背筋が伸びたとか。
2021年7月11日 17時00分
史上最年少でタイトル防衛を果たし、棋界最高位の九段に昇段した藤井聡太王位(18)=棋聖。大舞台を何度も経験し、和服姿での対局も板についてきた。「色や柄にはあまり頓着されないが、ちゃんとしたものを着たいという意識を感じる」。そう語るのは、昨年のタイトル初挑戦時から藤井王位の和服のコーディネートと着付けを担当する白瀧しらたき呉服店(東京都練馬区)の当主、白瀧佐太郎さん(47)。藤井王位が和服の着付けを習得するために行っている「異例の策」や、この1年で気付いた「変化」について話を聞いた。 (樋口薫)
◆1年ぶりの生での取材で…筆者が感じた違和感
あれ、何か違う? 昨年より貫禄が増した? 6月29、30日、名古屋市で開幕した、お~いお茶杯第62期王位戦7番勝負(東京新聞主催、伊藤園特別協賛)第1局の開始前。盤の前に座る藤井王位に向け、カメラを構えた筆者はそんな印象を受けた。
実は将棋界は現在、コロナ禍で取材が大きく制限されている。注目の対局の場合、対局室内に立ち入りできるのは原則、主催メディアのみ。他社は日本将棋連盟から写真やコメントの提供を受けている。本紙主催の王位戦では、藤井王位が予選やリーグ戦に出ることがないため、筆者がその公式対局を生で取材するのは約1年ぶりだった。
対局が始まり、首をひねりながら控室に戻る。確かに藤井王位が一回り大きくなったように感じた。とはいえ太ったわけではない。むしろ開幕前のインタビューでは少しやせたようにも見えた。では、何が違ったのか。その謎は、対局前の藤井王位と最後に会話する人物である白瀧さんから話を聞いて氷解した。
「藤井王位の姿勢が格段に良くなったんです」。白瀧さんも6月開幕の棋聖戦5番勝負で着付けをした際、あれっと驚いたという。「和服の着姿の美しさには姿勢が大きく影響します。もともと藤井王位は猫背気味で、着付けにかなり苦労していた。それが今年は、りんと背筋が伸びている」。タイトル保持者という立場がそうさせたのか、今年から始めたという筋トレの効果か。要因は不明だが、白瀧さんは「著しい変化でした」と強調する。
◆「若き王者」ならではのコーディネート
振り返ってみると、確かに今年の藤井王位の和服姿は印象的だった。第92期棋聖戦5番勝負の第1局では、袖の先にかけてグラデーションになっている藍色の羽織が映えていた。第2局では全身を緑でまとめ、落ち着いた雰囲気の中にも清新さを感じさせた。「全体の衣装を段取りするに当たり、今年は『若き王者』ということを考慮しました」と白瀧さん。「渋くなりすぎず、若いからこそ似合う色合いを探した」。藍色の羽織は今回新調したもので「ボカシ染め」技法が用いられている。
対局場との調和にも、配慮が尽くされている。王位戦第1局は名古屋能楽堂で指された。能の世界では舞台は神聖なものとされ、上がる際には白足袋の着用が必須となる。藤井王位の衣装も、白足袋に合うように選ばれた。
透け感があって涼やかな黒の羽織は2年前、初めての和服対局の折、師匠の杉本昌隆八段(52)に贈られたもの。家紋が入っており、格式の高い場にもなじむ。着物は爽やかな若草色で、はかまは礼装にも用いられるしま柄の「仙台平」を合わせた。白瀧さんは「舞台は能楽師の方々が大事にされている場所。知人の能楽師の方にも写真で確認してもらい、敬意を払っているという思いが伝わるような衣装を心掛けた」と解説する。
◆タイトルホルダーだからこそ…着付け習得へ異例の「実戦練習」
白瀧さんはほかの棋士の着付けを担当することも多く、タイトル戦のたびに全国を飛び回るが、常々こう語っている。「挑戦者のうちはいくらでもお手伝いします。ただ、タイトルホルダーという棋界を代表する立場になったら、自分で着付けをできるようになってほしい」。確かに、王位戦で藤井王位に挑戦する豊島将之竜王(31)、棋聖戦で戦った渡辺明名人(37)ら、タイトル戦に慣れたトップ棋士は自身で着付けができる。藤井王位もこの春に着付けの指導を受け、白瀧さんを「記憶力が抜群で、全体像が俯瞰ふかん的に見えている」と驚かせた。ただ過密日程やコロナ禍の影響などで、まだ習熟には至っていない。
そこで、今回の王位戦で取られた異例の策が「実戦練習」だった。2日制の1日目の朝と昼、ホテルの部屋や対局者控室で行っているという。途中の手順までを藤井王位が自ら着付け、残りを白瀧さんが担当。対局が佳境に入るので、2日目は実施しない。「第1局では角帯の結び方を練習しました。全体でいうと3合目くらい。ほぼ習得されたので、次ははかまのひもの締め方に移る予定です」
藤井王位といえば大舞台にも動じないメンタルの強さで知られるが、タイトル戦の直前、そして最中に着付けの練習ができる心の余裕には驚くほかない。「対局前もリラックスされ、気負っている感じが一切ない。『帯の位置が高いですね』と自分で気付いて結び直すなど、自然な様子です」。白瀧さんもそう証言する。
◆盛り上がる王位戦 両対局者の装いにも注目を
藤井王位は7月3日、棋聖戦5番勝負を3連勝で制し、タイトル防衛と九段昇段の最年少記録(18歳11カ月)を達成した。翌朝の記者会見では、和服での対局について「回数もかなり増え、慣れてきたところはある。着付けも今後覚えていきたい」と語った。その上で「タイトル戦での和服は注目していただけるポイントの1つ。ある程度、自分の個性を出していければ」と、着こなしへの関心も示した。
白瀧さんは「緊張感のある対局場、美しい和服、そして棋士の方々のすばらしい対局の3つが合わさり、和の文化に注目が集まるのはすばらしいこと。それは文化が根付いていくということでもある」と話す。豊島竜王という「最強の挑戦者」を迎え、盛り上がりを見せる王位戦では、将棋の内容はもちろん、両対局者がどんな姿で戦うかにも注目してみてほしい。注目の第2局は13、14日、北海道旭川市で指される。
※白瀧さんへの取材に際しては、顧客である藤井王位の許可を得ています
情報源:「あれ?貫禄が増した?」和服姿から探る藤井聡太王位の“変化”の理由:東京新聞 TOKYO Web
「あれ、昨年より貫禄が増した?」東京新聞将棋担当の樋口薫記者@SanPedroTigerが感じた #藤井聡太王位 の変化。その理由を、藤井王位の和服のコーディネートと着付けを担当する白瀧呉服店の当主への取材から探ります。王位戦第2局は13、14日に北海道旭川市で指されます。https://t.co/9utdhNyOaw
— 東京新聞編集局 (@tokyonewsroom) July 11, 2021
お~いお茶杯王位戦第2局が13、14日に指されるのを前に、藤井聡太王位の和服姿について記事をアップしました。
藤井王位の着付けを担当してきた人物が気付いた、この1年の変化とは?
7番勝負中に行われているという異例の「練習」とは?
ぜひご一読下さい。(樋)https://t.co/a6ScgmiZnb
— 中日新聞 東京新聞 将棋【公式】 (@chunichishogi) July 11, 2021
▲豊島将之竜王-△藤井聡太王位(棋譜中継)
先後は入れ替わり、豊島竜王の先手。
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