豊島がなぁ、いまだ防衛がないんだよな。
2020.8.22
例年なら、夏場のタイトル戦は王位戦ただ1つだが、今年はコロナ禍の影響で開始が遅れた名人戦と叡王戦が8月まで伸び、3つのタイトル戦が重なる夏となった。
一番先に決着がついたのが名人戦。豊島将之名人に渡辺明二冠が挑戦していたシリーズで、渡辺にとって名人挑戦は初めてだった。
3局目までは豊島が2勝1敗とリードしていたが、第4局で渡辺が薄い玉を中段にうまく逃げて攻めにも使い、勝ち切ったあたりから流れが変わった。
続く第5局は、渡辺が居玉で四間飛車という斬新な作戦を採り、正に『名人に定跡なし』を地で行く一局だった。
これも終盤、渡辺は中段に玉を泳がせ、最後は相手の攻めを完全に切らせて勝利した。渡辺の玉使いには、昔から特別なものがあると私は感じている。
そして勢いのまま3連勝し、初の名人位に就いた。竜王11期の渡辺にして、ようやく掴んだ名人の座である。
生前、大山康晴15世名人は「タイトルは防衛して一人前」と、常々言っていた。追いかけている時は勢いがあっても、追われる立場になると、つい守りの気持ちが出てしまうということで、勢いのある挑戦者を受け止めるのがいかに難しいかを教えたものだ。
最近の才能ある若手棋士も、ほとんど1期でタイトルを失っているし、タイトル戦12回、獲得4期の経験豊富な豊島でさえ、まだ防衛はないのだ。
永瀬拓矢叡王に豊島が挑戦している叡王戦に話を移すと、今期は記録ずくめのシリーズであった。
初戦でいきなり千日手になったかと思うと、第2、3戦はいずれも持将棋となり、第7局が終わった時は永瀬の3勝2敗。開幕から千日手で、2局が持将棋となったことでタイトル戦の1シリーズの最長局数(最低9局)となり、実質8局目の本局で総手数は1232手に達する新記録になった。
現在一番負けにくい棋士と言われ、千日手を苦にしない永瀬らしいシリーズとなり、久しぶりに初タイトル保持者の防衛が見られるかもしれない。
そして王位戦では、勢いのある藤井聡太棋聖が木村一基王位に4連勝し、史上最年少の二冠を達成した。
また第4局については次回以降にお話ししたい。
■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。
情報源:【勝負師たちの系譜】タイトル防衛の難しさ 勢いある挑戦者を抑えてこそ一人前 (1/2ページ) – zakzak:夕刊フジ公式サイト
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— zakzak (@zakdesk) August 22, 2020
来期の棋聖・王位で、藤井聡太二冠が防衛できるか・・・