山口恵梨子 撮影/松山勇樹

“攻める大和撫子” 山口恵梨子女流二段「コロナ禍で女流棋士は何のためにいるのかを真剣に考えた」 | ENTAME next – アイドル情報総合ニュースサイト

へぇ・・・


2021/01/13

山口恵梨子 撮影/松山勇樹
山口恵梨子 撮影/松山勇樹

「攻める大和撫子」の異名を持つ女流棋士・山口恵梨子女流二段。ネットの将棋番組でのMCや解説の聞き手、自身のYouTubeチャンネルを開設するなど、普及活動に熱心でファンの多い女流棋士である。今回、初となる自身のエッセイコミックを刊行した山口女流二段に、女流棋士の世界や将棋界の話を聞いた。(2回連載の1回目)──エッセイコミックの発売おめでとうございます。反響はいかがでしょうか?

山口 メディアで女流棋士のそのままの姿が描かれることが少なかったので、周りにも喜ばれています。私自身もすごくうれしいです。

──エッセイの中で「対局中、考えすぎて顔がパンパンになる」という印象的なエピソードがありましたが、本当なのでしょうか?

山口 1日に三局対局がありまして、正座してずっと下を見ていると顔がむくんでくるんですよ。だから対局の後に美容室に行くと顔がパンパンに膨らんでいて(笑)。人によるとは思うのですが、女流棋士ならではの悩みだと思います。

──事実なんですね(笑)。では、まず女流棋士の生活についてお伺いしたいのですが、山口女流二段は、休日はどんな生活をされているのですか。

山口 休日は基本的にずっと将棋の勉強をしていますね。

──まるで受験生のようですね。

山口 そうなんです。空いた時間があれば勉強をしたいのですが、勉強ばかりしているとやる気がなくなる。一旦糸が切れると女流棋士として終わりなんですよね。なので気分転換はすごく大事で、バランスを取るために、ゲームしたり漫画読んだり、意識的に休息を取っている感じです。

──なるほど。女流棋士はみな同じような生活なのでしょうか?

山口 女流棋士は約70人いるのですが、同じ生活をしている人は1人もいないんです。みんな自分のスケジュールは自分で決めるし、普及の仕事を受けるかどうかも自分で決めています。

──スケジュールを管理してくれる事務所やマネージャーもいない?

山口 そうですね、すべて自分で管理しています。羽生善治九段や藤井聡太二冠ですら、自分で管理されています。だからこそ、自分の中で「どういう生活をするか」というのはすごく大事で……。対局の勝ち負けであったり、普及活動であったり、それこそ収入であったり、すべてにつながってくるので。女流棋士になったときに、「自分が何をしたいか」を決めておかないとダメですね。何のために今自分はこの仕事をしているのか、年間を通じて目標を立てたり、常に自分が何をしたいか確認し続けることが大事だと思います。

──普通のOLやサラリーマンよりも自己管理能力が問われると。

山口 かもしれません。あとは仕事を受けるかどうかもすごく重要なんです。私たちは対局と普及の仕事を分けて考えていて、対局のことを仕事とは言わないんです。女流棋士が仕事というときは、すべて普及活動のことで、将棋を指すこと──対局はライフワークというか、仕事よりも大事なものですね。

──対局は仕事ではなく、もっと大切なものだと。一方、山口女流二段は、普及活動に熱心な女流棋士として知られています。

山口 対局と普及の仕事のバランスをどう取るかは棋士全員の課題だと思います。私が女流棋士になったときに、「将棋が強くなりたい」という思いはもちろんあったんですけど、一番やりたかったことが将棋の普及でした。というのも、父が将棋好きで、子どもの頃は将棋雑誌やエッセイ集、観戦記など将棋の本がたくさんある家で育ったんです。将棋関連の本を、昔のものから最新のものまで誰よりも読んでいる自負があって。だから、女流棋士になって、それを世間の人たちにお伝えできればと思っていたんです。

──普及活動の一環として、ABEMAなどのネットの将棋番組にご出演されていますが、解説の聞き手としてのこだわりや苦労話はありますか。

山口 私が女流棋士になりたての頃は、将棋解説の聞き手のやり方が「こうやるべき」と固まっていたので、それ以外のやり方を取り入れたいなと意識していました。あと、その将棋番組をどの層が観ているか、どの層が観ていないか、視聴者を分析するのが大事だと思います。子どもの頃、将棋番組を観て、正直何を言っているか分からなかったんですよ(笑)。大人になってようやく面白いと思えるようになって。その違いは何かと考えたときに、ある程度、将棋が強い人向けの番組が多いのかなと思いました。あとは男性向けの番組が多いのかなと。

──視聴者のことを考えるというのはプロデューサー的視点ですね。

山口 自分は演者なんですけどディレクターさんと話したり、スタッフさんがどんな番組を作りたいか聞いたうえで、自分的にどうしたいかを相談しています。

──ABEMAの番組など、将棋を知らなくても楽しめる内容になっていますね。

山口 そう言っていただけるとすごくうれしいです。生放送で対局中ずっと放送しているので、対局者が考えている時間を解説者と聞き手がつながなくてはならない。でも、解説者が考えられる先の手を全部解説してしまうと何も話すことがなくなってしまうんです。私たちの間では結論が出ていても、対局者はまだ考えている、さあ、どうしようと。そうなったとき、世間話になります(笑)。世間話でも解説者の方の良さが出るように話を振ったり、「昔の本のエピソードでこんなことがありましたが本当ですか?」とか、解説者の人柄が伝わるように意識しています。

──今までは棋士の個性というか、パーソナリティが分からなかったので、最近はそういった面がすごく表に出てきていると感じます。

山口 そうですよね。棋士のイメージって、頭がいい、真面目、大人しい、メガネかけているとか、固定観念があるじゃないですか(笑)。

──確かにありますね(笑)。

山口 それってトップの先生たちの写真を見た印象だと思うんですよね。でも実際に羽生善治九段や佐藤康光九段と会ったら、そのイメージは変わると思います。もっと個性的というか。なので、番組では将棋のイメージ、ひいては棋士のイメージが変わればいいと思っています。

──解説の上手な棋士の特徴とは?

