2024年度からの参戦
2023年5月14日13時0分
絶妙に力の抜けた歌声でしたが、歌詞の節々からは喜びが伝わってきました。「♪順位戦、楽しみ~♪ ♪順位戦、楽しみ~」。ネット上では「アゲアゲさん」と呼ばれ、「将棋ユーチューバー」として活動しながら20年にプロ棋士編入試験に合格した折田翔吾五段(33)が先日、大阪市の関西将棋会館で行われた第73期王将戦1次予選決勝で藤原直哉七段(57)に勝ち、規定によりフリークラスから順位戦C級2組への昇級を決めました。
YouTubeでは、独特なメロディーによる自作の歌を披露し、晴れ舞台でも歌声を披露することもあるアゲアゲさん。感想戦後、名人を目指すことができる舞台に立つことができる心境を歌にすると? 報道陣のリクエストに「♪順位戦~」の即席の歌声を披露してくれました。
直近の成績を20勝10敗とし、「良い所取りで30局以上の勝率が6割5分以上」の昇級規定を満たした結果でした。プロ4年目の“脱出”でしたが、プロ入り後10年以内に昇級できないと引退という規定もありました。
終局後、「フリークラス生活が3年ぐらいあり、長かった。ようやく抜け出せて、うれしく思っています」とホッとした表情を見せました。
藤井聡太竜王(王位・叡王・棋王・王将・棋聖)のタイトル戦の舞台で、記録係を務める折田五段をよくみかけました。昨年12月、鹿児島県指宿市で行われた藤井竜王と広瀬章人八段との第35期竜王戦7番勝負第6局でも記録係を務めていました。
向かい合った対局者の間に座る「記録係」はプロ棋士になる手前の奨励会員が務めるのが慣例です。トップ棋士の戦いを目の前で見ることができるため、以前は高倍率でした。最近は、連盟関係者によると、リアルタイムにネットで棋譜をチェックすることができるようになり、以前より人気がないといいます。
“立候補者”がいないときなど、折田五段は現地へ向かいました。対局が終わるまでは基本的にずっと対局場に、はりつくたいへんな役割です。
「毎回、得るものが多く、自分に足りないものを痛感した」。トップ棋士と同じ盤面を見て、緊張感が漂う空間で、頭をフル回転させる。ネット時代とは正反対のアナログ的なものかもしれませんが、「どの先生も集中力があった。自分も集中してやらなければと思った」。刺激を受け、研究時間も自然と長くなりました。
思えば、歴史と伝統のある名人を目指す舞台に立つことができるまで遠回りもしました。折田五段はプロ養成機関の奨励会でプロ入り手前の三段まで昇段し、5年10期参戦したが、16年に26歳の年齢制限に阻まれ、退会しました。
以前、そのときの心境をこう語りました。
「1つの人生が終わった。死んだという感覚に近かった」
一方で「自分のこれまでの将棋を遊び駒にしたくない」という思いもあったといいます。退会後も将棋の実況をユーチューブで配信するかたわら、アマ枠で参加したプロ公式戦で棋士相手に10勝2敗の成績を収め、19年8月に棋士編入試験の受験資格を得ました。棋士編入試験5番勝負に臨み、対戦成績3勝1敗で合格しました。
今回は「10年で引退」というプレッシャーの中、はい上がりました。「奨励会のときから名人戦の記録を何局もとらせてもらった。森内先生、羽生先生、あこがれの存在でした」。
来年度の第83期順位戦から参加します。順位戦はA級からC2まで5クラスあり、リーグ戦の成績によって昇級・降級し、A級優勝者が名人戦の挑戦者になります。アゲアゲさんの「名人への道」が始まります。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)
情報源:「アゲアゲさん」こと折田翔吾五段の「名人への道」にあった「記録係」 – ナニワのベテラン走る〜ミナミヘキタヘ〜 – 芸能コラム : 日刊スポーツ
2023-05-10 第73期ALSOK杯王将戦一次予選
折田翔吾五段昇級インタビュー
折田五段はフリークラスから順位戦C級2組への昇級規定を満たしました。2024年6月開幕の第83期順位戦から参戦します。それについて、感想戦後にインタビューが行われました。
――フリークラスから順位戦C級2組に昇級が決まった。いまのお気持ちは。
折田 フリークラス生活が3年ほどと長かったので、ようやく抜け出せたことをすごくうれしく思っています。もっと早くに、ということではありませんが、フリークラスだと対局数が少ないという一面がありますので。最近は月に2~3局ほど指せているので、今後もそのペースを続けていければうれしいです。――本局を振り返って。
