桐山清澄九段が現役続行を決めた第34期竜王戦5組残留者決定戦の対局
2021/06/09 19:00
いつからか、棋士として孤独な部分に心地よさを感じるようになった。この感覚が70歳を過ぎても続いたら、どんなに幸せだろう。
ただ、どれだけのものを超越したらその域に到達できるのか。そしてどんな景色が見えるのか。実際に行かなければわからない。
5月14日の5組残留決定戦。現役最年長の73歳、桐山清澄九段の現役続行か引退、そして筆者の5組残留が懸かる一局になった。色々な思いがあった。どんな結末でも、本局が今期竜王戦の最後の一戦になる。内容が悪かった今期ゆえ、良い将棋で終わりたかった。
対局が始まると、桐山九段は指を震わせながら▲7八飛とした。相居飛車を主に研究していた筆者は完全に意表をつかれた。桐山九段の初手▲7八飛は公式戦2局目だ。まさかこの大一番で指されるとは。この一局に懸ける思いと準備が伝わってきた。着手後の7八の飛車は曲がっていた。この時の迫力を筆者は忘れないだろう。
第1図から△8三角と放ってポイントを稼ごうとしたが、良くなかった。なぜか局面を打開したいと焦る気持ちがあった。桐山九段に対応され、徐々に苦戦になる。
その後、形勢逆転を意識して第2図を迎えた。ここで△3五同歩とすれば有利だったが、▲2三香成△同玉▲4六歩の攻めを受け切れるかどうか、とっさに判断できなかった。実戦は第2図から△5六桂としてしまう。▲3四歩△同銀▲4六歩で先手陣が堅くなり、流れが桐山九段に傾いた。ビシッと指された▲3五歩の勝負手。その気迫に押されずに△3五同歩と指せていれば、と悔やまれる。
最終盤は第3図から▲4二金△同角▲3三歩成△同角▲2一銀以下、華麗な詰みに討ち取られ、投了を告げた。桐山九段が引退回避を決めた一方、筆者は最後まで良い将棋を指せなかった。
降級にぼう然
桐山九段は通算996勝目を挙げた。そして筆者は5組に別れを告げた。宿泊先のホテルで降級の現実にぼう然としていた。ただ、筆者の現役棋士としての戦いは、これからも続く。また一歩ずつ前に進むしかないのだ。
情報源:[竜王戦見聞録]気迫の初手、桐山引退回避 : 竜王戦 : 囲碁・将棋 : ニュース : 読売新聞オンライン
5組残留者決定戦
情報源:第34期竜王戦 5組ランキング戦
現役最年長、73歳の桐山清澄九段が引退を回避した竜王戦5組残留決定戦を本日の読売新聞夕刊に掲載しました。敗れた上村亘五段による自戦記です。
将棋漫画でおなじみ、バトルロイヤル風間さんのイラストも。豊島将之竜王の記事も夕刊に。
読売オンラインでご覧になれます。https://t.co/wiRT3JW61d pic.twitter.com/AIS8J6Rqd9
— 読売竜王戦【公式】 (@yomiuri_ryuo) June 9, 2021
本日6/9の読売新聞夕刊将棋欄に、桐山九段戦、私の自戦記が掲載されています。是非お買い求めくださいませ。今回は読売新聞オンラインでも掲載されています。 https://t.co/y9b4FoSlYR
— 上村 亘 (@kamimurawataru) June 9, 2021
▲桐山清澄九段-△上村亘五段(棋譜DB)
141手 1四銀打まで、▲桐山九段 の勝ち、現役続行
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桐山九段、現役続行おめでとうございます。
1000勝まであと4勝。
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