佐藤康光九段(右)と羽生善治九段の対局は最後に決着した

崖っぷちの攻防、最終戦白熱 将棋名人戦・A級順位戦:朝日新聞デジタル

代わりに、竜王戦で勝ったがな。


2020年3月9日 16時30分

佐藤康光九段(右)と羽生善治九段の対局は最後に決着した
佐藤康光九段(右)と羽生善治九段の対局は最後に決着した

手に汗握る残留争い、終盤の逆転劇――。トップ棋士10人が総当たりで戦う第78期将棋名人戦・A級順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)が幕を閉じた。2月27日に静岡市で行われた最終9回戦では、今年も筋書きのないドラマが夜遅くまで繰り広げられた。

■木村、逆襲で勝ったが…

敗れると降級が決まる木村一基王位は広瀬章人八段と対戦。木村の矢倉に広瀬が急戦を仕掛けて、中盤戦に突入した。

図1・△6五歩まで
図1・△6五歩まで

図1は、広瀬が△6五歩と攻めた局面。ここで木村の▲8八角が柔軟な対応だ。広瀬は△4四歩と打ったが、▲5五飛△同飛▲6五歩と進み、数手前まで眠っていた角が働くように。この後、8八の角は4四から6二に成り込み、後手玉を仕留める要の駒となった。うまく逆襲を決めて勝った木村は「苦労する展開だった」と振り返った。

解説の野月浩貴八段は「終始難解な展開だったが、不安定な陣形をうまくまとめる木村王位の指し方が見事だった」とたたえた。木村は感想戦を終えた段階でも降級か残留かが決まっておらず、そのまま自室に引き揚げた。

■糸谷、混戦を制す妙手

木村に続いて佐藤天彦九段も勝利。糸谷哲郎八段は久保利明九段に敗れると降級が決まる状況になった。当初は優勢だったが、徐々に久保が追い上げ、混戦になった。

図2・△6四歩まで
図2・△6四歩まで

久保が△6四歩と打って受けた図2の局面。ここで糸谷は31分の熟慮の末に▲5三銀と打ち、△7三銀打にさらに9分考えて▲6二歩と迫った。これが好手順。糸谷は「▲6二歩では▲6五歩を読んだが、△7四銀▲6四銀成△6二玉▲7四成銀に△7一玉と逃げられてうまくいかない。▲6二歩に対して先手玉に詰めろが続くと負けなので、ヒヤヒヤした」。検討の結果、この手を発見していた検討室の棋士たちは「よく歩を打ったね」と感嘆の声を上げた。

その後、糸谷は久保の追撃をかわして勝利。「勝ちが見えてホッとした」。糸谷の残留決定と同時に、木村の降級が決まった。4勝5敗ながらA級から降級するのは、第65期の深浦康市九段以来となる。(村瀬信也)

■羽生、最終盤勝ち逃す

4勝4敗同士の佐藤康光九段と羽生善治九段の一戦は、互いに残留が決まっている状況ではあったが、来期の順位をかけて熱のこもった戦いが繰り広げられた。

角交換から飛車を振った先手の佐藤康に対し、羽生は居飛車穴熊に構え、じっくりした戦いに。他の対局が決着してから終盤の激闘が始まった。

図3・▲2九玉まで
図3・▲2九玉まで

図3はその最終盤、△4六馬に佐藤康が王手を避けて▲2九玉と引いた局面。ここで羽生は△3七歩成としたが、▲同飛△同馬▲3二香成△同角▲3一銀△同銀▲同金△6七飛▲2八銀△6八飛成▲3七銀△1七香▲7七角△同竜▲3二金で、後手玉は受けなしに。羽生は先手玉を詰ましにいったが際どく詰まず、翌午前1時13分に投了。図3では△3七銀と打ち込んでいけば羽生の勝ちだった。

終局後、「勝ちはたぶんあったと思うが決めきれなかった」と羽生。佐藤康は「最後ははっきり負けだと思った。運がよかった」と話した。(村上耕司)

■最終結果と最終順位

渡辺明三冠  (9) 9勝0敗 1位挑戦

広瀬章人八段 (3) 5勝4敗 2位

佐藤康光九段 (5) 5勝4敗 3位

佐藤天彦九段 (1) 4勝5敗 4位

羽生善治九段 (2) 4勝5敗 5位

糸谷哲郎八段 (4) 4勝5敗 6位

三浦弘行九段 (7) 4勝5敗 7位

稲葉陽八段  (8) 4勝5敗 8位

木村一基王位(10) 4勝5敗 9位降級

久保利明九段 (6) 2勝7敗 10位降級

(かっこ内数字はリーグ開幕時の順位)

■最終9回戦ドキュメント

9:00 対局開始

12:00 13時まで昼食休憩

14:00 豊島将之名人・竜王、深浦康市九段らが出演する大盤解説会が始まる

18:00 19時まで夕食休憩

19:41 既に名人挑戦を決めている渡辺明三冠が三浦弘行九段に勝ち、9戦全勝で優勝

22:31 木村一基王位が広瀬章人八段に勝利

22:45 佐藤天彦九段が稲葉陽八段に勝ち、残留を決める

23:51 糸谷哲郎八段が久保利明九段に勝ち、残留を決める。木村が「順位」の差で降級に

1:13 佐藤康光九段が羽生善治九段に勝利

2:52 佐藤―羽生戦の感想戦が終了

情報源:崖っぷちの攻防、最終戦白熱 将棋名人戦・A級順位戦:朝日新聞デジタル




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