本選トーナメントは6月25日に開幕局
2021/06/17 13:17
第34期竜王戦 本戦25日開幕
将棋の第34期竜王戦は予選にあたるランキング戦が終了した。将棋界の最高位と賞金4400万円をかけて、豊島将之竜王に挑戦する棋士は誰か。史上初のランキング戦5期連続優勝を成し遂げた藤井聡太二冠、タイトル通算100期を目指す羽生善治九段に注目が集まるなか、豊島竜王に本戦を展望してもらった。(文化部 吉田祐也)
藤井二冠や永瀬王座が本命、対抗は久保九段ら1組勢…豊島竜王が展望
――本戦出場者が決まって、トーナメント表全体の印象はいかがですか。
豊島 藤井二冠、永瀬王座、羽生九段と、現在の実力者が順当に本戦入りしています。ランキング戦の対局は気になるので、棋譜中継を見ていました。
――ベテラン、中堅、若手棋士と、バラエティーに富んだ顔ぶれです。
豊島 久保九段はベテランの域だと思いますが、毎年本戦に出ていて、指し手も鋭いです。40歳になった山崎八段は、順位戦でA級へ昇級するなど充実しています。4組優勝の梶浦七段は昨年の本戦での活躍が印象的で、着実に力をつけている若手です。
――タイトル通算100期を目指す羽生九段が本戦入りを決めました。
豊島 羽生九段は劣勢の将棋を何度もひっくり返して勝ち上がっています。大局観の良さは健在で、終盤の逆転術も驚異的です。
――左の山にそびえる「1組の壁」は佐藤九段、羽生九段、永瀬王座で、かなり高い壁に見えます。
豊島 そう思います。6組で優勝した折田四段、5組を制した青嶋六段ら若手には勢いがあると思いますが、1組のメンバーは相当に手厚いです。佐藤九段は名人を取った5年前のような粘り強さが戻っていて、若手をいなす技術も兼ね備えています。
――羽生九段、永瀬王座もタフな棋士です。
豊島 羽生九段、永瀬王座を相手に有利になったとしても、そこから勝ちきるまでが大変です。特に永瀬王座は我慢強い棋士で、長期戦の体力勝負では無類の強さを発揮します。左の山を抜けるのは、永瀬王座、羽生九段、佐藤九段のいずれかだとみています。
――藤井二冠が順当に2組優勝を果たしました。
豊島 右の山では、目がいく存在です。藤井二冠は総合力が高く、終盤で時間がなくなっても慌てない。ほとんど弱点が見当たりません。
――八代七段と三枚堂七段は若手のライバル対決です。
豊島 若手棋士の特徴でもある、時間戦略の巧みさを感じています。二人とも竜王戦の本戦入りは初めてですが、地力は高いです。
――ズバリ、本戦を勝ち抜く本命は。
豊島 藤井二冠、永瀬王座が本命です。対抗は複数ですが、久保九段、羽生九段、佐藤九段、山崎八段と1組所属の棋士です。
――少年少女の将棋ファンから、「藤井二冠が勝ち進んだらどうしますか」と質問を受ける機会もありましたね。
豊島 ははは。急所を突いています。藤井二冠の勝ち上がりは、怖いですよ。6月下旬に始まる王位戦七番勝負は挑戦者として藤井二冠と戦いますが、強い相手と対局することは棋士冥利に尽きますし、楽しみでもあります。
プロフィル 豊島将之(とよしま・まさゆき) 前期竜王戦七番勝負でタイトル初防衛を果たした。現在は叡王と合わせ二冠を保持する。「序盤、中盤、終盤、隙のない将棋」に磨きをかけ、勝負強さにも定評がある。趣味はバスケットボール・NBAの試合観戦。あだ名は「とよぴー」とかわいらしいが、盤上での攻めはめっぽう鋭い。
開幕カードは青嶋六段―折田四段戦
竜王戦本戦は青嶋未来六段―折田翔吾四段戦が開幕局で、25日に東京・千駄ヶ谷の将棋会館で行われる。
右の山の注目カードである藤井聡太二冠―山崎隆之八段戦は7月10日。藤井二冠は「山崎八段は力強い棋風なので、こちらもしっかり指したい」と話している。山崎八段は「自分が藤井二冠に勝てる要素はない」と自虐的に語りつつも、「力を尽くしてチャンスをうかがいたい」と抱負を述べた。
本戦を戦う11人
負けない将棋、「軍曹」の異名…1組優勝 永瀬拓矢王座 28
攻防のバランスにたけた棋風で長期戦を得意とし、「負けない将棋」と称される。「軍曹」の異名を持ち、対局中はバナナやブドウ糖で栄養を補給する。
「本戦では一番よい位置につけることができた。その利をいかすために、しっかり準備をしたい」
さばきの芸術、華麗振り飛車…1組2位 久保利明九段 45
竜王戦本戦の常連で「さばきのアーティスト」と称される華麗な振り飛車党だ。最近はファッションヒゲをたくわえ、ファンから「イケおじ」と呼ばれている。
