(取材考記)ソフトで検討、改めて自ら考え独創的に 藤井棋聖、AIでより磨かれた戦術 村瀬信也:朝日新聞デジタル

ほぉ・・・


2020年8月17日 16時30分

7月に史上最年少でタイトルを獲得した藤井聡太棋聖(18)を、偉業達成の数日後に取材する機会があった。「藤井さん自身の将棋がAI(人工知能)に似てくることはありますか」と尋ねると、にわかに表情が曇った。

「似てくることは、基本的にないと思います」

穏やかではあるものの、きっぱりとした口調だった。

将棋のAIは、この十数年で飛躍的な進歩を遂げた。2017年には当時の名人、佐藤天彦九段(32)に勝利。棋士がパソコンに向かって研究するのは、今や当たり前の時代になった。AIの影響を受けた新戦術も数多い。

ただ、「AI流」の指し手を使いこなすのは簡単ではない。AIは戦いの流れにとらわれることなく、その場その場での最善の手を読むからだ。「AIがなぜ、その手を選ぶのか」を深く理解できないと、かえって自分の将棋を見失いかねない。

豊島将之竜王(30)は5年ほど前に他の棋士との練習対局をやめ、AI中心の研究に切り替えた。その決断が好成績につながったが、当初は戸惑うこともあったという。「(AIを搭載した)ソフトは強いので、受け身になって教わる形になりがち。自分の読みをぶつけて考えないと、実際の対局で役立つ手が身につかない」

藤井棋聖も、AIを研究に取り入れている一人だ。ただ、冒頭の取材では「ソフトで検討しても、自分が強くなることにはならない。自分で改めて考えることを意識している」とも語っていた。「AIの申し子」のように見られる時もあるが、最近の成長ぶりは、子どもの時から地道に培ってきた「読みの速さと正確さ」がAIによってより磨かれたと捉えるべきだろう。

藤井棋聖の将棋には技術的な高さだけでなく、華がある。事前の研究から離れた未知の局面で飛び出す絶妙手に私たちが魅せられるのは、そこに独創性を見いだすからだ。今後も大舞台でアッと驚くような鮮烈な手を見せてくれるだろう。挑戦中の王位戦七番勝負では3勝0敗とリードしている。19、20日の第4局に勝てば、二つ目のタイトル獲得を果たし、八段に昇段する。

(文化くらし報道部)

情報源:(取材考記)ソフトで検討、改めて自ら考え独創的に 藤井棋聖、AIでより磨かれた戦術 村瀬信也:朝日新聞デジタル


へぇ・・・