ふむ・・・
2020年2月20日 17時00分
杉本昌隆八段の「棋道愛楽」
藤井聡太七段が快勝した1月の朝日杯将棋オープン戦の名古屋対局。対局後の控室では、公開対局とは違った棋士の顔が見られます。
対局後の感想戦も控室で行われますが、1日2対局あるため、午前中の1回戦の勝者は午後の対局に向けて手短になりがち。なので、別の棋士相手に感想戦をすることもあります。
今年は1回戦で敗れた豊島将之名人・竜王が記録係の奨励会員相手に自身の将棋を検討していました。一昨年は解説者だった木村一基王位が私の弟子の奨励会員と盤を挟む場面もありましたが、控室ならではの光景です。
午前中に負けてしまった棋士が午後の解説場にゲスト出演するのも恒例です。ちょっと複雑な心境ですが、ファンにとってはうれしいもの。対局中は無言でいる反動でしょうか、冗舌になる棋士が多いのも特徴です。
対局者に思わぬプレゼントがあることも。対局当日が誕生日だった屋敷伸之九段。関係者の粋な計らいで、昼食にケーキが用意されました。
しかし、ろうそくやバースデーカードはなく、他の対局者に不公平にならないように?と、同室の棋士全員にも同じケーキが出されました。事情を知らない屋敷九段を含めた4人は「今回はケーキが付くのか、珍しい」。せっかくのサプライズも、ちょっともったいなかった結果のようです。
対局が長引くと、食事をゆっくり取る時間もありません。菅井竜也八段との激戦を制した藤井七段ですが、感想戦が終わって約30分後には、もう次の対局が始まっていました。これも勝者の宿命です。
1回戦で敗れてしまった三浦弘行九段は解説者の兄弟子、藤井猛九段や私がいる部屋に移動して皆で食事をしました。藤井七段にこの話をしたところ、ちょっとうらやましそうな様子。やはり対局者だけでの食事より、解説者や聞き手、同世代の奨励会員ら関係者がいたほうがリラックスできるようです。
控室全体がリラックスムードの午後のひと時。仕事を終えた記録係が座っていた将棋盤の前から離れ、部屋の隅にあるお菓子を取りに行きました。しかし突然、その盤に棋士たちが集まりだし、現在行われている対局を検討し始めます。
豊島名人・竜王や屋敷九段、私も含めて棋士が3人。休憩ムードは一変し、戻ってきた記録係もビックリでした。が、棋士たちに囲まれながらも予定通り、お菓子のせんべいを頰張っていた記録係の青年。「初志貫徹」でなかなかの大物ぶりでした。
控室には私の弟子3人も勉強に来ていました。対局に勝利した後の藤井七段の感想戦を私と一緒に見ていましたが、強い兄弟子の存在を誇りに感じたことでしょう。検討しているときの棋士は皆楽しそう。改めて、棋士は将棋が好きだなぁと実感します。
連勝した藤井七段は、スポンサーが用意した大きなエビせんべいの「レプリカ」と一緒に記念撮影。昨年も全く同じ光景でしたが、ちょっと照れくさそうな藤井七段が新鮮でした。
〈すぎもと・まさたか〉 1968年、名古屋市生まれ。90年に四段に昇段し、2019年2月に八段。第20回朝日オープン将棋選手権準優勝。藤井聡太七段の師匠でもある。
情報源:対局とは別の顔見せる「控室」の棋士 藤井七段は?:朝日新聞デジタル
ほぉ・・・