藤井棋聖、またも“神の一手”　どこまで続く勝率８割　初防衛戦も死角なし – 産経ニュース

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2021.4.2 06:00

第３４期竜王戦ランキング戦２組準決勝で松尾歩八段を破り、対戦を振り返る藤井聡太棋聖＝３月２３日午後、東京都渋谷区の将棋会館（代表撮影）

「トップレベルとの対局が多い中で結果が出せたことは自信になる」。将棋の現役最年少タイトルホルダー、藤井聡太棋聖（１８）＝王位＝は３月２３日の第３４期竜王戦ランキング戦２組の準決勝で、松尾歩（あゆむ）八段（４１）に勝ち、昨年度の成績を４４勝８敗（勝率８割４分６厘）とし、２年連続３度目の最多勝を決めた。勝率は史上初の４年連続８割超を達成した。対局後、シーズンを振り返り充実感を口にした藤井棋聖。初防衛が懸かる今年度も死角はみえない－。

絶妙手にどよめき

３月２３日の対局は午前１０時に始まり、午後９時４８分、７５手で藤井棋聖が勝利した。「２０２０ユーキャン新語・流行語大賞」のノミネート語３０に選ばれた「ＡＩ（人工知能）超え」の一手が本局でも出た。

先手の藤井棋聖が終盤の５７手目に指した▲４一銀の王手。銀をただで取られる「ただ捨て」の手だが、銀を捨てることで相手玉を詰ます速度を高める絶妙手だった。

飛車が取れる局面にもかかわらず、銀のただ捨て。ネット上では「人類には普通指せない」「神の一手」とも表現された。藤井棋聖は５９分の長考の末、この手を放った。

“神の一手”で最終局も勝利し、昨年度の記録４部門（対局数、勝ち数、勝率、連勝）のうち、勝ち数（４４勝）、勝率（８割４分６厘）で１位。勝率は史上初の４年連続８割超で、２度の勝率８割４分超も史上初だ。連勝も最多の１７と伸ばしたが、継続中のため、今年度の記録となってしまう。

藤井棋聖は「（棋聖など２つのタイトルを獲得した）昨年６月、７月で印象に残る対局が多かった。（４年連続勝率８割については）タイトル戦にも出て、トップレベルの方との対局が多い中で結果が出せたことは自信になると思っている」と、充実した一年を振り返った。

驚異の成長

藤井棋聖の昨年度の活躍について、「自分の感覚では早過ぎると思った」と語るのは、棋聖や竜王の挑戦経験を持つ鈴木大介九段（４６）＝日本将棋連盟常務理事。「成績もそうだが、棋力の充実や将棋内容など、プロの目から見て目を見張るものがある。こんな短時間で、まだ強くなるものなのか」

タイトルを獲得すると、環境が変わり、揮毫（きごう）などタイトル保持者としての仕事が増え、生活が一変する。そのため、調子を落とす棋士もいる。

藤井棋聖は昨年度、史上最年少タイトル挑戦、史上最年少タイトル獲得、史上最年少２冠、史上最年少八段など数々の記録を打ち立てた。高校自主退学で将棋に専念する道を選んだ天才棋士には大きな崩れはなかった。

鈴木九段は「将棋はメンタルな面が非常に大きい。達成感が１つあると、ある棋戦で勝ち上がって良い成績が出ても他の棋戦で調子が悪くなることがある。藤井棋聖の場合、そういう揺れも少なかった」と分析する。

こうした中、鈴木九段が注目するのが勝率８割をいつまで続けられるかだ。

プロデビューした平成２８年度（１０戦１０勝）を除き、藤井棋聖の勝率は２９年度＝８割３分６厘▽３０年度＝８割４分９厘▽令和元年度＝８割１分５厘▽２年度＝８割４分６厘－で、史上初の４年連続８割以上。鈴木九段は「昨年度のようにスランプがなければ、今年度はもっと勝つ可能性がある」と推測する。

同連盟によると、記録が残る中で歴代最高勝率は中原誠十六世名人（７３）の８割５分５厘（４７勝８敗）＝昭和４２年度。「タイトルホルダーで（中原十六世名人と同じくらいの）記録を残すことになったらすごいことだ」（鈴木九段）

藤井聡太棋聖の主な記録

待ち受ける「鬼の住処」

あらゆる記録に挑戦する藤井棋聖が今年度に待つ挑戦は初防衛戦となる第９２期ヒューリック杯棋聖戦。挑戦者を決める決勝トーナメントが現在進行中で、前棋聖の渡辺明三冠（３６）＝名人・棋王・王将＝は、いち早く４強入りを決めている。

鈴木九段は防衛戦について、「勢いのある人（挑戦者）をどう退治するかということで大変」と指摘するが、藤井棋聖は昨年度、実力がワンランク上がり、さらに力を蓄えただけに、「タイトル戦自体が藤井棋聖中心になるだろう。どの棋戦でも本命の一人」と断言。「棋士の中で一番、負ける姿が想像しにくい」と、防衛はもちろん、タイトルを増やしている可能性が高いと推測する。

今期の順位戦Ｂ級１組での戦いも注目される。２１歳２カ月の最年少名人の記録を更新するためには「鬼の住処（すみか）」といわれるＢ級１組の１期抜けが最低限の条件だ。

今年度に向けて、「防衛戦もあり、６月頃から対局が増えると思う。良い内容の将棋が指せるよう実力を高めていきたい」と意気込みを語る藤井棋聖。昨年度以上の活躍で今年度も将棋ファンの度肝を抜いてくれそうだ。

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先手の藤井棋聖が終盤の57手目に指した▲４一銀の王手

飛車が取れる局面にもかかわらず、銀のただ捨て

ネット上では「人類には普通指せない」「神の一手」とも表現された

藤井棋聖は59分の長考の末、この手を放った

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