斎藤慎太郎八段
2023年6月16日 19時15分
将棋の斎藤慎太郎八段(30)は16日、第82期名人戦・A級順位戦1回戦の佐藤天彦九段(35)戦を迎えた。王座の獲得歴があり、第79・80期のA級を制して名人に連続挑戦した実力者中の実力者。史上最年少名人が誕生した今、何を思いながら新しい戦いを始めたのだろうか。6月1日、午後6時半過ぎ。
渡辺明名人に藤井聡太竜王が挑戦した第81期名人戦七番勝負第5局は終局へと向かっていた。
舞台となった長野県高山村の旅館「藤井荘」の控室は、上昇するクライマックスの熱に満たされていく。史上最年少名人が誕生しようとしていたからだ。
同じ頃、斎藤慎太郎は現場から遠く離れた大阪市福島区で戦いを見守っていた。関西将棋会館2階道場で催された大盤解説会でマイクを握り、詰めかけた将棋ファンに対して歴史的瞬間の訪れについて語り始めていた。
午後6時53分。終局の時、斎藤らしい言葉で戦いの終わりを表現した。
「美しい投了図ですよね」
解説とは第三者の目においてなされるものだが、完全なる客観を持っていたわけではなかった。また、持つべきでもなかった。
昨年も一昨年も、自分自身が名人戦の対局室にいて幼い頃から夢に見続けている称号を目指して戦っていたのだ。
今年もA級順位戦の最終一斉対局の日までわずかながら3期連続挑戦の目を残していた。自分があの将棋に勝ち、誰かがあの将棋に敗れていれば運命は変わっていた。栄光の舞台に立つ者だけがまとう和服を着て、再び名人位を目指して渡辺との決戦に臨んでいたかもしれなかった。
けれど、目の前にあったのは厳然たる現実だった。前期、前々期の名人戦で自らが挑み、いずれも1勝4敗で退けられた渡辺という巨壁を圧倒し、20歳の若者は瞬く間に名人になったのだ。
頂点を争う棋士として、どんな思いだったのだろうか。
情報源:斎藤慎太郎八段、名人に挑んだ者の独白「藤井聡太名人のいる時代に」:朝日新聞デジタル
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A級順位戦
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