油断せずにリーグ最終局に挑もう。
2020年4月15日
将棋の木村一基王位(46)への挑戦者を決める第61期王位戦(本紙主催)の挑戦者決定リーグが佳境を迎えている。全5回戦のうち4回戦までの日程がほぼ終了し、白組は藤井聡太七段(17)が、紅組は永瀬拓矢二冠(27)=叡王(えいおう)、王座=が、それぞれ4戦全勝で単独首位を走る。藤井七段には、史上最年少タイトル獲得の記録もかかっている。両者のリーグでの激闘を振り返った。
白組は一回戦から、羽生善治九段(49)-藤井七段戦という注目カードが登場。先手の藤井七段は得意戦法の「角換わり」の最新型に進めた。難解な中盤でじっと銀を引いて手を渡す好手でペースを握ると、終盤は後手の飛車を捕獲し、鮮やかに寄せきった。
藤井七段が大逆転を見せたのは稲葉陽八段(31)との一戦。同じく角換わりの将棋となり、終盤、後手の稲葉八段が先手玉を追い詰めた。しかし藤井七段は圧倒的な劣勢から、相手を惑わせる「勝負手」を連発。稲葉八段の受け間違いを誘い、最後は長手数の詰みに討ち取った(途中図)。
図からは○7四同銀●同成桂○同玉●6六桂以下、手数こそ長いが詰んでいる。ほとんど持ち時間のない中、詰め将棋を得意とする藤井七段がさすがの終盤力を見せ、解説のプロ棋士を「この将棋を逆転するとは」と驚かせていた。
藤井七段は全勝同士の対決となった元王位の菅井竜也八段(27)との天王山の決戦も制し、A級棋士三人を含む四戦して全勝。稲葉八段戦を除けば、着実に優勢を拡大し、危なげなく勝ちきる強さが目立った。
最終戦では阿部健治郎七段(31)と対戦し、勝てば白組優勝で挑戦者決定戦に進出。敗れれば羽生九段-菅井八段戦の勝者とのプレーオフに回る。棋聖戦でも挑戦まであと二勝に迫っており、屋敷伸之九段(48)の持つ最年少タイトル獲得記録(十八歳六カ月)の更新がなるか、注目が集まる。
紅組は、前王位の豊島将之(とよしままさゆき)竜王・名人(29)と永瀬二冠という複数冠の保持者同士が一回戦から激突した。両者とも金銀四枚でがっちり固め、膠着(こうちゃく)状態が続いたが、永瀬二冠は自玉を安全にしながら手厚く指し回して完勝した。
永瀬二冠-佐々木大地五段(24)戦は、両者の玉が相手陣に入り、決着がつかなくなって「持将棋(引き分け)」に。指し直し局と合わせ、三百七十四手という激闘を永瀬二冠が制した。永瀬二冠は盤上を制圧する「負けない将棋」を身上とし、長手数の将棋もいとわない。どちらも持ち味を発揮した将棋だった。
四戦全勝の永瀬二冠は、最終戦で本田奎(けい)五段(22)に勝てば紅組優勝で挑戦者決定戦に進出する。敗れた場合は、豊島竜王・名人と佐々木五段にもプレーオフ進出の可能性がある。
ただ、新型コロナウイルス対策として、日本将棋連盟は十一日以降、長距離移動(百キロ以上)を伴う公式戦を延期する方針を打ち出した。これに伴い、王位戦リーグの最終戦も五月七日以降に行われる見通し。
(樋口薫)
※○は白い将棋の駒のマーク、●は黒い将棋の駒のマーク
情報源:白熱、王位戦挑戦者決定リーグ :囲碁・将棋:中日新聞(CHUNICHI Web)
順調にいけば、永瀬二冠 vs 藤井七段だが・・・