棋聖戦
2023.7/8 15:00
藤井聡太棋聖に、佐々木大地七段が挑戦している第94期ヒューリック杯棋聖戦第3局は、静岡県沼津市の『御用邸』で行われた。
第1局のベトナム・ダナン対局を藤井が制した後、次の淡路島対局で藤井が最終盤、優勢な局面から飛車を切って決めに行ったのが悪く、巧みに佐々木に切り返され、藤井にしては珍しく終盤での逆転負けの後の第3局だった。
沼津市は10年前から棋聖戦を誘致していて、今年は市制100周年に当たる、イベントの一環でもあった。街中に「沼津対決」と書かれた旗が立てられ、前夜祭は着席で約350人が参加する盛り上がり方だ。
この対局、2人にとっては大きな意味があった。藤井にすれば8冠を目指すのに、防衛に近づく大切な一局。
しかし佐々木にとっても、同年に棋士になった藤井に追いつくために、勝ち星を先行させたい一局だからだ。
佐々木の強みは、藤井に散々やられた棋士と違い、平常心で指せること。これまで藤井に公式戦3勝3敗の成績が証明している。
かつて師匠の深浦康市九段が「羽生キラー」と呼ばれ、対戦成績がずっと五分で、王位のタイトルを羽生からもぎ取ったような棋士になれるかどうかを、試される一番とも言える。
使用する駒は、地元富士宮で活動する駒師、山田友生氏作・錦旗書の赤柾駒。最近はタイトル戦で使える駒を作れる駒師が多くなった。
対局は藤井の先手番で、角交換腰掛銀に誘導。後手の佐々木が右玉に移す趣向に出ると、藤井はいきなり桂を端に跳ねる新手を出して、意外な所から戦いが始まった。
佐々木は駒得を果たしたものの、歩切れで攻めあぐみ、城主一人で守っている砦が崩せずに、苦慮していた。
精神的にも苦しんだ様子で、兵の損害を覚悟でやっと城門を突破したものの、城主には一目散に逃げられ、代わりに出て来た敵兵に討ち取られる形で、佐々木は投了を告げた。
弟子の応援に来ていた師匠の深浦も「(藤井は)こんなに強いのか」という感想を述べて、早々に帰って行った。
「チャンスらしい局面がなかった」と、局後佐々木はインタビューに答えていたが、かなり堪えた負け方だったのは間違いない。
この相手には勝てないと思ったら終わりだが、今後佐々木が藤井を追いかけることができるかどうか、次局以降の指し方に注目したい。
■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。
情報源:【勝負師たちの系譜】佐々木大地七段、棋聖戦沼津対決で藤井聡太に苦しい「一敗」 王位を羽生善治からもぎ取った師匠・深浦九段のようになれるか(1/2ページ) – zakzak:夕刊フジ公式サイト
五番勝負の結果
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▲藤井聡太棋聖-△佐々木大地七段(棋譜中継)
もらったばかりの銀を打ちつけて、手堅く受けた。飛車を引く手に☗9七飛がきつい、と深浦九段。佐々木が天を仰ぐ。 この局面で3分使い、佐々木は投了した。以下(1)☖7三飛なら☗9七飛☖9三歩☗7四歩☖同飛☗9三飛成、(2)☖5六成銀なら☗同歩☖6五飛☗6六歩☖同飛☗6七銀がそれぞれ予想される進行だが、いずれも形勢は大差で、後手の挽回は困難だ。終局時刻は18時37分。消費時間は☗藤井3時間33分、☖佐々木3時間58分。これにより、シリーズ成績は藤井2勝、佐々木1勝に。五番勝負第4局は、7月18日(火)に新潟県新潟市「高志の宿 高島屋」で行われる。 ※局後の感想※ 45手目☗9七桂からの指し方はうまくいっているのか分からなかった、と藤井。ただ、佐々木としては駒が下がる形になって苦しいと感じていたようだ。後手の何がまずかったのかや修正手順などは、検討では示されなかった。感想戦終了は19時18分。 【終局直後】 https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2023/07/post-bb10.html 【感想戦】 https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/2023/07/post-10da.html
18時37分 終局
107手 8六銀まで、▲藤井聡棋聖 の勝ち
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防衛に王手
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