田丸昇九段
2021.7.16(金)
課題や改善を求め、いまだ途上段階の天才棋士の心境とは
はじめての防衛戦
藤井聡太二冠(18=棋聖・王位)は昨年7月、棋聖戦5番勝負で挑戦者になって渡辺明棋聖(37)を3勝1敗で破り、17歳11ヵ月の最年少記録でタイトルを初めて獲得した。
それから1年後、藤井棋聖は初防衛戦を迎えた。
挑戦者は、前棋聖の渡辺名人(王将・棋王を合わせて三冠)。棋聖戦の決勝トーナメントで4連勝し、藤井と再戦することになった。
渡辺は今年、王将戦7番勝負で永瀬拓矢王座(28)に4勝2敗、棋王戦5番勝負で糸谷哲郎八段(32)に3勝1敗、名人戦7番勝負で斎藤慎太郎八段(28)に4勝1敗で、若手の挑戦者をそれぞれ下して防衛を果たしていた。現役最強と評されるにふさわしい充実ぶりだった。
敗れたタイトル保持者はどうなるのか
ボクシングの試合では、タイトルマッチで敗れた選手権保持者が、同じ相手に挑戦者としてリターンマッチすることはよくある。
しかし、将棋のタイトル戦では、ボクシングのようなわけにはいかない。敗れたタイトル保持者は、決勝トーナメントやリーグ戦で勝ち抜かないと、挑戦者になれないのだ。
タイトルを奪われた失意の状況で、第一歩から勝ち上がって挑戦者になるには、実力だけでなく不屈の精神力と勝負運を要する。
過去20年でそうした挑戦は10例ほどあり、そのうち7例が羽生善治九段(50)だった。ただタイトル奪還は3例で、さすがの羽生も「リベンジ」は容易ではなかった。
挑戦者としてタイトルを奪還した大山康晴
1960年代から70年代にかけて、タイトル(当時は五冠)をほぼ独占して無敵を誇っていたのが大山康晴名人(享年69)だった。その間、1963年に王将戦で二上達也八段(当時31)、1966年に棋聖戦で二上八段、1968年に十段戦7番勝負で加藤一二三・八段(同28)に敗れてタイトルを失った(棋士の肩書はいずれも当時)。
大山の失冠はわずか3期だった。しかも、それぞれの次期タイトル戦で勝ち上がって挑戦者になり、二上王将、二上棋聖、加藤十段を破って、タイトルを奪還したのだ。
「防衛してこそ一人前」
「タイトルは防衛してこそ一人前」という言葉がある。追われる立場の保持者が、その重圧を踏み越えてタイトルを守ってこそ、本当の実力者という意味である。
タイトル獲得通算99期の羽生九段でも、1990年の竜王戦7番勝負で羽生竜王(同20)として迎えた初防衛戦で、挑戦者の谷川浩司王位(同28)に1勝4敗で敗れた。羽生の敗因は諸説あったが、「竜王らしさ」を意識して自分のペースを失っていた、という見方が多かった。
タイトル戦の対局で保持者が、挑戦者のときと違う所作には、主に次のようなものがある。
対局室で上座(床の間を背にする。または出入り口から遠い方)に座る。対局室に挑戦者より少し遅く入る(だいたい対局開始時刻の10分前。挑戦者は15分前)。対局開始時に駒箱を開けて駒を取り出し、終局後に駒箱に駒を収める。
これらの所作は、保持者がプレッシャーを感じるようなものではない。前述の「追われる者」と「追う者」の違いがやはり大きいと思う。
渡辺名人に3連勝で初防衛を果たす
藤井は今年の棋聖戦に際して、「初防衛戦と意識せずに、昨年と同じように臨みたいと思っています」と語った。対局室で座る位置などは変わっても、挑戦者の気持ちで戦いたい、ということだろう。
挑戦者の渡辺は、「いい将棋が指せるように、精いっぱい臨みたい」と語り、捲土重来を期した。
藤井棋聖ー渡辺名人の棋聖戦は6月上旬に始まった。そして7月上旬、藤井は渡辺に3連勝し、棋聖戦で初防衛を果たした。
タイトルを通算3期獲得した藤井は、規定によって18歳11ヵ月の最年少記録で九段に昇段した。渡辺はタイトル戦通算39期目の出場で、初のストレート負けを喫した。
棋聖戦の3局の内容は、いずれも大熱戦だった。しかし、藤井が要所の局面で指した数々の好手は、対局場の控室やアベマTV解説者の棋士たちを感嘆させ、AI(人工知能)の読みを上回るものもあった。まさに「AI超え」といえる領域の将棋だった。
藤井棋聖は初防衛の感想を、次のように語った。
「タイトルホルダーになり、成長した実感というよりも、新たな課題が見つかることの方が多いです。それを成長につなげていきたい。一局指すごとに、新しい発見をして改善するのが、モチベーションにつながると思います」
王位戦、叡王戦でダブルタイトル戦
藤井は6月下旬から始まった王位戦7番勝負の初防衛戦で、豊島将之竜王(31)の挑戦を受けている。7月中旬の第2局が終わった時点で、1勝1敗の五分である。
藤井は7月下旬から始まる叡王戦5番勝負で、豊島叡王に挑戦する。
また、藤井は竜王戦の決勝トーナメントで、準決勝と挑戦者決定戦(3番勝負)で勝ち進めば、10月から始まる竜王戦で豊島竜王への挑戦者になる。
同じ対局者同士による「ダブルタイトル戦」が続けて行われたことは以前にあったが、「トリプルタイトル戦」の前例はあまりない。もし実現した場合、豊島ー藤井のタイトル戦は、最多で19番勝負となる。
両者の対戦成績は、豊島が7勝2敗(7月14日時点)と大きくリードしているが、本当の戦いはこれからである。
藤井聡太の普段の生活とは
藤井は対局以外の日は、自宅で将棋の研究に取り組んでいる。朝は8時に起き、夜はいつも同じ時刻に寝る。睡眠時間を一定に保っているそうだ。
昨年までは、高校に通学するのが運動になった。現在は、対局で出かけるのが一番の運動だという。
藤井は将棋一筋の規則正しい生活を送っている。「コロナ禍」の現状で、感染しにくい環境といえる。
そんな藤井が気をつけたいことは、体重管理のようだ。
タイトル戦の対局場では、朝食・昼食・夕食で地元の美味しい料理がたくさん出てくる。さらに午前・午後のおやつもある。
私こと田丸は、タイトル戦の対局で立会人を何回も務めたことがあり、特に夕食のコース料理は質量ともに豪華である。つい食べ過ぎてしまいがちで、体重計に乗って増量に驚いたものだ。
情報源:棋聖戦の初防衛を果たした藤井聡太が唯一、気をつけたいこと(JBpress) – Yahoo!ニュース(コメント)
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— kewpiehoney (@kewpie_honey) July 15, 2021
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▲藤井聡太王位-△豊島将之竜王(棋譜中継)
7/21 朝9時から対局開始
先後は入れ替わり、藤井聡王位の先手
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- 2021年7月21日 七番勝負第3局 藤井聡太王位 対 豊島将之竜王|第62期王位戦
王位戦の第3局は7月21日。
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