「鬼のすみか」に１３期、悲願のＡ級　山崎八段、名人戦・順位戦で昇級　将棋：朝日新聞デジタル

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2021年2月22日 16時30分

名人戦・Ｂ級１組順位戦１２回戦の久保利明九段との対局で、３手目を指す山崎隆之八段＝４日午前、大阪市福島区

将棋の山崎隆之八段（４０）が第７９期名人戦・Ｂ級１組順位戦（朝日新聞社、毎日新聞社主催）で９勝２敗の好成績を挙げ、最終戦を待たず、来期Ａ級順位戦への昇級が決まった。「鬼のすみか」と呼ばれるＢ級１組で１３期目。苦戦の末に壁を破った。

■弟弟子がサポート、ＰＣ新調してネット対局　故郷・広島のファンへ「お待たせしてしまって」

１７歳でプロデビューし、２０代の頃から「西の将棋王子」と称され、ＮＨＫ杯や日本シリーズなど棋戦優勝８回と実績も十分。「山崎八段がＡ級で戦う姿を見たい」。ファンの期待は大きかった。

だが、第６７期から参戦したＢ級１組で足踏みが続く。特に惜しかったのは第７５期。８勝３敗で臨んだ最終戦で阿久津主税（ちから）八段（３８）に敗れ、同成績ながら順位が上の豊島将之・当時七段（３０）がＡ級へ。

直近の第７８期は３勝９敗。同じ成績で順位が下だった谷川浩司九段（５８）と畠山鎮（まもる）八段（５１）がＢ級２組へ降級。紙一重で残留した山崎は「Ｂ級１組で『自分の実力が足りない』と初めて感じた。『こんな思いは嫌だ』と思った」。

「環境を変えて出直そう」と壊れていたパソコンを買い替えたのもプラスに働いた。同じ広島市出身で同じ森信雄七段（６９）門下の弟弟子、糸谷哲郎八段（３２）がパソコンの整備を助けてくれた。ネットでの練習対局も重ねた。

山崎自身、３０代後半から記憶力の低下も感じた中、「少し上の先輩棋士が実力を維持したり、さらに強くなったりする姿が、すごくまぶしく思えた」。初タイトルの王位を獲得した木村一基（かずき）九段（４７）、ＮＨＫ杯で優勝した深浦康市九段（４９）、王座戦の挑戦者になった久保利明九段（４５）。「少しでも近づきたいと思った」

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山崎は今期、開幕から５連勝。近藤誠也七段（２４）には敗れたが、その後、また４連勝。単独トップの９勝１敗で今月４日、久保との１２回戦を迎えた。追うのは、７勝３敗の永瀬拓矢王座（２８）と郷田真隆九段（４９）。この日、「山崎勝ち」か「永瀬負け」か「郷田負け」か、いずれかの条件を満たせば山崎昇級が決まった。

図・５３手目▲２七玉まで

山崎の先手で▲９六歩△９四歩▲７八銀という、妖（あや）しい出だし。図は、山崎が３八にいた玉を▲２七玉と進めた局面。飛車先に金と玉が陣取る珍型だ。２０代のころから「未知の局面を考えるのが好き」と言い、人まねを好まない山崎ならではの独創的な布陣だ。この後、「はっきり勝ちになった局面もあった」（山崎）というから、山崎の剛腕、恐るべしだ。本局をネット中継で見守った師匠の森は「（１月の１１回戦、松尾歩〈あゆむ〉八段〈４０〉戦での）飛車の大展開など、今期は見ていて面白い将棋が多かった」。

注目の３局の勝敗は――。まず、午後１１時２０分に永瀬が行方（なめかた）尚史九段（４７）に勝ち。続いて、翌５日午前０時１８分に山崎が負け。この時点で郷田と松尾の対局は「郷田勝勢」という評判。郷田勝ちなら、Ａ級への昇級２枠のゆくえは、最終戦に持ち越しとなる。だが、午前０時３９分、松尾が郷田に逆転勝ち。山崎の３９歳１１カ月での昇級が決まった。

終局後、他力での昇級決定のせいか山崎は厳しい表情。だが、少しずつ笑顔も見せ、「最終戦（の郷田戦）もしっかり指し、棋士人生で一番充実した（今期の）順位戦を指し切りたい」と力強く語った。

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山崎や糸谷が少年時代、腕を磨いた広島将棋センターの代表、田儀聖吾（たぎせいご）さん（５４）は「悲願のＡ級昇級を閉店前に決めてくれてうれしい」。実は、１９７８年に本多冨治さん（故人）が立ち上げた広島将棋センターは、常連客の高齢化による一般来場者の減少にコロナ禍が追い打ちをかけ、経営が苦しくなり、３月７日での閉店を余儀なくされていた。そんな中、山崎のＡ級昇級に広島将棋センターの来場者は歓喜した。

「広島のファンの皆様を、これだけお待たせしてしまって……。Ａ級は厳しい場所とは思いますが、来期Ａ級で自分が戦えている姿を見ていただけるようにしたい」。故郷を愛する山崎は奮戦を誓った。（佐藤圭司）

情報源：「鬼のすみか」に１３期、悲願のＡ級　山崎八段、名人戦・順位戦で昇級　将棋：朝日新聞デジタル

村）Ａ級昇級を決めた山崎八段の記事です→「広島のファンの皆様を、これだけお待たせしてしまって……。Ａ級は厳しい場所とは思いますが、来期Ａ級で自分が戦えている姿を見ていただけるようにしたい」
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— 朝日新聞将棋取材班 (@asahi_shogi) February 22, 2021