へぇ・・
師匠・杉本八段と本音で語った将棋のあれこれ
2021/03/12 13:00
今や日本一有名な「師弟」と言っても過言ではないだろう。杉本昌隆八段と藤井聡太二冠。その2人がタイトルの重みや才能とピーク、将棋をスポーツに例えると……とさまざまなことについて本音で語り合った。本稿では、7組の棋士の師弟関係のノンフィクションと杉本八段と藤井二冠の対談が収められた、野澤亘伸氏著『絆――棋士たち 師弟の物語』から、杉本八段と藤井二冠の対談の一部を抜粋してお届けする。
藤井二冠に連絡するとき緊張する師匠
――藤井二冠がタイトルを獲られてから杉本師匠は藤井二冠に連絡をするときに緊張されるとか?
杉本八段(以下、杉本):彼は優勝は最年少記録など、自分が実現できていないものを次々に達成しています。その中でもタイトルというのは、いままでとはまた違う。棋界にいる者にとっての憧れであり、目標です。それを成し遂げた棋士として見てしまうと、これまでとは違う感情が生まれますね。
藤井二冠(以下、藤井):タイトルを獲ったことで自分自身はとくに変わらないと思っています。でもタイトル戦を通して、普段では得られないような経験をすることができました。それは今後に生かしていきたいです。
――棋戦での移動の時間が多くなります。飛行機に乗っている時間はどうされているのですか? 羽生九段は「寝るのは得意で、どこでも寝られます」と。
藤井:そうなんですね。私はとくに決めていないです。飛行機は窓際だったので、景色を眺めていました。飛行機自体、家族旅行で北海道に行ったとき以来でした。海外はいずれ機会があれば行ってみたいです。どこに行きたいかは、うーん、難しいですね。
――対局前は普通に休めていますか?
藤井:基本的にはそうですね。2日制の場合、1日目の夜のほうが難しいのかなとは思います。気になってしまうことがあるので。幸い、王位戦では6時間以上は睡眠時間を確保できました。寝るのは得意というほどでもないです。
――藤井二冠は波が少ないように思うのですが、ご自身の中で調子が悪いと感じるときはあるのでしょうか?
藤井:まったくないわけではないです。
杉本:波がすごく小さいタイプかなとは思います。少なくとも、側で見ていて「今日は調子が悪そうだな」と感じることはほとんどないですね。
藤井:フフフ。
杉本:ひとつ聞きたいのが、1年前の王将リーグの挑戦がかかった最終の広瀬戦で、角換わりでなく矢倉を選択したときには驚いた。あのときの選択が、今年タイトルを獲得した渡辺さんとの棋聖戦で、矢倉を選ぶことにつながったのかな?
藤井:うーん、あまり大一番だとか、どの戦法を選択するとかは意識していませんね。
杉本:これはトップ棋士に共通することかもしれませんね。羽生さんもそうですし、大きい一番だから得意な形という発想ではいけないのかもしれない。でも、それができるのは棋士の中でも限られた人だと思います。
藤井二冠「普段から自然体でいることが大事」
――モチベーションを高めるために、どんなことを気にかけていますか?
杉本:新しい発見をすることですかね。棋士になってから何十年もたつと、毎日の生活や対局の気持ちがマンネリ化しやすくなる。新しい形に踏み込んだり、発見しようという気持ちが薄れがちになってしまう。そういう意味で、日々強引にでも理由をつけて自分の中で新しい発見をするようにしています。若い弟子たちと一緒に学ぶというのも、その1つでしょうか。
いまは20代、30代で弟子を取る棋士も増えましたけど、私が30代の頃はまだ少なかった。弟子を取ると自分のトーナメントを諦めたんだと思われがちな時代でした。初めて弟子を取ったときに、『これから普及に専念されるんですね』と言われて、心外でした(笑)。
藤井:なるほど……(笑)。
杉本:でも、弟子がいてよかったなと思います。彼らの将棋を見ているだけで、自分の将棋が活性化されたり、自分の対局の中で武器になっていると感じるときがある。藤井二冠も40代後半になったら弟子を取ることを勧めますね。加えるならば、自分よりも才能のある弟子を。大変かもしれないけど。
藤井:フフフ。自分はモチベーションを維持するというのは、うーん……。あまり無理をしないことですかね。普段から自然体でいることがいちばん続けられますし、その中で新しい発見とかを大切にしていくのがいいのかなと。
――頑張りすぎてしまうと反動がきてしまうと?
藤井:自分の場合は、そうかもしれません。
――将棋以外の才能で、あったらいいなと思うものはありますか?
杉本:将棋の才能がもっと欲しいですけど(笑)。あと才能とは違いますけど、健康な身体と、メンタル面の強さは欲しいですね。やっぱり、いまでも負けるとダメージが大きいので。
藤井:願ったらキリがないので、与えられたものでやっていくしかないです。
――将棋をスポーツに例えたらどんな競技でしょうか?
杉本:場面場面を切り取ったら野球のピッチャーとバッターの関係にすごく似ている。また、自分の思った手が指せる場面が少ないのは、テニスのストロークの打ち合いに似ているかなと。秒読みでたたき合うのはテニスの感じです。
藤井:どうしてテニスなんですか?
杉本:30秒で読める人と、読めない人では考え方が違う(笑)。こちらからすると、30秒でもボロが出る感覚なので。読んでいる暇がないというか、とっさの反応をしなければ自分の中で追いつかない。
将棋は全体的にはサッカーに近い
藤井:なるほど。自分はすごくスポーツが下手なんですよ。
走るとか単純なものはできるんですけど、体育の授業でバドミントンをやったときはラケットに全然当たらなくて。将棋って瞬時の判断が要求される場面がスポーツに比べて圧倒的に少ないので、自分としてはありがたいと思っています。球技ではボールが来るまでにどう動くか判断しなければならない場面が多いですけど、将棋の場合はそういうことはないですね。将棋は初めて見る局面ほど、判断力がいちばん大切になります。全体的にはサッカーとかが近いと思いますけど、部分的な手筋は毎回違います。
杉本:藤井二冠は読めるから、そこでも駆け引きできている認識なのでしょうね。たくさんの駒があって配置を考えたりするのは、サッカーがすごく似ていると思う。ただ、対局者とか司令塔の考え方とかは違いますね。武道ともちょっと違うかな。
――藤井二冠はインタビューで「詰将棋解答能力は12歳くらいがピークだった」と答えていますが、どういうことでしょうか?
藤井:そのままの意味です。正確に測るのは難しいですけど、自分の感覚としてはそうだったのかなと。将棋の強さと、詰将棋を早く解けることはそこまで大きな相関関係があるわけではないので、単純に当時のほうがよく解いていたのが要因としては大きいと思います。
杉本:スポーツ選手の身体能力が、10代でピークを迎えるというのは珍しくないですよね。それは年を重ねることで補えるものとは違う。スピードだけを取ったときに、人間のピークがそこにあるのかもしれない。12、13歳はまだそこからたくさん学ぶ年だから、詰将棋に関してもそれから訓練して早くなる感覚がある。でも藤井二冠の場合は、その段階でもう自分の中でピークに達していたということでしょうね。
情報源:藤井聡太二冠が語る「将棋とサッカー」の共通点(東洋経済オンライン) – Yahoo!ニュース(コメント)
情報源:藤井聡太二冠が語る「将棋とサッカー」の共通点 | リーダーシップ・教養・資格・スキル | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
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