【インタビュー】【藤井聡太七段】将棋の上達を左右する要因は、才能と努力…そして環境

【インタビュー】【藤井聡太七段】将棋の上達を左右する要因は、才能と努力…そして環境 – ライブドアニュース

ふむ・・・


2019年9月29日 20時0分

休日の新宿駅。
雑踏の中からスニーカー、リュックサック姿の青年が現れる。史上5人目の中学生棋士、破竹の勢いの29連勝で世間を驚かせた”テレビの中の人”だ。
しかし意外なことに誰もその存在に気付くことはない。スマホに視線を落とし、それぞれの目的地に急ぎ足で歩みを進めていく。世間とのギャップに、思わず吹き出しそうになる。

「天才」「神の子」―。藤井の名前は、常に華々しい形容詞で飾られる。
目の前に座る青年は、自らをどう客観視しているのだろう。
自分より年上の棋士たちを才能型、努力型、どのように分けるのだろう。
少々意地悪な問いだったかもしれない。”質問”という細い綱を決して踏み外すことのないよう、伏し目がちに考慮する。手元の紙おしぼりを所在なさげに弄ぶ。画面越しに何度も見てきた対局中の姿に重なる。
しかし、丁寧に導き出したその回答の言葉選びから、深い将棋への愛と、同じ道を歩む棋士への尊敬の気持ちが手に取るように伝わってくる。

棋士・藤井聡太。
次に挑むは、全員A級、全員タイトル経験者という目もくらむような王将リーグ。
どんな戦いを見せてくれるのだろう。この場で語るのはあまりに野暮だ。
シリーズ最終回では、17歳が手にする壮大な”冒険地図”の一路をのぞいてみたい。

撮影/吉松伸太郎 取材・文/伊藤靖子(スポニチ)

今期も約半分が終わりました。前半戦を振り返って、100点満点中何点ぐらいをつけられる出来だったんでしょうか?

点数ですか? うーん。難しいですね。4月から振り返ると、パフォーマンスとしては、そこまで良い内容は出せなかったなという感じです。

いちばん、良いところまでいった竜王戦も豊島(将之)名人との将棋は、総合的に見て力の差があるなと感じました。それでも今回、王将リーグに入れたことは大きな収穫だと思っていまして、トップ棋士の方と6局も指すことができるので、その中で自分を高めていければいいなと思っています。

点数というのは…(笑)。うーん。皆さんはどのくらいなんですかね(笑)。

豊島先生との対局で「差を感じた」とのことですが、具体的にどのあたりに差を感じましたか?

中盤から終盤の入り口のあたりにかけて、豊島名人のほうが比較的、短い考慮時間の中で指されていたところがありました。その中で最善を指されて、それに対して自分が時間を使ったうえに、間違えてしまったというのがあったので、まだまだ足りないところかなと思いました。

21勝8敗と好成績を維持されているものの、過去2年と比べて、負けが増えてきました。対局相手も上位の棋士が増えてきましたし、そういう意味では仕方のないことだと思われていますか?

今年は早指しでの負けが多かったですね。竜王戦以外で最近、負けてしまった4局は早指し棋戦ですが、早指しというのは長い持ち時間よりもパフォーマンスの波が出やすいという面があるので、自分の中でそこまで気にしていません。

いまお話を聞いて、藤井先生は早指しが得意なのか苦手と思われているのか、わからなくなりました(笑)。朝日杯2連覇、AbemaTVトーナメント2連覇で「得意」なほうだと思いこんでいました。

うーん、そうですね。なんとも言えないです…(笑)。

ただここまでを見ると、秒読み30秒の将棋で、どうも勝率が良くないような気がしているので、そこが課題なのかなと思います。

秒読みで30秒と1分でそんなに違うものなのですか?

30秒というのは、指していてもかなり短いです。30秒の考慮の中で読み筋をまとめて正確な判断を下すというのは、なかなか難しいのかなと感じます。

先ほど豊島名人との対局のお話もありましたが、今年は他のA級棋士とも数多く対戦されています。トップ棋士の強さはどのあたりに感じますか?

