A級順位戦8回戦で勝ち、リーグ開幕から8連勝とした渡辺明三冠

A級残留争い、白熱 将棋名人戦・順位戦、最終戦へ:朝日新聞デジタル

最終9回戦全5局は27日、静岡市の浮月楼で行われる


2020年2月10日 16時30分

第78期将棋名人戦・A級順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)は8回戦が1月29日に一斉に行われた。7回戦終了時点で渡辺明三冠が名人挑戦を決める一方、10人中8人に降級の可能性があるという状況で、残留に向けての激しい戦いが繰り広げられた。

A級順位戦8回戦で勝ち、リーグ開幕から8連勝とした渡辺明三冠
A級順位戦8回戦で勝ち、リーグ開幕から8連勝とした渡辺明三冠

■渡辺、全勝優勝なるか

7連勝の渡辺は残り2戦を連敗しても首位が確定し、名人挑戦を決めている。続く4勝3敗の3人のうち、順位上位の広瀬章人八段だけが残留を決め、同星の佐藤康光九段、三浦弘行九段、3勝4敗の5人と1勝6敗の久保利明九段に降級の可能性があるという状況だった。

注目の8回戦は、東京・千駄ケ谷の将棋会館で、渡辺と3勝4敗の糸谷哲郎八段、ともに3勝4敗の羽生善治九段と木村一基王位、広瀬と3勝4敗の佐藤天彦九段の計3局が行われた。

図1・△3八馬まで
図1・△3八馬まで

最も進行が速かったのが渡辺―糸谷戦だ。後手番の糸谷が阪田流向かい飛車戦法を採用し、夕食休憩後に大決戦となった。図1は互いに飛車を取り合った局面で、後手の銀得となっている。ところがここから▲3四歩△4五桂▲3三歩成△5七桂成▲4二とと進んでみると、案外後手が大変。玉形の差が大きく、先手が優勢を築いていた。

残留がかかっている糸谷は必死に攻め、最終盤で詰めろ逃れの詰めろをかけるなど頑張ったが、わずかに及ばず、午後9時44分、渡辺の勝ちで終わった。終局後、渡辺は「終盤、切り合いになったところで勝ちになっていたのが意外だった」。糸谷は「駒得なので、これで悪ければ仕方ないだろうと思ってやったが、だんだん下方修正された」と嘆いた。

これで渡辺は無傷の8連勝。次の最終戦で勝てば第70期の羽生九段以来8年ぶりの全勝優勝となる。A級でのこれまでの最高成績は第70期の7勝2敗で、挑戦にからんだこともなかった。「8勝は初めてで、過去よりもいい成績が取れた。A級での全勝はめったにできることではないので、ここまで来たからにはめざしたい」と話した。

広瀬―佐藤天戦は午後10時31分に広瀬が勝ち。羽生―木村戦は午後11時56分、羽生の勝ちで終了。4勝4敗の羽生は残留を決め、3勝5敗となった佐藤天、糸谷、木村は残留をかけて最終戦を戦うことになった。(村上耕司)

■激闘制した久保に降級の知らせ

A級順位戦8回戦の久保利明九段(手前左)―三浦弘行九段戦の感想戦
A級順位戦8回戦の久保利明九段(手前左)―三浦弘行九段戦の感想戦

大阪・福島の関西将棋会館では2局が指され、三浦が久保と、佐藤康が3勝4敗の稲葉陽八段と対局した。

久保は自分が勝った上で、稲葉と木村が負けないと降級が決まるという厳しい状況。

久保―三浦戦は、先手・久保のゴキゲン中飛車で持久戦調に。夕食休憩後、三浦が飛車を切り、入手した銀を久保陣に打ち込んで強攻するが、検討陣の評は「久保持ち」。しかし、三浦が角も切って久保陣に肉薄すると、検討陣は「事件です」。だがピンチになった久保も敵玉に嫌みをつけ、粘る。

もう一局の稲葉―佐藤康戦は相居飛車の力戦から、途中で佐藤康にミスが出て、午後11時37分に稲葉勝ち。久保降級が決まった。

図2・△2五桂まで
図2・△2五桂まで

だが、隣室で対局中の久保は、自分の降級決定を知らないまま、指し続ける。図2は最終盤で三浦が3三にいた桂馬を2五に跳ねた局面。この瞬間、検討陣は驚きの声をあげた。三浦玉に詰みが生じているからだ。実戦は▲1三桂△1二玉▲4二竜までで三浦が投了。以下、どう応じても三浦玉は詰んでしまう。終局は翌30日午前0時42分。全5局で最も遅かった。

感想戦終了後、記者から降級決定を告げられた久保は「今期A級では、模様が良い将棋を勝ちきれないことも多かった。(降級も)しょうがない結果かな」と振り返り、「来期の順位戦に向け、今期最終戦も全力で行きたい」と話した。(佐藤圭司)

最終9回戦全5局は27日、静岡市の浮月楼で行われる。棋譜は朝日新聞デジタル(https://www.asahi.com/shougi/)や名人戦棋譜速報(http://www.meijinsen.jp/別ウインドウで開きます)でライブ中継される。

情報源:A級残留争い、白熱 将棋名人戦・順位戦、最終戦へ:朝日新聞デジタル




残留者と降級者は誰になるか・・・