藤井聡太(手前)との対局を振り返る畠山鎮=2020年1月24日、大阪市

(大志 藤井聡太のいる時代)番外編 「将棋を食べてるようだ」西の熱血幹事は思った:朝日新聞デジタル

ハタチンこと畠山鎮八段


2021年4月18日 5時00分

藤井聡太(手前)との対局を振り返る畠山鎮=2020年1月24日、大阪市
藤井聡太(手前)との対局を振り返る畠山鎮=2020年1月24日、大阪市

「自分があれだけ叱って鍛えた子たちを、一人の天才がごぼう抜きにしてしまう……。そんな空しさを感じましたね」

棋士養成機関「奨励会」で関西の熱血幹事と称された畠山鎮(まもる)(51)の言葉だ。「天才」とは藤井聡太(18)のこと。藤井がデビューから負け無しで29連勝を達成した当時の心境という。

畠山が奨励会員の世話役である幹事を務めた2001年度から9年間で、関西では村田智弘(40)、島本亮(40)、阪口悟(42)、糸谷哲郎(32)、豊島将之(30)、村田顕弘(34)、稲葉陽(あきら)(32)、西川和宏(35)、澤田真吾(29)、大石直嗣(ただし)(31)、菅井竜也(29)、牧野光則(33)が棋士になった。これからの関西将棋界を担う面々で、彼らは「畠山先生の厳しくて温かい指導のおかげ」と感謝する。

藤井の29連勝に、西川、澤田、阪口も白星を献上した。藤井が奨励会に入ったのは12年9月で、畠山が幹事を辞めた後。藤井が倒した3棋士の方に畠山が思い入れを抱くのは自然だし、冒頭の「空しさ」は自分が成長を見守った棋士たちへの期待の裏返しだろう。

畠山自身は公式戦で藤井に3戦3敗。対局の都度、「急激に強くなっていることにビックリした」。強くなり続ける理由は「分かりません」という畠山だが、強烈に覚えている場面を教えてくれた。藤井が公式戦で師匠の杉本昌隆(52)に勝った後、深夜の控室でのこと。その対局の解説役を務めた畠山が「杉本さんが実戦とは違う手を指していたら?」と尋ねると、長時間の対局後で疲れていたはずの藤井が急に目を輝かせて検討を始めたという。「将棋からエネルギーをもらっていると感じた」と畠山。「将棋を食べて(成長の糧にして)いるようだった」とも。多くの棋士の成長を見守った畠山だからこそ感じとれた、藤井の成長の瞬間だったのかもしれない。=敬称略(佐藤圭司)

◆次週は「名人戦ニュース」です。次回の「大志」は5月2日に掲載します。

情報源:(大志 藤井聡太のいる時代)番外編 「将棋を食べてるようだ」西の熱血幹事は思った:朝日新聞デジタル



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