折田 出だしは急戦矢倉でしたが、組み合う相矢倉になって、ずっと難しいかなと思いながら指していました。77手目☗8三飛に☖7四銀と出る手が成立して、少し好転した気はしました。仕掛けのあたりは、どう対応されるかも分かりませんでしたけど細い攻めなのであまり自信はありませんでした。――印象的だった指し手は。
折田 昼食休憩のあたりは構想の組み立てが難しかったです。その中で、よい手だったのかは分かりませんが、44手目☖4三金右~☖3一角と組んでいくところは落ち着いて指せたのかなと。――王将戦での二次予選進出は初。
折田 一次予選は大変な戦いだったので、よかったなと思います。二次予選ではもちろん挑戦者決定リーグ戦入りを目指しますし、よい内容の将棋を指せればと思います。――規定の条件を満たすにあたり、自分で計算していたか。
折田 計算しながらやっていました。目がないときのほうが気楽に指せて、調子がよくなるとプレッシャーが重くなるという感じで、そういう心理的なものはありましたね。この好調期は1回負けると流れが変わってしまうのではないか、と不安でした。――自身の好調の理由は。
折田 アマチュア時代は力戦派でしたが、四段になってすぐに定跡を採り入れるように棋風を変えました。3年ぐらい経過して、ようやくその棋風に馴染んできたというのはあります。あと、昨年ぐらいから勉強量を増やしています。――竜王戦やABEMAトーナメントなど活躍の場が多い中、自身のパフォーマンスを評価すると。
折田 対局のたびに自分の弱さを感じさせられるところがあって、最近も結果を出せていても内容に問題があるなと。力をつけていかなければ。「この一番だけは落とせない」というところは何とかしのいでいるので、その点はよかったなと思います。――棋士編入試験に合格した際に「ストーリー性のある棋士に」と仰った。今後については。
折田 来年度から順位戦に参加することができます。対局するのが楽しいと個人的に感じるタイプの棋戦で、年に10局も指せるというのは大変ありがたいことです。長丁場の将棋を息長く戦っていきたいです。【写真】両手で順位戦C級2組の「C」と「2」を示す折田五段
折田翔吾五段(33歳)が、5月10日(水)に行われた第73期ALSOK杯王将戦(対藤原直哉七段戦)に勝ちました。その結果、直近の対局が30局で20勝10敗(勝率0.667)となり、「フリークラスからC級2組への昇級規定」の”良い所取りで、30局以上の勝率が6割5分以上であること”を満たし、フリークラスからC級2組に昇級いたしました。
フリークラスからC級2組に昇級したのは、伊奈祐介七段、伊藤博文七段、瀬川晶司六段、渡辺正和六段、伊藤真吾六段、渡辺大夢六段、島本亮五段、今泉健司五段、佐々木大地七段、古賀悠聖五段に続いて11人目になります。
フリークラスは、名人への挑戦権を争うA級からC級2組までの「順位戦」に参加しない棋士が所属するクラスで、宣言によって転出した棋士や三段リーグで2度の次点を獲得して四段となった棋士などが所属します。
フリークラス棋士は(宣言による転出を除く)、フリークラスへの編入後10年以内、または満60歳の誕生日を迎えた年度が終了するまでにC級2組へ昇級できなければ引退となります。折田五段も10年以内での昇級を目指しておりました。なお、折田五段の順位戦参加は、来年度の第83期順位戦C級2組からとなります。
【フリークラスからC級2組への昇級規定】
フリークラスからC級2組への昇級規定は以下のうち一つを満たした場合です。ただし、「年間」は4月1日から翌年3月31日まで。宣言によるフリークラス転出者は除きます。
- 1.年間対局の成績で、「参加棋戦数+8」勝以上の成績を挙げ、なおかつ勝率6割以上。
2.良い所取りで、30局以上の勝率が6割5分以上であること。
3.年間対局数が「(参加棋戦+1)×3」局以上。ただし、同じ棋戦で同一年度に2度(当期と次期)対局のある場合も1棋戦として数える。
4.全棋士参加棋戦優勝、タイトル戦挑戦。
折田翔吾五段が本日の王将戦に勝ち、直近の対戦成績を20勝10敗としてフリークラスからC級2組への昇級規定を満たしました!
2024年の第83期順位戦からの参戦となります。#折田翔吾 #王将戦 pic.twitter.com/xQxj93KLxd— 関西将棋会館【公式】 (@shogi_osaka) May 10, 2023
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