佐々木大地七段
2023.6/18 10:00
藤井聡太七冠が、史上初の8冠に向けて歩みつつある過程で、最後の難関となるのが、棋聖と王位の防衛戦である。
挑戦者はいずれも、藤井と同期の佐々木大地七段。長崎県対馬市出身で、根性があって容易に負けにくいところは、師匠の深浦康市九段(同県佐世保市出身)によく似ている。
私が奨励会員だった時代(1968~)は、地方から来た子の方が帰る所もないせいか、皆根性で棋士になったものである。佐々木には師匠同様の、都会の子に負けてたまるかという、昭和の雰囲気がある。
佐々木は棋士になった直後から、勝率は7割をキープするほど高かった。しかし順位戦で毎年好成績を挙げながら、C2から昇級できなかったせいか、注目度は低かった。
しかしここに来て、大輪の花が咲いたかのように、活躍が目立ってきた。
ヒューリック杯棋聖戦の決勝トーナメントでは準決勝から、渡辺明名人(当時)、永瀬拓矢王座と対戦。また王位戦の挑戦者決定戦は羽生善治九段との対戦だったが、佐々木はどちらが格上か分からないほどの、完璧な勝利で挑戦権を得たのだった。
ヒューリック杯棋聖戦第1局は、ベトナムの『ダナン三日月』で行われた。このところ毎年、三日月グループは千葉のホテルに対局を誘致していて、今回ベトナムに進出したことから、2019年の叡王戦以来4年ぶりに海外対局が実現したのだった。
藤井は名人戦を勝って、7冠を達成した4日後の対局で、初の海外対局に疲れが心配されたが、むしろ楽しんでいるように報道された。
藤井の先手番で始まった将棋は、2人の得意な角換わり腰掛銀に。ところが開始早々「私の方が研究してますよ」とばかり、ものすごい勢いで進み、あっという間に終盤の入り口までたどり着いた。
佐々木にしても、気持ちだけは負けないつもりがあったと思う。
形勢はやや藤井ペースかと思わせたが、佐々木の放った角打ちに、藤井が、大切な攻め駒を解消してまで受け駒を手に入れたのには、皆仰天。藤井でも迷うことがあるものかと思った次第。
ところが今度は佐々木が、チャンスが来たと思ったか、焦って攻めに出て自滅した。普段なら絶対に焦った手を指さない佐々木にして、初のタイトル戦、特に海外での対局は見える世界が違ったのだろうか。
次局以降、佐々木が平常心で指せるのかが、シリーズの勝敗のカギとなるだろう。
■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。
情報源:【勝負師たちの系譜】棋聖戦五番勝負 藤井聡太七冠、8冠への過程で最後の難関となる防衛戦 勝敗の鍵は佐々木大地七段の「平常心」(1/2ページ) – zakzak:夕刊フジ公式サイト
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防衛に向けて幸先の良い白星スタート
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