へぇ・・・
2021年4月2日 7時00分
第79期将棋名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催、大和証券グループ協賛)が4月7日に開幕する。昨年、初挑戦で名人位を獲得した渡辺明名人(36)=棋王・王将と合わせ三冠=に、斎藤慎太郎八段(27)が挑戦する。
竜王9連覇、棋王9連覇など、タイトルの防衛戦では数々の実績がある渡辺名人だが、今回はどう臨むのか。最新の研究状況などもあわせて話を聞いた。
――現在のご自分の調子はどうですか。
「前年度、タイトル戦の結果では一つ取られて一つ取って、数としては同じで終えられたので、その点ではうまくやれたかなと思います。1月に王将戦が始まる段階では、タイトル戦の間隔がちょっとあいたので、懸念していたところはありましたが、実際にタイトル戦に入ったらすぐに状態としては戻ってきた。ただ、コンディションはよくてもタイトル戦の結果が悪いと、名人戦に臨むにあたって気持ちの面でついてこない場合があるので、そこは懸念していましたが、クリアできたので、将棋の状態や気持ちの面では心配なく名人戦に向かえるかなというのはあります」
名人、率直に語る
研究に楽しみはある?棋士の中終盤力は向上するのか?名人が率直な考えを語りました。――防衛で終えたが、王将戦七番勝負は3連勝から2連敗、棋王戦五番勝負は初戦を落とした。その時の心境は。
「もともとタイトル戦はそんなに簡単にはいかないので、そこから後半戦の勝負という状況でした。棋王戦も同じような状況。どちらも星一つリードという状況だったので、どっちか最終局にいくのは仕方ないかなと思っていたので、それが二つとも6局目、4局目で終わることができたのはうれしい誤算ではありました。タイトル戦においては、やっぱり相手も強いですし、七番勝負だったら4勝2敗、五番勝負だったら3勝1敗で勝つのが、一番うまくいったパターン。それ以上はあまり望んでいない。最終局までいかないで勝ったらもう大成功です。やっぱり最終局は気持ちの面でも難しいですし、先後も決まっていないので、そこまでいっちゃったらしょうがないというところはある。6局目ないし4局目で終われれば大成功というところです。4月からの名人戦に向けてすごくいい形になったというのはあります」
――斎藤八段の印象は?
「対局数が少ないですからね。3月の対戦もすごい久しぶりでしたし、タイトル戦も初めてなので、ちょっとつかみ切れていないところはありますね。2日制も初めてなので、七番勝負のイメージはまだわいていない。A級順位戦は安定感はありましたよね。星の運びもそうですし、一局一局の内容もそう。斎藤さん、もともと長考派だし、持ち時間が長いところでより強みを発揮されている印象を受けました」
――初めて2日制での対戦。ポイントは?
「対局数が少ないので、相手の特徴だったり、時間の使い方だったり、そういうのがちょっとつかめていないところがある。そういうのを早くつかんで、対策を練っていければいいのかなというイメージがあります。前半戦は手探りなところはあるかなと思います」
――去年と今年で将棋界全体で作戦の立て方や準備で変わってきたところは?
「AI(人工知能)が入ってきたことで大きく変わったのは3、4年前。それを過ぎてからはそんなに大きくは変わってない。みんなAIで研究して、ある程度序盤を厳しく組み立てるのが主流になっている」
――こなしている状態が定常化している?
「定常化しましたね。棋士が疲弊しますよね。ずっとやっていると。それは感じます。たとえば5年くらい前は、対局前は体調を整えて、前の日にばたばたしてもしょうがないというのはありましたが、今は前の日まで研究というのは当たり前。きりがないですね。研究内容もある程度更新していかないといけないし、終わりがない」
――研究はまだ鉱脈があるという感じなのか、行き詰まった感じなのか。
「時間が足りなくて追われている。行き詰まっているというよりは、処理し切れていない。戦法がいっぱいありすぎて。たとえばどれで来られてもいいようにしたいんだけど、間に合わない。2年前に1局だけあった将棋をいきなり出して『あなた、限られた時間で対応しなさい』と。そういうことをみんなやっているわけです。だからそういう引き出しが多い方が有利なんです」
――やりがいや面白い部分はある?
「研究していく変化の中で、思わず二度見するような手が出てくることはあるけど、その場で感心して終わりです。その手は実戦では出ないから。実際にその通りになる可能性は少ない」
――楽しみもある?
「楽しくはない。時間に追われている感じはある。対局の間隔があいていればゆっくりそこに向かってやっていけばいいですけど、実際に対局が終わって中3日でとなると、それは結構大変なところも多い。先手番と後手番ではっきり違っていて、特に相居飛車の場合、先手番が作戦を出して、後手番がそれを受ける。分かりやすく言うと、先手番はどうやったら相手が間違えてくれるかというプランを考える。後手番はどうやったら互角でキープできるかというのを準備するわけです。後手番がそれをクリアすると、いわゆるねじり合いの将棋になっていく」
――先手側と後手側、両方考えるわけですか。
「振り駒の将棋は両方考えます。だから本当は矛盾が生じるんですよ。相居飛車の先手と後手、どっちになってもいいように研究して、結果的に先手でも後手でも同じ将棋をやることがある。結構、昔から言われている居飛車党の矛盾です。結局のところ、どちらを持っても自分の方が研究が深いんだよという感じの顔でやるしかないんですよ。結局はいくら研究があってもそこで決定的な差はつかないんで、じゃあ普通にやりましょうというところはありますね」
――どうやって中終盤の力を上げることに取り組んでいる?
