名人戦第5局を終え、感想戦に臨む藤井新名人(左)と渡辺前名人 =1日、長野県高山村

【勝負師たちの系譜】藤井聡太七冠の勝負術 トップ棋士に重圧与える「怪物」に 渡辺明名人に意識「平凡な手では勝てない」-zakzak:夕刊フジ公式サイト

へぇ・・・


2023.6/10 15:00

名人戦第5局を終え、感想戦に臨む藤井新名人(左)と渡辺前名人 =1日、長野県高山村
名人戦第5局を終え、感想戦に臨む藤井新名人(左)と渡辺前名人 =1日、長野県高山村

5月31日~6月1日の2日間、長野県高山村の「藤井荘」で行われた名人戦第5局で、挑戦者の藤井聡太六冠が勝利し、4勝1敗で名人位を奪取。この瞬間、2つの大記録が生まれた。

谷川浩司十七世名人が40年前に達成した、21歳2カ月で名人の記録を、4カ月短縮する20歳10カ月で達成し、最年少名人の記録を塗り替えた。この記録更新は今年が、最後のチャンスだった。

それと同時に羽生善治九段が持つ、25歳4カ月での7冠の記録も、大幅に更新したのだった。

記録のことは、毎日報道されたから、本欄では私なりの感想を述べてみたい。

この第5局でまず私が感じた違和感は、先手の渡辺明名人が誘導した角交換腰掛銀を、挑戦者の藤井が避け、雁木に組んだことだった。

今シリーズの渡辺は、居合抜きの相掛かり、銃での打ち合いの角交換腰掛銀はやや分が悪いと見たか、刀で切り合う雁木の戦いに誘導した。

研究量で勝負がつく戦法より、経験の差が出る雁木の方が勝機は多い、と踏んだのだと思う。

この手法はかつて大山康晴十五世名人が、若い頃の居飛車党を捨て、息の長い振り飛車党に転向して、タイトルを独占し、亡くなるまで第一人者だったのと似ているかと思う。

しかし雁木でも敗れ、渡辺は最終局となるかもしれない第5局は、原点に戻ってもう一度角換わりでというのに、藤井は「イヤ、あなたがやりたい雁木でいいですよ」と言ったのである。

これを見て私は第32期名人戦、中原誠名人―加藤一二三八段(ともに当時)戦を思い出した。

中原は加藤相手に、矢倉で全く同じ戦型を続け、先後どちらを持っても私が勝ちますよとばかり、4連勝で防衛したのだった。これをやられると、相手のダメージは大きい。

今回藤井がどういうつもりだったかは分からないが、これはAI流でなく、人間の勝負術である。

また終盤戦で、渡辺が悪い局面ではなかったのに、出てきた角を普通に取れなかったのも、今まで散々負かされ、「平凡な手では勝てない」という意識が強過ぎたのではと思わせた。

羽生とのALSOK杯王将戦の時にも感じたが、藤井はトップ棋士相手にも、普通の手が指せなくなるほどのプレッシャーを与える、モンスターになったと感じさせた今回の名人戦だった。

■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

情報源:【勝負師たちの系譜】藤井聡太七冠の勝負術 トップ棋士に重圧与える「怪物」に 渡辺明名人に意識「平凡な手では勝てない」(1/2ページ) – zakzak:夕刊フジ公式サイト


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