「ランキング戦は全力で戦い抜くことができた。本戦は若手と対局するので、しっかり備えたい」
独創の棋風、棋戦優勝8回…1組3位 山崎隆之八段 40
直感に優れ、棋戦優勝8回を誇る。薄い玉型をいとわない独創的な棋風で、あだ名は「山ちゃん」。自虐ネタが持ち味で、将棋解説では常に会場を沸かせる。
「初戦の藤井二冠に隙は見当たらない。120%の力を出して、いい内容の将棋を指したい」
羽生マジック、逆転の連続…1組4位 羽生善治九段 50
タイトル獲得通算99期で、「永世七冠」の資格を有する覇者は、50代となっても衰え知らずだ。終盤の奥義「羽生マジック」を駆使し、本戦入りを決めた。
「ランキング戦は逆転勝ちの連続で、非常に幸運だった。本戦は対策をしっかり考えて臨みたい」
棋風改造中、あだ名「貴族」…1組5位 佐藤天彦九段 33
受けを得意とする居飛車党だが、近年は棋風改造に取り組んで振り飛車も指しこなす。あだ名は「貴族」で、ファッションや家具にも強いこだわりがある。
「本戦で若手棋士の勝ち上がりを待つというのはワクワクする。新鮮な気持ちで戦いたい」
記録の申し子、生粋の長考派…2組優勝 藤井聡太二冠 18
王位と棋聖の二冠を保持するスター棋士。最年少でのプロ入りやタイトル獲得、歴代1位の29連勝など記録の申し子だ。生粋の長考派で常に最善手を探究する。
「夏場は対局が続くと思うのでコンディションを整え、本戦で結果を出すことに集中したい」
丁寧な受け、優雅さと闘志…2組2位 八代弥七段 27
全棋士参加の朝日杯で優勝経験があり、居飛車党で丁寧な受けの棋風だ。駒音をほとんど立てず、ゆったりと優雅な手つきで指し、闘志を内に秘めている。
「2組決勝の将棋は力を出し切れず、内容が悪かった。その悔しさを本戦でぶつけたい」
「さんちゃん」切れない攻め…3組優勝 三枚堂達也七段 27
若手棋士対象棋戦で優勝経験がある。切れ味鋭い居飛車党で攻めをつなぐのがうまく、「三枚堂の攻めは切れない」と評価される。あだ名は「さんちゃん」。
「本戦で当たる八代七段は同い年の棋士で、負けたくない相手。思い切りぶつかりたい」
ランキング戦3期連続優勝…4組優勝 梶浦宏孝七段 25
竜王ランキング戦で3期連続優勝を果たし、実力を証明した。粘り強い棋風で長手数もいとわないタイプ。棋士仲間から「カジー」と呼ばれ親しまれている。
「4組決勝はフラフラの内容だった。これではいけない。本戦では内容の良い将棋を指したい」
早見え早指し、チェスも強い…5組優勝 青嶋未来六段 26
居飛車、振り飛車を指しこなすオールラウンダー。早見え早指しで、センスあふれる将棋だ。趣味のチェスは日本トップレベルの腕前で、頭の回転が速い。
「本戦の道のりはとてつもなく長いが、前回の成績(本戦で3勝)よりも上を目指す」
編入試験でプロの夢実現…6組優勝 折田翔吾四段 31
棋士養成機関を退会し、一度は夢破れたものの、棋士編入試験を経てプロ入りを果たした。あだ名は「アゲアゲさん」で、棋士ユーチューバーでもある。
「6組ランキング戦の対局を通して成長できた。本戦でも気持ちのこもった将棋を指したい」
ランキング戦、驚異の5期連続Vも藤井二冠なら「普通」…千葉幸生七段に聞く
今期竜王戦のランキング戦1~6組について、詰将棋の名手である中堅棋士の千葉幸生七段に振り返ってもらった。
――1組の戦いをどうみましたか。
千葉 永瀬王座は1回戦から危なげない指し回しで勝ち進み、優勝しました。近年の充実ぶりがうかがえます。準優勝の久保九段は安定感があって、持ち時間が5時間の竜王戦を得意にしているイメージがあります。羽生九段が1組4位で本戦入りを果たしたこともさすがでした。久保九段、羽生九段とベテラン棋士の頑張りは目を引きます。
――2組の優勝者は千葉七段の予想通りでしたか。
千葉 はい。藤井二冠が制すると読んでいたので順当な結果です。ランキング戦5期連続優勝は、とてつもない偉業ですが、藤井二冠だと普通に思えてしまいます。準決勝の松尾八段戦で見せた▲4一銀は棋譜中継を見ていて、「まさか」と思いました。藤井二冠の将棋には華があります。
渡辺明名人を破った将棋が光る八代七段
――2組でもう一枚の本戦切符を得た八代七段は。
千葉 棋士間で力を評価されている八代七段は、準決勝で渡辺明名人を破った将棋が光ります。