「それは難しいテーマです。果たしてプロ棋士の中終盤力は向上しているのかというのは、それだけで何時間も討論できる、これは棋士によって意見は分かれると思う」
――私はこうやっているというのは?
「例えば終盤は詰将棋の速さみたいなところですよね。今さら僕が藤井聡太さんみたいな速さで解けないし、どこを強さとして出していくかというのはそれぞれの持ち味です。今さら大きくは変わらない。最終盤のところを僕は売りにしていない。そういう組み立て方じゃないので、そこを鍛えればいいというものじゃないんですよね」
――最後に詰むか詰まないかという将棋ではない?
「そういう将棋も年に何局かはあるんですけど、そこはもう僕の勝ちパターンじゃないですね。勝つこともあるし、負けることもあるけれど、自分の勝ちパターンからは外れていますね。だからこの前の朝日杯で藤井さんとやったときの金寄りとか、ああいうのを詰まして勝つ棋風じゃない。もっと前にはっきり1手勝つというパターンが多いので、終盤でああいう感じで勝つという組み立てになっている時点で失敗していますね。あれがもし自分の勝てる将棋だとしたら、勝ちパターンからは外れていますね」
――斎藤さんも詰将棋が得意ですが、戦い方としては詰む詰まないの前に決着をつけたい?
「そういう展開になることもあるので、そうなったらなったでしょうがないですよね。なったらなったで頑張る。まあそこは自分の土俵じゃないけどって感じですよね」
――その一歩手前のところは力は伸ばせるのか、難しいのか。
「中盤の力を伸ばそうみたいなトレーニングはしない。自分でいえばこの3年くらい、中終盤の判断で失敗して負けたという将棋はそんなに多くないんですよ。自分で言うのもあれですけど。そういう負け方が増えていったら、まあ考えます。だからそこを何とかしようとは思わない。この前の朝日杯のように最終盤で勝負というのはもうあきらめているので。そこを何とかしようという意識ではやっていないです」
――藤井二冠は形勢判断の力を付けなければと言っているが、つけられるものか。
「それは結構あるんじゃないですか。例えば駒がぶつかって、ちょっと折衝が起きての形勢ってだれでも判断できるんですけど、駒がぶつかる手前ぐらいにそれを判断しろと言われたら、結構プロでも難しい。でも実際はぶつかる手前くらいでもう差がついているんです。だからそういうことを藤井君は言っているのだと思う。お互いに駒台に駒が載ってからだったら誰でも判断できるわけです。そうじゃない、駒がぶつかる手前で判断できれば有利だし、そういうトレーニングはあると思いますね」
――改めて名人戦に向けて、どう臨むか。
「去年は初めて名人戦に出るというところで、その独特の緊張感がありました。チャンスとしては最後かもしれないし。今年はタイトルを持っての防衛戦で、今まで何度も経験している状況。去年はやっぱり平常心ではなかったところもあったと思う。そういう意味では今回は何かを意識するというわけではなく、普段どおりで臨めるかなというのはあります。昨年は日程的にイレギュラーなところがあって、名人になってからわりとすぐにここまで来ちゃったところがあるので、もう一回、「真の名人」じゃないですけど、それを取りにいくという感じでやれればいいかなと思います」(聞き手・村上耕司)
情報源:渡辺名人「真の名人を取りにいく」 語った勝ちパターン:朝日新聞デジタル
村)「斎藤さん、もともと長考派だし、持ち時間が長いところでより強みを発揮されている印象を受けました」。強くなるために普段取り組んでいることなどについても聞きました。
渡辺名人「真の名人を取りにいく」 語った勝ちパターン:朝日新聞デジタル https://t.co/KDILUeCleI— 朝日新聞将棋取材班 (@asahi_shogi) April 1, 2021
「中盤の力を伸ばそうみたいなトレーニングはしない」。なぜならそこは、そう失敗しないから。とても渡辺名人らしくて、さすがです。
渡辺名人「真の名人を取りにいく」 語った勝ちパターン https://t.co/Gwo1iRSP99
— 高津祐典 (@yusuketakatsu) April 1, 2021
研究に楽しみはある?棋士の中終盤力は向上するのか?渡辺名人がいつも通り、率直に考えを語っています。「真の名人をとりにいく」というのがズシリと来ました。
渡辺明名人「いまさら藤井二冠みたいにはなれない」~名人防衛、意気込みは~=村瀬信也、村上耕司撮影 https://t.co/RUN6beVSau
— 高津祐典 (@yusuketakatsu) April 1, 2021
村)名人戦第1局が7、8日に行われます。初防衛を目指す渡辺名人に意気込みを聞きました→「真の名人を取りに行く」
渡辺明名人「いまさら藤井二冠みたいにはなれない」~名人防衛、意気込みは~=村瀬信也、村上耕司撮影 https://t.co/fVVVooiqBl @YouTubeより pic.twitter.com/TKPS8EChLt— 朝日新聞将棋取材班 (@asahi_shogi) April 1, 2021
4月7日 9時から対局開始
渡辺明名人の振り歩先
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- 第78期将棋名人戦七番勝負 ライブ中継:朝日新聞デジタル
まずは、どちらが先手を取るか・・・
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