挑決後の共同インタビュー

本田奎五段のタイトル初挑戦 師匠は「コツコツというよりは一気に飛躍するタイプ」 | 文春オンライン

これなぁ・・・


2019/12/29

棋戦初参加での挑戦権獲得は史上初の快挙

2019年の最後に、また将棋界で新たな記録が達成された。

12月27日に行われた第45期棋王戦挑戦者決定戦第2局、渡辺明棋王への挑戦権を争ったのは佐々木大地五段と本田奎四段。第1局で敗れていた本田が勝利して、見事挑戦権を獲得した。五段対四段の挑戦者決定戦は1992年5月の第60期棋聖戦、阿部隆五段対郷田真隆四段(段位は当時、郷田が勝って挑戦権獲得)以来、史上2例目となるが、特筆すべきは本田が棋王戦に参加したのはこの第45期が初めてだった点である。

快挙を達成した本田奎五段
快挙を達成した本田奎五段

「そろそろ名前を憶えてもらえたと思うので」

自身初参加の棋戦で挑戦者決定戦まで進んだ棋士は、1977年の第18期王位戦における小林健二、1990年の第57期棋聖戦における郷田、1994年の第7期竜王戦における行方尚史、2009年の第80期棋聖戦における稲葉陽、2014年の第55期王位戦における千田翔太の5名がいるが、いずれも挑戦権獲得には至らなかった。本田の快挙は史上初の例となる。タイトル挑戦権を獲得したことで、本田は12月27日付で五段昇段となった。

本田は挑戦権獲得後のインタビューで次のように語った。

「実感はまだありませんが、初参加で挑戦権を得られたのは運がよかったという気がします。実力はまだまだです」

挑決後の共同インタビュー
挑決後の共同インタビュー

渡辺棋王との対戦について聞かれると、こう答えた。

「渡辺棋王が強いのは当たり前ですが、序盤から引き離して勝っているという印象です。自分も序盤型なので、そこで離されたら厳しいですね。こちらのペースに持ち込めればと思います。そろそろ(自分の)名前を憶えてもらえたと思うので、番勝負でも注目いただけたら」

三段リーグでは弟弟子である斎藤明日斗に抜かれる

本田が宮田利男八段門下で奨励会入りしたのは2009年、小学6年の時だ。入会後はとんとん拍子に昇級、昇段を果たし、2015年4月の第57回三段リーグに初参加。リーグ入り当時は17歳で、これはまずまず速い出世といえるであろう。

だが、そこから四段昇段までは3年半を要した。その途中では史上最年少棋士の藤井聡太や、同門の弟弟子である斎藤明日斗に抜かれる屈辱も味わった。四段昇段時に行われたインタビューでは、斎藤に抜かれたことに関して「それまで王を持っていた相手に、研究会で玉を持つのがつらかった」と明かしている(※将棋には「玉将」と「王将」の駒があり、目上が「王将」を持つのが礼儀とされている)。

2016年5月2日の日の出山、中川登山研より。左から本田、佐々木、元奨励会三段で現在はアマ強豪の山岸亮平さん
2016年5月2日の日の出山、中川登山研より。左から本田、佐々木、元奨励会三段で現在はアマ強豪の山岸亮平さん

羽生善治ですら初挑戦までは4年近くかかった

本田が四段昇段を果たしたのは2018年10月。同年12月の対勝又清和六段戦が棋王戦における初戦となる。本田の棋王戦ドリームの始まりで、以降は挑戦者決定戦まで10連勝。その途上ではのちに二冠を獲得する永瀬拓矢、当時竜王だった広瀬章人などの強豪を打ち破っている。

昨年度は将棋大賞の最多勝利賞を受賞。今期も各棋戦で勝ち進んでいる佐々木大地五段
昨年度は将棋大賞の最多勝利賞を受賞。今期も各棋戦で勝ち進んでいる佐々木大地五段

挑戦者決定戦の第1局では佐々木に敗れたが、ここまで無敗で勝ち進んでいた本田は、挑戦者決定戦で1敗する余裕があった。対して敗者復活戦を勝ち上がった佐々木が挑戦権を獲得するには、挑決で2連勝が必要だった。棋王戦独自のシステムが明暗を分けた挑戦者決定戦だったと言えるかもしれない。

四段昇段から1年4ヵ月での挑戦権獲得(2020年2月1日の五番勝負第1局日時の時点で数える)は史上第2位の速さ。歴代1位は最年少挑戦記録を持つ屋敷伸之の1年2ヵ月である。羽生善治九段ですら初挑戦までは4年近くかかり、ここ10年程の記録でみても豊島将之竜王・名人の3年9ヵ月が最速である(2011年1月の第60期王将戦)ことを考えると、本田の驚異的な速さがわかる。

「今まで見てきた人間の中で五本の指に入ると思った」

本田の師匠である宮田利男は現在、三軒茶屋で将棋道場を開き、普及に当たっている。本田と斎藤の兄弟弟子も三軒茶屋将棋倶楽部で腕を磨いた。宮田は愛弟子について以下のように語る。

「キャラクター的には斎藤のほうに軽さがあるが、将棋は斎藤の方がしっかりしている。ただ本田にはその軽業師的な指し方に才能を感じた。将棋に子供っぽさがなかった」

三軒茶屋将棋倶楽部で指導に当たる宮田八段
三軒茶屋将棋倶楽部で指導に当たる宮田八段

本田が三軒茶屋将棋倶楽部の門をたたいたのは小学1年生の時だが、「その時点で、今まで見てきた人間の中で五本の指に入ると思った」という。

本田が挑戦者決定戦進出を果たした時点で、その相手は佐々木と広瀬の2人に絞られていた。本田の関係者は、実績を重視してか、広瀬が出てくることを恐れていたそうだが、宮田は「佐々木君のほうが気になっていた。本田とタイプが似ていて、それで格上だから」という。

本田と斎藤に加えて、佐々木も三軒茶屋で研究会を行っていた。「そこでの佐々木―本田戦は、佐々木君の6勝3敗という記録が出てきたんだ」と宮田は振り返る。

打ち上げの場で五段昇段を祝しての差し入れられたケーキ
打ち上げの場で五段昇段を祝しての差し入れられたケーキ

今回の挑戦について「もう少し地力をつけてからとも思ったが、コツコツというよりは一気に飛躍するタイプなので、そういう意味ではよかったのかもしれない」と語った。

挑戦権獲得が決まった直後に師匠にコメントを求めると、一言「思いっきり飲むぞ」と。翌日には三軒茶屋将棋倶楽部関係者の忘年会が予定されていた。師弟にとって、さぞかし嬉しい会だったに違いない。

写真=相崎修司

情報源:本田奎五段のタイトル初挑戦 師匠は「コツコツというよりは一気に飛躍するタイプ」(文春オンライン) – Yahoo!ニュースコメント

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第1局は2020年2月1日