多くは小学生になる前?一流棋士が将棋を覚えた年齢ときっかけ 最年少は3歳、藤井聡太は5歳、羽生善治は6歳、渡辺明は7歳

多くは小学生になる前?一流棋士が将棋を覚えた年齢ときっかけ 最年少は3歳、藤井聡太は5歳、羽生善治は6歳、渡辺明は7歳|JBpress (ジェイビープレス)

田丸昇九段


2022.2.15(火)

(田丸 昇:棋士)

棋士の多くが小学校の就学前後

タイトルを獲得した一流棋士が、将棋を覚えた年齢をそれぞれ調べてみた。年代順に列記する。

大山康晴十五世名人(享年69)は6歳、加藤一二三・九段(82)は5歳、中原誠十六世名人(74)は5歳、米長邦雄永世棋聖(享年69)は5歳、谷川浩司九段(59)は5歳、佐藤康光九段(52)は6歳、羽生善治九段(51)は6歳、森内俊之九段(51)は9歳、郷田真隆九段(50)は3歳、木村一基九段(48)は5歳、久保利明九段(46)は4歳、渡辺明名人(37)は7歳、広瀬章人八段(35)は4歳、中村太地七段(33)は6歳、豊島将之九段(31)は4歳、永瀬拓矢王座(29)は6歳、菅井竜也八段(29)は5歳、斎藤慎太郎八段(28)は5歳、藤井聡太竜王(19)は5歳。

以上の例のように、一流棋士の多くが小学校の就学前後に将棋を覚えていた。

年少で将棋を覚え、小学生のうちに奨励会(棋士養成機関)に入って修業し、10代のうちに四段に昇段して棋士になる、というのが一流棋士の典型といえる。

ちなみに、女流棋界で第一人者の里見香奈女流名人(29)、藤井竜王と同年の伊藤匠四段(19)は、ともに5歳で将棋を覚えた。

棋士が将棋を最初に教わった人は、祖父、父親、兄、小学校の友人というのが多く、大半が男性だった。藤井竜王のように祖母から教わったという例は珍しい。

内藤國雄九段(82)が教わった兄は、学生大会で優勝するほど強かったが、そういうケースは少ない。谷川九段、羽生九段、藤井竜王の父親は、将棋をまったく知らなかった。

棋士が将棋を覚えたきっかけ

棋士が将棋を覚えたきっかけは、主に次の3通りのパターンがある。

(1)は、大山十五世名人、中原十六世名人、米長永世棋聖、谷川九段、羽生九段など、時のスター棋士に憧れた、というもの。現代なら藤井竜王の活躍で将棋を覚えた子どもたち。

(2)は、新聞の将棋欄に載っている専門用語(王手飛車、手順前後など)や不思議な数字(7六、5五などの符号)を見て将棋に興味を持った、書店で見た将棋の本に大好きな漢字が載っている(図面の駒)、というもの。

(3)は、将棋を題材にしたNHKの朝ドラマ『ふたりっ子』をテレビで見た、同じく『月下の棋士』などの将棋漫画を読んだ、好きな芸能人が将棋を愛好していた、というもの。

きっかけは『王将』

私こと田丸昇九段が将棋を覚えたのは、60年前の1962年(昭和37)の夏休みで12歳だった。棋士として遅い方である。

「吹けば飛ぶよな 将棋の駒に・・・」の歌詞で始まる、演歌歌手の村田英雄さんが歌った『王将』が大ヒットしていて、ラジオからよく流れていた。その曲を何度も聴いていると、歌詞を覚えて口ずさむようになった。そして、将棋というゲームに興味を持った。知り合いの人にルールを教わると、面白くて毎日のように指した。やがて1年後には、棋士になりたいと本気で思うようになった。

私は小学6年のとき、『王将』という歌謡曲を聴いたのをきっかけにして将棋を覚えた。前記の分類で(3)に当たる。

それにしても、小学生では理解しにくい演歌調の曲になぜ引かれたのだろうか・・・。当時はザ・ピーナッツ、弘田三枝子らが歌った和製ポップスが好きだった。また、棋士という存在をよく知らなかった。とにかく『王将』という曲に導かれるように、将棋に夢中になってしまった。

多方面に影響を与えた『王将』

戦後初めてのミリオンセラーとなった『王将』は当時、多方面に影響を及ぼしたという。

1962年の夏、23歳の冒険家の堀江謙一さんが日本からアメリカまで、小型ヨットで太平洋を単独横断して大きな話題になった。洋上で寂しさや辛さを感じると、『王将』をうなって吹き飛ばしたという。後に上映された堀江さんを題材にした映画『太平洋ひとりぼっち』では、主役の石原裕次郎さんが短波放送で『王将』を聴くと、「♪吹けば飛ぶよな 小さなヨットに・・・」と歌った。

1964年の東京オリンピックで、陸上・80メートルハードルに出場して5位入賞した依田郁子さんは、スタート前に『王将』を歌って緊張感をほぐしたという。

田中角栄元首相は1963年頃の大蔵大臣時代、日米交渉の懇親会の場で『王将』を歌ったという。

進路のきっかけとなった思い出深い曲

『王将』を作曲したのは、『風雪ながれ旅』『矢切の渡し』『みだれ髪』などの名曲を手がけた作曲家の船村徹さん。私は、制作された当時の状況を船村さんに伺う機会があり、次のように語られた。

「昭和30年代の歌謡界は、ロカビリーやポップス系の音楽が流行していました。私は逆に純日本調の曲を作りたいと思っていました。そして、スタッフと協議して生まれたテーマが、伝説の棋士・阪田三吉が主人公でおなじみのドラマ『王将』でした。作詞をされた西条八十さんは、将棋をまったく知らなかったのですが、実にいい詞ができましたね。私は試しに将棋の駒に息を吹いたら、実際に飛びましたよ(笑)」

歌手の村田さんも将棋をまったく知らなかったが、「『王将』を歌うときは、阪田三吉先生になったつもりで歌わせてもらっています」と語っていた。

『王将』は1961年11月に発売された。当初は反響があまりなかったそうだが、1962年の春からレコードの売り上げが飛躍的に伸びていった。歌舞伎座で開かれた公演は超満員となり、大半の観客がお目当てにした『王将』を、村田さんは何回も歌ったという。同年のNHK紅白歌合戦でも熱唱した。

『王将』の大ヒットとともに、将棋が流行して指す人が増えた。船村さんは、駒の産地で有名な山形県天童市の業者から、売り上げが何百倍も増えたと感謝されたという。

私にとっても『王将』は、人生の進路のきっかけとなった思い出深い曲である。

情報源:多くは小学生になる前?一流棋士が将棋を覚えた年齢ときっかけ 最年少は3歳、藤井聡太は5歳、羽生善治は6歳、渡辺明は7歳(1/3) | JBpress (ジェイビープレス)


  

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