ほぉ・・・
2021年4月2日 7時00分
――名人に挑戦する心境は。
「A級の大変なメンバーを相手に8勝1敗は実力以上の結果です。それを良い自信に変えたい。過信になってはいけませんが。良い気持ちで臨めればと思っています」
――A級の開幕前、「まずは残留」と話していました。
「そういうメンバーだと思いました。関西の年の近いA級棋士が最初A級に入った頃、そうおっしゃっていましたし、自分は順位が一番下でしたので」
――名人戦に出るイメージはありましたか。
「正直あまりなかったです。A級は1組目で、B級1組にいた3期も大変でした。1期目は負け越しもしました」
斎藤八段、おおらかに語る
「筋金入りの長考派」という斎藤八段。対局前の詳細なルーティンからメガネの本数まで、おおらかに語ってくれました。――初めてのA級でなぜ優勝できたのでしょうか。
「順位戦は持ち時間が6時間あるので、丁寧さを忘れずにやれました。序盤に時間を費やすことができて、うまく乗り切れました。時間が短いと序盤がおおらかというか、悪く言うと見切り発車になることがありますが、順位戦ではそれがありませんでした」
――名人戦は持ち時間が9時間あります。
「私は考えるのが苦にならない方なので、余ることはないと思います。力を発揮しやすい可能性もあるかなと期待しています」
――昔から長考派ですか。
「小学生の頃からの筋金入りです。指導対局でも最後まで残るようなタイプでした」
――気づいたら長考派でしたか。
「そうですね。手を発見しても、すぐに手が出ない性格なのかもしれません。慎重と言われるのは、間違いありません」
――長考派というのは強みでしょうか。
「表裏あると思います。9時間となると、決断のしどころを誤るかもしれません。無限に長考できると思ってしまいそうな心配もあります。一手一手長考することが多いので、見落としのないように慎重に戦えると思います」
――詰将棋が得意で終盤力が強いと言われることがあります。自分の将棋をどう捉えていますか。
「自分の好きな将棋は駒が前に出て行く将棋、リーチの長い将棋です。でも、自分の良いところは自分ではよくわかりません。終盤の読み合いは好きだと思います」
――A級の最終局(佐藤天彦九段戦)は慎重に指していました。
「あの時は普段以上でした。初めてのA級最終局で、挑戦がかかっていて、他の対局の結果も知りませんでした。早い段階から手が伸びず、終盤は慎重にやりすぎてかえって危なかったです。慎重なのも良しあしです」
――今期が9期目の順位戦でした。今月28歳になりますが、名人挑戦に到達するまで早かったのではないでしょうか。
「何とも言えませんが、(3期在籍した)C級1組がかなり長く感じました。B級2組、B級1組、A級は、思った以上の結果になってまずまずかなと思います。群雄割拠の状況なので一年一年どうなるか、ずっと危機感を持っています」
――今回、挑戦する渡辺名人は、これまでどんな存在だったでしょうか。
「私の修業時代、トップ棋士の中で一番若く、生き生きとした将棋を見せていたのが渡辺さんでした。今までの定跡とは違う、攻めの迫力がありました。同じ居飛車党の自分もそういう将棋を指したいと思って、試したこともあります。渡辺さんが上の方々を倒すのを見て、自分もこういう活躍をしたいなと思いました」
――渡辺名人の将棋に対する印象は。
「バランスがいいと思います。また、タイトル戦ですごく戦略を練っています。先手か後手かを考えるのはもちろん、今は第何局だからこの作戦は残しておこうといった考えをインタビューで読んだことがあります。勝負の間合いにたけているのかなと」
――七番勝負のポイントは。
「長所で勝負したいです。作戦は練りますが、戦略家の渡辺さんにそこで勝負できるかわかりません。それこそ、A級順位戦で戦った将棋に自分の良さがあると思うので、それを見つけて継続するのが一番かなと」
――持ち時間を使うペースが相手とは違うかもしれません。
「相手との残り時間の差を気にしないといけません。マラソンのラップタイムのように、1日目終了時点ではここ、2日目の昼時点ではここというラインを考えておこうと思います」
――名人戦以外のこともうかがいます。元々、目標とする棋士はいたのでしょうか。
「こうなりたい、というのはありませんでした。プロになってから、自分の将棋を見つけたいという思いはありました。修業時代に一番棋譜を並べたのは、谷川浩司九段です。谷川九段の伸びやかな将棋の影響は受けていると思います。師匠の畠山(鎮八段)の猛牛のような攻め将棋にも憧れました」
