叡王戦第4局
2023.6/3 15:00
藤井聡太七冠が8冠制覇を目指す上で、大きな山場と思われた菅井竜也八段との叡王戦防衛戦が、5月28日に終了した。
菅井はこれまで藤井が戦ってきた相手と違い、純粋な振り飛車党で、力で来いというタイプ。特に得意とする穴熊からの捌きが決まると、誰が相手でも手の付けられない勝ち方をすることが多い。
今回の五番勝負も、菅井は1局目こそあまり良い所なく敗れたが、第2局は十八番の穴熊を採用して、前述のような必勝パターンで快勝した。
藤井も第2局以降は、自身も穴熊に潜り、相穴熊の戦いを最後まで続けた。そうしないと対抗できないと感じたからであろう。
第3局も終盤、菅井にチャンスがあり、勝っても不思議ではない将棋だったが、相手に疑心暗鬼をもたらす藤井の終盤力の前に、緩んだ手を指し、チャンスは消えた。
そして第4局は、千日手の指し直しを2回も繰り返す、大激闘となった。1回目は序盤の千日手だったが、2回目は最終盤での千日手で、藤井の攻めを菅井が同じ手順で受けて千日手となった。
しかし実際は、千日手を打開し、他の手で受ければ菅井の勝ち筋だったのだ。打開したら負けになると思わせる終盤力が、藤井の武器である。
そして一番悪いのが、これからまだ指し直しというときに、今の将棋が勝ちだったことに気づいて、「死ぬほど後悔した」ことである。
これを引きずったら、まず勝てるものではなく、3回目の指し直しは残念ながら、菅井は良い所なく敗れ、挑戦は1勝3敗で失敗に終わった。
他の挑戦者に比べてこのシリーズは、藤井が菅井相手にかなりてこずった感があったが、終わってみればフルセットまで行かなかったように、藤井には戦法の上でも、棋士のタイプの上でも苦手がなく、死角がないように見える。
正に苦手な戦法がない、AIそのものになり切った感がある。
すべての棋士に「藤井には勝てない」と思わせたときが、8冠達成の時かと思うが、最後残った砦(とりで)が、順位戦で一番下のC級2組に在籍する佐々木大地七段というのも、皮肉だ。
もっとも王座戦とて、挑戦者になるまで1敗もできないし、挑戦者となっても永瀬拓矢王座にも当然意地はあるから、まだまだ目が離せない。
■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。
情報源:【勝負師たちの系譜】「藤井聡太AI」8冠へ死角なし 苦手な戦法がない、千日手を2回も繰り返す大激闘 叡王戦防衛戦・第4戦(1/2ページ) – zakzak:夕刊フジ公式サイト
五番勝負の日程
#藤井聡太 叡王が防衛
【第8期 #叡王戦 五番勝負第4局】
○藤井聡太叡王 VS ●菅井竜也八段
第8期叡王戦五番勝負第4局が「浄土ヶ浜パークホテル」にて行われ、藤井叡王が2度の千日手を経て90手で菅井八段に勝ち、対戦成績を3勝1敗として、叡王防衛を果たしました。 https://t.co/IdHHpWq0Kf
— 日本将棋連盟【公式】 (@shogi_jsa) May 28, 2023
▲菅井竜也八段-△藤井聡太叡王(棋譜中継)
鮮やかな収束。菅井は目を閉じた。☗1五同玉☖1四香☗2六玉☖1五金☗1七玉☖1六金☗2八玉☖1七金☗2九玉☖1八金までの詰み。 この局面で菅井が投了した。終局時刻は21時8分。消費時間は、☗菅井3時間47分、☖藤井3時間59分。 藤井は2千日手後の激闘を制す。シリーズ成績を3勝1敗とし、通算3連覇を達成した。
21時9分 終局
90手 1五銀まで、△藤井聡叡王 の勝ち
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