トップ棋士の方は、人によってかなり特徴が違うと思うんですけど、久保(利明)九段との対局では、自分が気づかない手を指されることが多くて、そういった感覚も学ばなくてはいけないなと思いました。

今回、羽生(善治九段)先生にお話を聞いた際、「トッププロは中終盤で局面を複雑にするのが上手いんですよ」と話していましたが、やはりそうお感じになりますか?

たしかに自分の感覚とは違う手を指されるなと感じました。

予想と違う手を指されることで、そこまでの読み筋をすべて組み立て直さなくてはいけなくなります。そのときにどうしても、こちらの指し手の精度が落ちてしまうということがあって、予想していない手でも、正確に対応する力というのが非常に大事だなと思います。

竜王戦が顕著でしたが、「序盤からリードを広げて、そのまま押し切る」という昨年までの藤井先生の勝ちパターンが減っていて、序盤でリードを奪われるケースも少し増えたのかなと感じたのですが、いかがでしょうか?

自分の中ではそういうイメージはないです(笑)。どちらかというと、中盤から終盤のあいだのあたりが、自分にとっていちばんの課題かな、というふうに思っています。

去年の終わりごろ、今年の目標として「形勢判断、大局観を身につけることをしっかりできるようにする」ということを話していたと思います。序盤を戦ってみて、その部分で成長しているという実感はありますか?

形勢判断はやはりすごく難しいので、振り返ってみても正しい判断というのができていなかった局面も多かったなというふうに思います。

どのようにすれば形勢判断力が上がると思いますか?それがわかるならすでにやってるよ!というところかとも思いますが…(笑)。

常にハッキリわかればいいですね(笑)。いままでは自分の感覚で「なんとなく」で済ませてきてしまっていたところがあるので、そこはしっかり言語化だったり、チェックしていくことが大事かなと思います。

プロ棋士の形勢判断力というのは、将棋ソフト(以下、ソフト)での評価値とは別の価値観になるのでしょうか?

ソフトの評価値と人間の価値判断というのは、当然異なる局面もあります。それはソフトが強いという要因もあるんですけど、ソフトの評価値が良い局面であっても、そこからの指し手の難易度がすごく高かったりすることも多いです。ソフトの評価値は、すごく便利なものですけど、それだけではなくて、自分で判断してくことも必要かなと思います。

糸谷(哲郎八段)先生のお話の中で「多少は言語化できたとしても、それがすべてではない。その部分はブラックボックスだ」という発言がありました。

その中でも普遍的な法則性を見出すことは、不可能ではないかなと思っているので、難しいですけど、そういうところを目指したいかなと思います。

藤井先生といえば伝家の宝刀“角換わり”がありますが、ここ最近の将棋界を振り返ってみると、確実に減ってきて、いまは「相掛かり」が増えています。角換わり減少の裏に何が起きているのでしょう?

プロの世界だと、流行の戦型というのは周期的に変化してきているというか、ひとつの戦法が流行する中で、工夫とか新しい指し方が編み出されて、だんだん体系化されてくると思うんです。体系化されすぎてしまうと息詰まるというか、そういう印象が生まれてきて、それで新しい戦法に流行が移っていくのかなというふうには何となく思っています。

相居飛車だと基本的には角換わり、相掛かり、矢倉の三択から細かい変化をしていくかと思います。戦型を増やしていきたいという気持ちはありますか?

指せる戦法の幅は広がったほうがいいと思いますけど、本質的には戦型選択が重要ではなくて、その先の指し方のほうが大事だと思っています。

藤井先生は先手相掛かりを採用されませんね。何か理由があるのでしょうか?

そろそろ指しても良いかなと思っているんですけど…(笑)。

戦型が少ないと対策を打たれやすくなりますよね? この前の叡王戦では、村山(慈明七段)先生も藤井先生が角換わりで来るだろうと、事前に予測されていたとのことですが。

研究されていても、形勢が互角であれば問題ないと思っているので、そこはあまり気にしてはいないんです。あの将棋に関しては、早い段階から崩してしまったのが残念だったなと思います。

昨期は本当に後手番が続きましたね。振り駒のとき、棋士の先生によっては「駒をしっかり振らずに撒かれるとイラっとする」というお話を聞いたことがあります。藤井先生はいかがですか。