山口 木村一基九段や藤井猛九段はすごく解説が上手いですね。私が聞いていて解説が面白いと思う先生たちは、誰よりも準備しているし、お客さんに面白いと思ってほしくて、いろいろ考えていらっしゃいますね。

──テレビ番組などでの木村九段の解説などは、アマチュアの目線に立って、基本的なことまで教えてくださいますよね。

山口 だから解説を聞いていると将棋のことがよく分かるんですよね。木村九段の良さは話の面白さと将棋の解説の分かりやすさだと思います。自分の中で将棋の考え方が言語化できているから視聴者にも理解しやすいんだと思います。若手の棋士でも解説の面白い方がたくさんいます。たとえば佐々木大地五段、高見泰地七段、近藤誠也七段、増田康宏六段でしょうか。みんな強い方ですね(笑)。

──山口女流二段は普及の新たな形としてYouTubeチャンネルを開設するなど、ネットやSNSをいち早く取り入れていると思います。

山口 いや、そうでもなかったですよ。YouTubeもやるかどうか2年ほど悩みました。スポンサーさん絡みという現実的なところでもあったんですけど……(笑)。でも、いろいろなネット番組がありますが、YouTubeしか観ないという方も多いと思うんです。そんな人たちに将棋に興味を持ってもらう入り口になればと思い、始めました。

──チャンネルでは将棋ウォーズ(日本将棋連盟公認のオンライン将棋アプリ)の実況や自戦を解説する動画などを公開されています。

山口 あれは解説と言うよりも、頭の中をただしゃべっているだけに近いですね(笑)。でもこだわりとしては、初段向けの本で「こうすれば良くなる」と書いてあっても実戦では上手くいかないことが多いじゃないですか。そういうのが嫌で、棋譜に関してはアマ5~6段でも使える内容にしています。

──ご自宅でやられていて、1人で全部やるのは大変ではないですか?

山口 動画編集は他の人にお願いしていますが、機材の準備をしたり、台本を書くのが大変ですね。でもコロナ禍で、今まで開催されていた将棋イベントや大会がなくなってしまったので、その代わりになればと……。あとは何年後か分かりませんが、コロナが収束したときには明らかに将棋の人気は落ちるだろうと思ったんですよね。

──どうしてですか?

山口 イベントや大会など、今までやっていたことができない期間があったので。数年後に困るなら、今から何かしなくてはいけない、女流棋士は何のためにいるんだろうと真剣に考えました。もちろん対局に勝つことは一番大事で、そのために私たち女流棋士は日々将棋の研鑽を積んでいるですが、私はその将棋を人に見てもらって楽しんでもらうためにやっていると思っています。ファンのいない世界線では将棋はできない。コロナ禍で何か新しいことができないかと思ったのが動画配信だったんです。

──一方で外出自粛期間があり家にいる時間が増えた方や、藤井二冠の活躍もあり、ここ最近で将棋ファンが増えたのではないでしょうか。実感はありますか?

山口 ありますね。やはり藤井二冠のご活躍が大きいなあと。将棋の世界に天才がいるんだということ、その天才のすごさを体感したいというファンが増えたんだと思います。藤井二冠は将棋がかっこいいですよね。それを伝えるお手伝いができればと考えています。

──山口女流二段としては、今後どこの層に将棋ファンが増えてほしいですか?

山口 私は特に20代~30代の将棋を知らなかった女性ですね。将棋って、ドラクエとかと同じくらい面白いゲームなので、プロはもちろん勝つために勉強していますけど、ファンの人はゲームで遊ぶ感覚で初めてみてもいいと思うんですよね。

──ゲームと言えば、山口女流二段はゲーム関連のお仕事も多いですよね。

山口 そうですね。真面目な話になってしまうのですが、その理由として、女流棋士の仕事の幅を広げられればいいなと考えているんです。収入の面でも外部のお仕事は大事だし、私個人というより「女流棋士はこういう仕事もできます」というアピールに繋がればいいなと。

──女流棋士や棋界全体のことを考えられているんですね。個人的にゲーム好きということではなく?

山口 みんなにはそう思われているかもしれません(笑)。ただ、個人的には将棋に強くなれる時期があると思うので、私も今29歳になったことですし、そろそろ対局に集中してもいいのかなと思っています。20代は将棋の面白さを伝えたい、将棋界を盛り上げたい、と女流棋士の地位向上を考えていたんですが、そろそろ自分の将棋のために生きようかなと。

>>後編に続く

(取材・文/中村佳太)


山口恵梨子(やまぐち・えりこ)
1991年10月12日生まれ、鳥取県出身。堀口弘治七段門下。日本将棋連盟所属の女流二段。激しい攻め将棋の気風から“攻める大和撫子”の異名を持つ。

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