――羽生善治九段や渡辺名人といったトップ棋士もいますが、谷川九段の棋譜だったのは同じ関西だからでしょうか。
「もちろん羽生九段、渡辺名人の棋譜も並べました。もう少し具体的に言うと、谷川九段の将棋をまとめた全集に本人の心情が書いてあったので、(棋譜を並べながら)それを読んでいました」
――谷川九段の将棋に触れて、何か自分の支えになったことは。
「谷川九段の対局の記録係をよく務めました。受け継ぎたいと言うのはおこがましいかもしれませんが、凜(りん)とした対局姿勢、立ち居振る舞いをまねしたいという気持ちはあります」
――デビュー以来、毎年勝率6割以上を記録しています。
「プロになったとき、目標を尋ねられて勝率7割以上と答えました。7割以下の年は不満があります。年によって差がないのは悪いことではないかなと思います」
――負けても、あまり気持ちをひきずらないのでしょうか。
「わりと切り替えは早い方かなと思います。負けたら、その日に消化することを意識しています。寝られない時もありますが、消化するための時間と割り切っています。引きずり過ぎないのが長所かなと思います」
――2018年に王座戦でタイトルを初めて獲得しました。
「自分のスタイルでやってきたことが実ったのは自信になりました。大舞台で臆せず戦えるという経験ができました。プラスしかなかったです」
――そうした経験は今回も生きるでしょうか。
「タイトル戦の空気感にのまれないように、という点で生かせると思います」
――タイトルを取った翌年、永瀬拓矢王座に取られてしまいましたが、その後に崩れませんでした。
「同じ相手に0―3という成績は、その瞬間はショックが大きかったです。でも、1日経って振り返ると、純粋に実力が及ばないと思うところもありました。タイトルホルダーになって、理想をもちすぎて窮屈なところがありました。柔軟さがなかったと思います。それがわかったのは大きなことでした。課題が見つかったと思ったので、崩れずに済んだかなと」
――タイトルを失った直後に対局がありましたね。
「大阪に帰ってその翌日に順位戦の対局がありました。幸運なことに、落ち込む暇もなく臨みました。その対局を制して、王座戦の分を順位戦で実らせる(=A級昇級)ことができました」
――普段、将棋に取り組む上でのモチベーションは何でしょうか。
「もちろん将棋が面白い、楽しいということはあります。ただ、一番やる気になるのは、年齢の近い若手が活躍していたり、良い将棋を見せていたりする時です。自分もやりたいなと刺激を受けます。もしかしたら年齢は関係ないかもしれません。そう思わされる人がたくさんいます」
――誰にそういうことを感じることが多いですか。
「関西だと菅井さん(菅井竜也八段)、東京だと永瀬さん。この数年だと藤井さん(藤井聡太二冠)。パッと浮かぶのはそういった人たちです」
――将棋をやっていて楽しいと感じる時は。
「将棋だからこういう手が起こるのかな、ゲームとしてうまくできているな、と感じることがあります。対局の時でも研究の時でも、ゲームとしての面白さを感じた瞬間が楽しいです。勝負を争うスリルの面白さとは違うかもしれません」
――勝負を楽しんでいるという感覚はないですか。
「ないかもしれません。むしろ指し手を楽しんでいる、面白みを発見している気がします」
――苦しい将棋をひっくり返した時は楽しさを感じますか。
「それは楽しいというよりは、最善を尽くせた喜びだと思います。将棋は逆転しやすいゲームと言われますが、その点は面白いと思います。勝負の面では、ホッとするか悔しいかのどちらかです。だから、私は将棋以外の勝負事はそんなに好きではないかもしれません。棋士は勝負事が好きな人が多いと思いますが」
――趣味は何でしょうか。
「最近はあまり外に出られませんが、旅行が好きです。最近は料理や家のことをすることが多いです」
――これまで旅行はどこに行きましたか。
「47都道府県に行くのを目標にしていて、30ちょっとは行っているはずです。将棋のお仕事でだいぶ埋まってきました。東北には全然行けていません」
――名人戦で気になる対局場はありますか。
「やっぱり(第1局を行う)椿山荘ですかね。名人戦の対局者として行くのは憧れがありました」
――料理は何を作りますか。