たしかに「よく振ってほしい」とは思います(笑)。でもそれで確率が変わるかどうかは(笑)。今年は去年よりは、先手番が多いと思います。昨年はむしろ確率的にはレアなので、そのうち先手が増える時期が来るかと思っていました。

9月上旬にあった対局日からかなり空きましたね。プロ棋士になってから初めてくらいの間隔ではないでしょうか? 対局日の間隔が空くと、普段とは異なる勉強法になるのでしょうか。

普段から公式戦に合わせてトレーニングをしているわけではないので、そこまで対局のペースというのは影響がないかなと思っています。

もうひとつ気になるところで言うと、時間の使い方でしょうか。いまのトップにいる渡辺(明王将)先生、豊島先生、広瀬(章人竜王)先生など、相手より持ち時間が少なくなる展開はほとんどありません。一方で藤井先生は、上位の棋士との対局だと、1分将棋に入るタイミングが早くなることが、多いような気もしています。

時間の使い方には改善の余地はあるかなと思っています。ただ、豊島名人は序盤が早いですけど、中盤以降に関しては、とくに早指しという印象はないですし、人によって持ち時間の使い方というのは個性が出るところだと思います。竜王戦の対豊島先生戦のときもそうでしたけど、時間がなくなって終盤でミスをしてしまう、というのはなるべく減らしたいなと思っています。

なるべくどの局面でもしっかり考えるというのが、藤井将棋の真髄だと思っています。一方で時間を残したほうが勝率が高くなる傾向も出てきています。藤井先生は、時間の使い方について、いまは改善していく段階にないということなのでしょうか。

いまの段階ではとくに改善していこうに思っていないですけど、いつかはそのあたりを意識的に取り組まなくてはいけないとは思います。

王将リーグについてのお話も伺っていきたいと思います。改めて王将リーグの印象について教えてください。

今回のメンバーを見ても、自分以外はA級棋士ばかりですし、本当にトップ棋士ばかりでハイレベルなリーグという印象は、以前から変わらずに持っています。自分はリーグ入りしたのが初めてですが、これだけトップ棋士との対戦の機会が得られるというのはなかなかないことなので、非常に楽しみにしています。

王将リーグの持ち時間はそれぞれ4時間となります。今回、初対戦の棋士はいませんが、羽生先生、広瀬先生、三浦(弘行九段)先生とは持ち時間の短い対局しかありません。時間の違いという点での印象はいかがでしょうか?

持ち時間が違うと戦い方というのも全然違ってくるので、ぶつかっていく気持ちで臨みたいなと思います。

自分は持ち時間によって時間の配分を、そこまで意識して変えているわけではないんですけど、4時間あれば重要な局面では、しっかり考えることができるのかなと思っています。

王将戦といえば「勝者の罰ゲーム」とも言われる「記念写真」が名物として、ファンの皆さんも楽しみにしています。藤井先生の中で印象に残っている1枚があったら教えてください。

渡辺先生が楽しそうに撮影されている写真が多いですよね(笑)。

ちなみに藤井先生はどこまでOKでしょうか(笑)。

お手柔らかにお願いできれば…(笑)。

大阪王将のランチにも注目が集まっています。ボリューム満点で、盤外の「フードファイト」も楽しみにしています。

かなりボリュームありますよね(笑)。二次予選の初戦で、佐藤康光会長との対局時に提供いただいたんですけど、自分が食べ終わって横を見たら、佐藤会長も餃子含めて完食されていました(笑)。

対局中のお話もさせてください。「初手・お茶」というのは、ご本人の中のルーティンとしてあるのでしょうか?

棋士になった当初は、ルーティンという感じではなかったのですが、何回か続いてからは何となく流れで。とくに深い意味はありませんが(笑)。

敗勢になった際、よく首がガクッとなることがありますよね。藤井先生の正確な形勢判断が相手に伝わってしまうのはデメリットではありませんか? 渡辺先生も心理的な駆け引きで、「取られたら負け、逃げてくれれば逆転模様」と状況で、自信満々な態度を持って指したら、相手が間違えることもあったと。藤井先生は棋士からの信用度も当然高いですし、同じようなこともありえそうな気もします。

たしかに自分はけっこう姿勢に出てしまうほうなので、できればそれは出ないほうがいいですよね。あとはそれ以前に形勢によって感情が動いてしまうというのは、なるべく減らせたらいいとは思っていますが、けっこう心の整理がつかず。なかなか難しいところではあります。

竜王戦の久保先生との対局では、藤井先生の玉に詰みがあったとソフトでは示されていました。あのときはピシッと指していらして、表情にも出ていないように感じました。ご自身でも自玉の詰みに気づいていたからでしょうか?

