【勝負師たちの系譜】世代交代少ない女流棋界の中で台頭する若手 山根ことみ女流初段と加藤結李愛女流初段に注目 (1/2ページ) – zakzak:夕刊フジ公式サイト

加藤結李愛女流初段は、先天的疾患で椅子対局になるとか。


2019.10.13

勢いある若手として注目される山根ことみ女流初段
勢いある若手として注目される山根ことみ女流初段

【勝負師たちの系譜】

プロの制度ができて45年になる女流棋界だが、年数の割には世代交代の回数が少ないと思うのは、私だけであろうか。

最初は、蛸島彰子女流六段の天下だった。ただ一人、奨励会の経験者だったから、当然と言えば当然か。その壁を破ったのが、林葉直子元女流王将や中井広恵女流六段といった、次世代の奨励会組で、その後は清水市代女流六段の天下が長く続いた。

そして次に、奨励会の有段の壁を打ち破った里見香奈女流六冠や加藤桃子女流三段が出てくる。つまり、45年間で世代交代は、3回しか行われていないのだ。

男性棋士でも、一人の棋士の天下が長く続いた時代はあったが、女流棋界はさらに、トップ棋士のレベルが他と違っているとも言える。そして現在は里見の天下で、これを西山朋佳女王が猛烈に追い上げるという構図になっている。

しかし男性でも有望棋士は皆、10代から注目されるから、若手の女流が出てきても良い頃である。

現在の注目株としてはまず、8月に『YAMADA女流チャレンジ杯』、そして今月『白瀧あゆみ杯争奪新人登竜門戦』(非公式戦)を制した、山根ことみ女流初段(21)。愛媛県松山市出身で、野田敬三六段門下だ。

YAMADA杯は、ヤマダ電機特別協賛で、決勝を群馬県高崎市の本店で行う棋戦。白瀧杯は、棋士御用達の呉服屋が後援し、やはり決勝を白瀧呉服屋で行う棋戦だ。囲碁界には、個人スポンサーのタイトル戦があるが、将棋界では珍しい。

もう一人の注目棋士は、仙台市出身で石田和雄九段門下の加藤結李愛女流初段(16)。昨年の7月に女流2級に登録されたばかりの新人だが、今年度は7割5分という高勝率で、最近は大山名人杯倉敷藤花戦の決勝まで進出している。

ただし二人ともまだタイトル戦に出るまでの活躍はない。

女流棋士には「どうせ里見や西山には勝てる訳がない」という思いの人がいるようだが、新人が出てこなければ、その世界の発展はない。ゴルフの渋野日向子選手が良い例だが、新人女流棋士は、解説の聞き手やイベントの出演だけでなく、タイトル戦での活躍をファンは期待しているのを自覚すべきである。

■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

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