「最近はフルーツを取ろうと思って、レーズンをお酢と蜂蜜に漬けて、それをヨーグルトで食べています。お酢と果物は体に良いと思うので。食べる時は栄養価を気にします。たんぱく質は取っておこうとか、カリウムが足りないなとか、クエン酸を取っておこうとか」
――肉料理、魚料理も作りますか。
「作ります。好き嫌いは少ないです。肉だったらしょうが焼きとか。魚だったら塩こうじで焼くのが好きです。おいしさと健康が両立できそうだなと」
――普段の息抜きは。
「風呂に入るのが好きで、朝も夜も入ることが多いです。浴室でテレビを見ながら30~40分入るのがリフレッシュの時間です」
――タイトル戦では温泉地に行くこともあります。
「これまでのタイトル戦でも、朝に入ることが多かったです。普段の対局の朝にも風呂に入ります。タイトル戦の時は朝6時ぐらいには起きています」
――対局の前の日は寝られますか。
「結構寝る方です。寝るために、前日の過ごし方はルーティンを決めています。夕食を夜8時より前に食べておいて、お風呂に入って疲れさせて、眠りやすくします。他にもアイマスクをしたり、ホットミルクを飲んだり」
――対局の後は寝られますか。
「寝られないですね。神経が高ぶっているのでしょうか」
――名人戦は2日制ですが、1日目の夜は寝られるでしょうか。
「そうですね。もしかしたら一番近い課題の一つかもしれません。これまでに経験がないので」
――メガネはいくつ持っていますか。
「四つぐらいです。いつもは目にコンタクトレンズを入れて、度が入っていないメガネをかけていますが、目が痛くなった時に使う度が入ったメガネもあります。対局中は光が気になることがあるので、遮光性のメガネもあります。対局の時は三つぐらい持っています」
――名人戦七番勝負、自分のどんなところを見てほしいですか。
「どう見られるかはわかりませんが、タイトル戦なので立ち居振る舞いや厳しく真剣に望む姿を見せたいです。将棋に関しては、自分の将棋を指すだけだと思っています。しっかり準備して臨みたいです」(聞き手・村瀬信也)
情報源:斎藤八段、タイトル戦は6時起き 名人戦「厳しく臨む」:朝日新聞デジタル
村)刺激を受ける棋士の名前を聞くと、「関西だと菅井さん、東京だと永瀬さん」。「あの棋士」の名前も挙がりました。そして、よく作る料理を尋ねると…。
斎藤八段、タイトル戦は6時起き 名人戦「厳しく望む」:朝日新聞デジタル https://t.co/QK1tN7PTQ6— 朝日新聞将棋取材班 (@asahi_shogi) April 1, 2021
「他にもアイマスクをしたり、ホットミルクを飲んだり…」。斎藤八段、ルーティンを語って下さいました。
斎藤八段、タイトル戦は6時起き 名人戦「厳しく望む」 https://t.co/HAE7ItYG8O
— 高津祐典 (@yusuketakatsu) April 1, 2021
斎藤八段は対局前の朝によくお風呂に入るそうです。メガネのことや料理のこと、そして対局姿勢への思いを語っています。
斎藤慎太郎八段、リフレッシュは「朝のお風呂」~名人挑戦、意気込みは~=村瀬信也、村上耕司撮影 https://t.co/OWkEHwQ5fa
— 高津祐典 (@yusuketakatsu) April 1, 2021
村)挑戦者の斎藤八段のインタビューです→「考えるのが苦にならない。持ち時間9時間の名人戦は力を発揮しやすいのでは、と期待している」
斎藤慎太郎八段、リフレッシュは「朝のお風呂」~名人挑戦、意気込みは~=村瀬信也、村上耕司撮影 https://t.co/i0F02zf3YP @YouTubeより pic.twitter.com/zLXzzdgwoQ— 朝日新聞将棋取材班 (@asahi_shogi) April 1, 2021
4月7日 9時から対局開始
渡辺明名人の振り歩先
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- 名人戦・順位戦 |棋戦|日本将棋連盟
- 第79期名人戦・順位戦 七番勝負/A級
- 名人戦棋譜速報│将棋・名人戦順位戦棋譜速報サイト
- 名人戦棋譜速報(@meijinsen)さん | Twitter
- 第78期将棋名人戦七番勝負 ライブ中継:朝日新聞デジタル
まずは、どちらが先手を取るか・・・
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