いえ、あのときは詰みには気づいていなくて、負けたらしょうがないなと思ってやっていました。本当はその「渡辺流」で指せればいちばんよかったですね(笑)。難しい局面でしたし、久保先生も1分将棋でしたので、詰みが読み切れているという状況ではないなと思っていました。

最近、「ひふみんアイ」を採用されている姿が見られなくて、残念に思うファンの方もいらっしゃると思います。師匠の杉本(昌隆八段)先生から指摘されたこともあり、いまは脳内でされていると伺いました。

脳内でやるとけっこう大変なんです(笑)。頭の中で時間を取られてしまうことは避けたいので、トイレなどで離席して帰ってくるときに、チラっと見ています(笑)。

それほど「ひふみんアイ」というのは有効なのでしょうか?

やられている方が少ないので、本当に効果があるのかはどうなんだろう、という気もするんですけど(笑)。

ただ対局中に自分の側だけで見ていると、局面を客観視できない場合があります。そういうときに反対側から見てみると、気づかなかったことに気づくこともあるのかなという感じです。

反対から見て具体的になにか手が見えるかというわけではないですが、自分から見てあまり自信がないという局面が、反対から見てもけっこう大変なのかなと思うことはありますね。自分の側からだけ見ていると、その辺の形勢判断が弱くなってしまうことがあるので。

今回のテーマである「才能」の定義を教えてください。皆さんの回答がそれぞれバラバラで非常に面白かったです。まずは藤井先生からみて才能がスゴいなって思う人の共通点はどんなところがありますか?

アンケートをいただいたときに、「才能って何なのかな」と思いました。難しいところだなと思ったんですけど、自分はあまり人の才能がどうとか、そういうところはわからないのですが…。

基本的に、才能とはポテンシャルというか、努力することによって磨かれてくるものなのかなと思っています。今回アンケートには「羽生先生」と回答したのですが、将棋を並べていると、他の人には気がつかない発想の手が多いです。才能という言葉だけで表して良いのかわからないんですけど…。

「他の人には気がつかない発想」というのは、糸谷先生も同じように定義付けされていらっしゃいました。ちなみに糸谷先生は、才能型の棋士に山崎(隆之八段)先生を挙げられました。

山崎先生ですか。なるほど(笑)。

同じ「他の人には気がつかない発想」でも、山崎先生は「独創」という印象がありますが、羽生先生にはそういった印象はありません。むしろ「王道」とさえ感じられます。ここにはどんな違いがあるのでしょうか?

(このインタビューで最大の長考の後)羽生先生の将棋は、「理論」と「感覚」というのが、うまく融合しているというか…。もともと羽生先生にしかできない発想があると思うんですけど、それは羽生先生がこれまで培ってきた「理論」や「技術」というのを、上手く組み合わせて指されているからだと思います。

将棋に関連して、羽生先生にあって、いまの藤井先生にないものは、どのあたりになりますか?

中盤の差がいちばん大きいです。羽生先生の中盤というのは、すぐには手が見えないというか「茫洋(ぼうよう)」とした手を指されることもあるんですけど、そういうところが他の棋士にはない感覚が表れているかなと思います。

一方で努力型はやはり永瀬(拓矢叡王)先生のお名前が挙がりました。

永瀬先生という回答は、今回のアンケートでは最多ですか(笑)。永瀬先生にはVSで教えていただいているんですけど、将棋に対する真摯な姿勢というのが本当に素晴らしいなと思っています。

以前から永瀬先生とは定期的にVSをやられていると話されています。永瀬先生が愛知に来たり、藤井さんが東京のほうに行ったりという感じですか?

