が持っていたし、自身が持つタイトルをすべて防衛する必要もある。さらに一度も挑戦者になったことがない、王座戦で挑戦権を得て、初めて実現する話だからだ。
しかし今の藤井は、かなり勇み足的なことを予想しても、それを実現してしまう実力と貫禄がある。
正にこの貫禄とも言うべきことが、王座戦の挑戦者決定トーナメントで起こったのだ。
圧巻はトーナメント2回戦の、対村田顕弘六段戦だった。村田はタイトル戦に一度も出たことはないが、詰将棋の名手と言われる強豪。この村田相手に藤井は大苦戦。最後はAIの形勢の数値が村田の94%まで追い込まれたが、村田が一番安全に勝とうとした手が大悪手で逆転した。
この時村田にとっては、自分の勝ちが見えたことで、何とか安全に勝ちたいという、優勢な方が恐怖心を抱いたのではないかと思ったものだった。
そして決勝の対豊島九段戦。お互いに雁木の構えから、後手の豊島が徹底して受けに回る展開となり、一進一退。藤井が銀取りを放置して飛車を成り込んだのが鋭く、ペースをつかんだ。
しかし豊島も上部に逃げ、決め手を与えない粘りを続けると、藤井も比較的簡単な寄せを逃がしてしまう。
ところがそれを、控室の検討陣や相手の豊島も気が付かないのだ。終盤で藤井が間違える訳がないという信用は、大きな財産だ。
一時は豊島がハッキリ勝ち筋になったにもかかわらず、そういう雰囲気を感じさせない図太さも藤井にはある。
そして勝ちの局面で負けと判断していた豊島の悪手で、159手の熱戦は幕を閉じた。
15、16日に行われた「伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦七番勝負」の第4局に敗れたが、藤井の防衛が予想されるから、王座戦が真に8冠の舞台となる。
迎え撃つ永瀬王座は、藤井の独占を一番情けないと思う棋士だから、過去、羽生善治九段の7冠実現を一度は阻止した、谷川浩司十七世名人の再来となれるかに注目したい。
■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。
情報源:【勝負師たちの系譜】藤井聡太七冠、近づく〝大偉業〟8冠独占を実現してしまう実力と貫禄、圧巻だった対村田顕弘六段戦(1/2ページ)
ほぉ・・・
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