観る将
2022.7/31 10:00
AIの普及と進歩が、将棋や囲碁の進化に大きく役立ったことは、周知の通りである。
棋士の中には、仲間との練習将棋を止め、AIの研究一本に絞った人もいると聞く。
しかしAIの進歩は、ファンにとっても新しい楽しみ方を作ったのではないかと思う。特に最近言われる「観る将(みるしょう=自分では指さないが、プロ棋士の対局を楽しむ愛好家)」の方々には、尚更だ。
タイトル戦の解説会に集まる「観る将」の女性は、中継を見ていても好きな棋士が優勢かどうか分からないから、現地の解説会に行くのだろうと思う。
それが顕著にわかるのが、将棋会館宛に届く贈り物がこの1~2年、極端に増えたことでもわかる。
私は自分宛の手紙がないかと探すのだが、若手棋士宛に多くの小包が届く。バレンタインの頃は、当然チョコレートだろう。普段は何かわからないが、ネクタイと思える包みもいくつかある。我々の若手の頃は、考えられなかった現象だ。
対局の中継はNHK杯、銀河戦、Abemaの中継、そして将棋連盟の中継サイトなどがあるが、現在ほとんどのサイトで対局中に、AIによる形勢判断の数字が出ている。
AIもソフトにより差があるし、すべて万能ではない。藤井聡太五冠が初めて棋聖位を獲得した際、4億手読ませた時には好手とされなかった手が、6億手読ませたら最善手だったという、AI越えという手も現れたが、現在AIの形勢判断はほとんど信用してよいレベルとなった。
これにより、将棋を指さないファンでも応援している棋士が、今優勢なのかどうかということがわかるし、マニアックなファンなら、急激に点数の落ちた局面から、自分のソフトで違う手を入れれば、敗因と最善手がわかるという楽しみ方もある。
私は囲碁のNHK杯で、一手ごとに形勢が必勝から必敗に動くのを見て、お互いに大石(長く連結している石)が死んでいるのをウッカリして打っているのか、と思ったことがある。アマ三段の私でさえ、そういう楽しみ方があるのだ。
数値と言えば、今期ヒューリック杯棋聖戦の第2局、終盤で挑戦者の永瀬拓矢王座が優勢の局面で、3一金と飛車を取った瞬間、AIの数値が一気に下がって逆転を示したのが印象に残った。AIは続く藤井の絶妙の手順を読んでいた訳で、つくづくAIの進歩を感じたものだった。
■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。
情報源:【勝負師たちの系譜】AIを通した楽しみ方 増えた「観る将」と棋士宛の贈り物(1/2ページ) – zakzak:夕刊フジ公式サイト
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ほぉ・・・
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