――3組はどうですか。
千葉 関西の実力者である都成七段に勢いがありましたが、決勝では三枚堂七段が緩急自在の指し回しで勝利しました。
――4組は梶浦七段が優勝しました。
千葉 梶浦七段はランキング戦で3期連続優勝と、好記録を打ち立てました。決勝は形勢が何度も入れ替わる長期戦で、持ち味の粘り強さを発揮しました。
――5組決勝は東西の若手有望株対決でした。
千葉 池永五段は関西期待の若手棋士ですが、竜王戦で本戦出場経験がある青嶋六段が鋭い攻めを繰り出して圧倒しました。
――6組は見どころが多かったです。
千葉 小山アマが竜王戦のアマチュア最高記録に並ぶ4強入りを果たし、注目して見ていました。準決勝で小山アマに完勝した長谷部四段はプロの意地を見せました。西山女流三冠は、昨年はベスト4、今年はベスト8と男性棋戦でも活躍しています。折田四段は棋士編入試験を突破してプロ入りした苦労人で、6組優勝という結果を残したことは、今後の大きな自信になると思います。
涼しい顔でAI超え妙手…「地球の生命体とは思えない」
3年前の竜王戦5組決勝で「AI超え」の一手を放って話題を呼んだ藤井聡太二冠が、今期の2組準決勝の松尾歩八段戦でも常人離れした妙手を披露し、棋士や将棋ファンを 震撼しんかん させた。
図は終盤戦、先手の藤井二冠が▲4一銀とタダ捨ての銀を打った局面だ。取れる飛車を取らず、ギリギリの利かしを意図している。実戦はここから、△同金▲8四飛△7八馬▲7五桂と進み、▲4一銀と捨てた効果で後手玉が極めて狭くなっている。
妙手で流れをつかんだ藤井二冠は一気に松尾八段を押し切った。藤井二冠は後日、「指し手が話題になるのはありがたいことです。松尾八段戦は正しい形勢判断ができて良かったです」と、あくまで冷静だった。
本局を観戦した飯島栄治八段は「図の局面の直前ならば▲4一銀という手は浮かびます。ただ、藤井二冠はだいぶ前からこの手をイメージしていたと思われ、読みの精度が高すぎて背筋が凍りました」と話す。
進化したAIを搭載した将棋ソフトは図の直前になって▲4一銀を示したが、数手前には示していなかった。飯島八段は「藤井二冠は涼しい顔でAI超えの手を何度も指しています。すごすぎて、同じ地球上の生命体とは思えません」と畏怖する面持ちで語った。
主催 =読売新聞社、日本将棋連盟
特別協賛 =野村ホールディングス
協賛 =東急グループ、UACJ、旭化成ホームズ、あんしん財団
情報源:つわもの勢ぞろい、豊島竜王に挑戦するのは? : 竜王戦 : 囲碁・将棋 : ニュース : 読売新聞オンライン
本日(6/17)の読売新聞朝刊に掲載されている、 #豊島将之 竜王の本戦展望が読売新聞オンラインでも公開されました。
→https://t.co/qHXZQ5Tv5i公開を待つ間に、「凄くないですか?」で話題の #飯島栄治 八段が、できたての凄八シールを手に、大手町に来てくれました(若杉)#竜王戦 pic.twitter.com/25i4nWicfM
— 読売新聞写真部 (@tshashin) June 17, 2021
25日に開幕する第34期竜王戦の本戦。
本日(6/17)の読売新聞朝刊には、 #豊島将之 竜王の本戦展望やランキング戦回顧などを見開きで掲載しています。
本戦を戦う11人をランキング戦の写真で振り返る写真特集も公開されました→ https://t.co/91IFBVNStN是非ご覧下さい(若杉)#竜王戦 pic.twitter.com/3xa7lPRF5D
— 読売新聞写真部 (@tshashin) June 17, 2021
今日の読売新聞新聞朝刊は竜王戦本戦の見開き特集でした。 pic.twitter.com/A9lrhoRpOX
— 飯島栄治 (@eijijima) June 17, 2021
1組1位:永瀬拓矢王座
1組2位:久保利明九段
1組3位:山崎隆之八段
1組4位:羽生善治九段
1組5位:佐藤天彦九段
2組1位:藤井聡太二冠
2組2位:八代弥七段
3組優勝:三枚堂達也七段
4組優勝:梶浦宏孝七段
5組優勝:青嶋未来六段
6組優勝:折田翔吾四段
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ほぉ・・・
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