はい。両方あります。

永瀬先生というのは、「何時間でも無限に将棋を指すことができる方」だとは思うんですが、無事に帰らせてもらっていますか(笑)?

一応、帰してもらえます(笑)。VSは、だいたい10時に始まって、夜の7時くらいまでやっています。

けっこう長めですが、無事に帰らせていただいてるんですね(笑)。他の先生方とも定期的にVSなどはされていますか?

定期的にVSをしていただいているのは、永瀬先生だけです。

東京や大阪ではVSや研究会が盛んです。強い方と指したり、先輩の考え方などを吸収する面でプラスになるというのは想像できます。藤井先生もいずれは東京や大阪に出たいという気持ちはありますか? 師匠の杉本先生も20歳ごろ大阪に出られました。

うーん。いまは愛知県に住んでいますけど、地理的にデメリットがあるかというと、あまりそこは感じていなくて。昔はそういう面もあったのかなと思いますけど、情報という面ではまったく差がないですし、とくに不便に思うことはありません。

ちなみに以前のインタビューで「東京か大阪にどちらに出るかといえば東京」だと答えていました。関西に所属する藤井先生ならてっきり大阪かと思っていました。

とくに深い理由はないですね。永瀬叡王とVSをやらせていただいているので、東京だと答えました(笑)。

一方で豊島名人のようにVSや研究会はせず、ひとりでソフトを使って勉強されている棋士もいらっしゃいます。いまの藤井先生もそれに近いと思いますが、藤井先生はソフトだけでも勉強にはなる思いますか? それとも定期的に人とも練習将棋を指したほうがいいと思いますか?

ソフトが強くなったというのはまだ最近のことなので、まだそれをどのように使って強くなっていくかというのが、確立しきれていないというふうに思っています。普段はソフトを使って取り組んでいるんですけど、やはりうまく使いこなせるようになるのは、もう少し先かなと思っています。

公式戦では人と指すわけですし、普段から定期的に人と対局する機会を持っておくというのは大事なことかなと思います。ソフトの形勢判断というのを、そのまま取り入れるというのは難しいので、強い人間のプレイヤーと指すというのは、ソフトと指したり検討したりするのと異なって、得るものがあるのかなと思っています。

ソフトに加えて、強い人間ということで、トップ棋士である永瀬先生と指されている藤井先生は良い環境で勉強ができていますね。ご自身は才能型、努力型どちらですかというアンケートでは「環境を与えてもらえた」とのご回答でした。「環境」という部分をもう少し教えていただけますか?

自分は将棋の上達を左右する要因というのは「才能」「努力」に加えて「環境」の3つかなと思っています。その中でもとくに自分は将棋を始めたころから、周りの方に応援していただいたりして、その部分が非常に恵まれていたのが大きかったのかなと思っています。周りのサポートがまったくない状況だったら、努力することも難しいと思います。

先日発売された『将棋世界Special 将棋戦法事典100+』のインタビューの中で「研究時間は休日が6時間、平日が3時間くらい」と語られているのを拝読しました。比較すると意外と平日のほうが長いと感じたのですが、毎日の積み重ねが大事ということなのでしょうか?

勉強時間を記録していないのでざっくりなんですけど、だいたいそれくらいかなという感じです(笑)。

習慣というのは大事かなと思っていて、平日学校から帰ってきて少し休憩してから、その後将棋の勉強というリズムを作ってやっています。

藤井先生といえばコンピュータにくわしいことでも有名です。CPUはIntelではなくAMD派だと。ソフトを導入する段階で調べたのでしょうか?

コンピュータの話をしたのは1回だけですよね(笑)。2年ほど前にパソコンを新しく買ったんですけど、その際にどれがいいのかなと調べました。ちょうど2年前なので、初代のRyzen(ライゼン)が発売されたころで、性能に惹かれてそちらにしました。

CPUによってソフトの性能は変わるとは思うのですが、そこまで意識されているのでしょうか?

そうですね。当時Intelのメインストリーム向けのCPUが、最大で4コア8スレッドまでだったんですけど、Ryzenは最大8コアまであったんですよね。将棋ソフトは並列処理を行っているので、コア数が多いほうがいいかなと思って、Ryzenを選びました(笑)。

そこまでソフトについて勉強されているとは驚きです(笑)。

やはりNPS(一秒あたりに読む局面数)に差が出ると思うので。いまの時代だと8コアでも、むしろ周りの棋士に比べても少ないほうかなと思っています。

ということは、新しいパソコンの購入も検討されていらっしゃるのでしょうか?

