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2020年7月5日 10時00分
将棋の高校生棋士、藤井聡太七段(17)の勢いが止まらない。棋聖戦では渡辺明棋聖(36)に第1局から2連勝し、王位戦でも木村一基王位(47)との開幕局を制した。初タイトル挑戦から、いきなり二冠となることも現実味を帯びてきた。内容面でも充実ぶりが目立つ中、相手の棋士が思わず脱帽するような終盤力を見せつけた対局があった。
6月25日。藤井は東京都渋谷区の将棋会館で、第79期将棋名人戦・B級2組順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)の1回戦に臨んだ。相手は佐々木勇気七段(25)。3年前に、デビュー以来の連勝を「29」で止められている。この日はそれ以来、2度目の対戦だった。
順位戦には名人挑戦権を争うA級を始め5クラスあり、B級2組はその真ん中に当たる。両者は前期、C級1組でそろって昇級。今期から3人になったB級1組への昇級枠を巡って、25人が各10局を戦う。
佐々木は「藤井七段と、持ち時間6時間で戦えることを楽しみにしていた」という。戦型は、先手の佐々木の誘導で角換わり腰掛け銀に。互いに強気の応酬が続き、終盤戦に突入した。
A図は、藤井が△6五桂と跳ねた局面。ここでは、▲7一飛と攻め合う手や▲5八銀打と受ける手などがある。まず佐々木は後者を考えたが、△5七角成▲同銀△同桂不成でダメだと判断。33分で▲2四歩と打って相手の角の利きを遮った。藤井も31分の考慮で△7七桂成を決断。以下▲同金△8八銀▲7八玉△7七銀成▲同玉△6九飛成と進み、B図になった。
佐々木はA図の時点で、B図の先手玉が詰めろかどうかを掘り下げていた。△6五桂が怖いが、▲6六玉と逃げればギリギリ詰まない。そう読んだ末、▲7一銀と打った。「相手の玉は受けが難しい。自分の玉が詰まなければ勝てるのでは」と考えていたという。
しかし、▲7一銀の後の藤井の手順が見事だった。まず△7九竜と王手をかけ、▲7八桂△8八竜▲6八玉に△6一金といったん受けに回る。佐々木は▲8二飛△4一玉に▲2一銀と迫ったが、△5六桂▲同歩△2四角(王手)▲5七桂△5二金打(C図)と進んでみると、先手の2四の歩が消えて後手玉が安泰になり、後手の勝勢がはっきりした。以下10手で佐々木が投了し、藤井が110手で勝利した。
対局直後、佐々木は少し戸惑いを見せながら、「詰むか詰まないか、ギリギリの勝負だと思っていたが、攻めを余されて(=しのがれて)負けるとは思わなかった。読みにない手を多く指された。新しい感覚を感じた」と語った。藤井は「難しい将棋。ずっとわからなかった。いいスタートが切れたので、また頑張りたい」と話した。
藤井は△7九竜以下の妙手順を、いつから読んでいたのか。後日、記者が尋ねると藤井はこう答えた。「▲2四歩の局面で△5二金打まで読んで、際どいですが受かっていそうだと思いました」
一般的に、詰むかどうかの直線的な手順は読みやすいが、攻めと受けの手が組み合わさった手順はプロでも考えづらい。数多くの選択肢がある中、藤井は20手近い複雑な手順を読んでいたことになる。卓越した読みの速さと正確さを改めて印象づけて、2期連続昇級に向けて第一歩を踏み出した。(村瀬信也)
情報源:藤井聡太七段、終盤の妙手順 相手は脱帽「新しい感覚」:朝日新聞デジタル
村)3年前にプロ初黒星を喫した佐々木勇気七段との一戦。今期順位戦の初戦で見せた妙手順には度肝を抜かれました。「いつから読んでいたのか」という質問に対する答えに、さらに驚かされました。
藤井聡太七段、終盤の妙手順 相手は脱帽「新しい感覚」:朝日新聞デジタル https://t.co/fgHJCDAyMw— 朝日新聞将棋取材班 (@asahi_shogi) July 5, 2020
▲佐々木勇気七段 vs △藤井聡太七段(棋譜DB)
110手 3七桂打まで、△藤井聡七段 の勝ち
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- 第77期将棋名人戦七番勝負 ライブ中継:朝日新聞デジタル
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