買おうと思っています。

ご自身は勉強をしている際、集中力が続くタイプでしょうか? 渡辺王将は多趣味でサッカーや野球の結果が気になってしまうそうです(笑)。

自分もそんなに続かないほうです(笑)。何時間も集中力が続くという方もいらっしゃるのでしょうが、自分はそういうタイプではないので、けっこうよく途中でソファに横になったりしています。詰将棋を解くのと、携帯中継を観るのはソファで寝ころがったままできるので、気が向いたらまたパソコンがある机に戻ってという感じです。

学校で授業を受けているときもやはり集中は…?

なるべく集中しようと思っているんですが、50分は続かないですね(笑)。

平日にタイトル戦があると気になって、授業中に局面を思い浮かべたりしてしまいそうだなと思ってしまいます。

そういうふうに(こまめに)観ていると、授業が終わって休み時間に入って、1手も進んでいないんですよね、だいたい(笑)。携帯中継はけっこう観ているほうかなと思います。携帯中継を観ることは趣味の領域で、中継がある対局はすべて目を通しています。

学校でしか、学校の勉強をしていないというのも拝読しました。そう考えると、大学への進学は考えていないのでしょうか?

基本的にいまの段階では「想定していない」とは言えるかなと思います。

高校生活は楽しいですか?

うーん(笑)。学校に行かないと、あまり外出する機会がなくなってしまうので、外に出るということが大事だと思っています(笑)。

将棋以外で何か夢中になっていることはありますか? 藤井さんと言うと読書、天気予報、鉄道、そして先ほど話していたパソコンの自作が趣味として挙げられるかと思います。

何かひとつに夢中になっているということはないです。どちらかというと、広く浅くという感じです。

最近は棋士のYouTuberが増えましたね。イトシン(伊藤真吾五段)先生や村中(秀史六段)先生、香川愛生女流三段、そしてなんと石田(和雄九段)先生も。ちなみに藤井先生はYouTubeは観ますか? タモリさんとの対談で、好きだと話していた京急線の発車時に鳴る「ドレミファインバータ」も無限に聞けますよ(笑)。

ははは(笑)。YouTubeは観ていないです(笑)。

鉄道は変わらずお好きとのことですが、豊島先生が北海道のタイトル戦で新幹線と在来線で7時間かけて移動されていました。

(食い気味に)それ聞きました。函館で1泊してという…スゴイなと思いました。

やはり鉄道大好き藤井先生もタイトル戦に出るときは、鉄道で行かれますか?豊島名人は往復されていましたが、快適だった(笑)と。

札幌はちょっと厳しいかなと(笑)。函館からさらに3時間以上あるので、かなり…。えー名人、余裕だったんですか!? 帰りも!? それはスゴいですね。

そろそろ締めの質問に移りたいと思います。まだ17年と短いですが、これまでの人生を振り返ってみて、棋士になれてよかったと思いますか?

「棋士としてタイトルを獲る」というところが究極的な目標というか、誰もが目指すところだと思っています。まだ自分は手が届いていないというところなんですけど、やっぱりプレイヤーとして、トップ棋士の方々と対局できるというのは幸せなことです。そういう方々との対局で自分が良いパフォーマンスを出せたときは、やっぱりすごくうれしいなと思っています。

他の同級生と異なり、奇しくも中学生の段階で、はっきりと「将棋の棋士」という職業が決まったわけですが、人生は楽しいですか?

子どものころからプロ棋士になりたいと思っていたので、それが実現したのは幸せなことだなと思います。

プレイヤーとして、強くなるために試行錯誤していって、ちょっとでも何か成果が出たときはうれしく思います。そして将棋を指していて、こういう手があるのかという「新しい発見」というのは、すごく楽しいと感じています。

今回、参考にさせていただいたインタビューや書籍などのリストになります。どれも素晴らしい内容ばかりです。ぜひ合わせてご覧ください。

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