ふむ・・・
2019年9月7日16時30分
棋士の勝負は静寂に包まれた対局室で行われます。対局中は全くの無言と思われがちですが、意外とそうでもありません。考えている最中に独り言をつぶやく棋士はかなり多くいます。
もちろん「いやぁ、困った」など相手に聞かれたくないことは言いませんが、難しい局面でのちょっとしたぼやきや、ため息。「う~ん」「そうか」はよく聞かれます。
自分のリズムのようなもので形勢の良しあしにあまり関係はなく、昔の「口三味線」のように相手を惑わす意図もありません。自分がはっきり有利な時は出ないのも特徴です。
独り言が一番出やすいのは、対戦相手が席を外したとき。会心の一手や、逆に敗戦を覚悟した指し手の後、気持ちを落ち着けるために席を外す棋士は多くいます。こんなときに残された棋士が「うん、そうだよなぁ」「そんな手があるのか」とつぶやく言葉には本音がこもっています。
私が30代のころ。対戦相手のベテラン棋士は1分将棋に追い込まれ、深い前屈姿勢で必死に読み進めています。
「こうやる、こう来る、取る、取る、打ち込む……、うーん分からん。ええい、行けぇ!」
言葉通りに受け取れば、この攻めは全く成算がない突進。これだけ相手の読み筋が全部伝わってきたのは初めてで、こちらもビックリ。思わず、記録係の少年と目が合ったものです。
時に、独り言がこだますることもあります。
大部屋でたくさんの棋士が一斉に対局する名人戦の順位戦。「いやー(難しい)」とつぶやくある棋士。離れたところで考えている棋士が「いやー、か……」とポツリ。それを聞いた他の棋士が「いやいや、ねえ」と反応。これが「棋士の共鳴」現象です。
若い人はどうでしょう? 藤井聡太七段が対局中に独り言をつぶやいているのはあまり見かけません。
まだ棋士になる前、研究会で形勢不利な時に「そうか、ひどい」と言っているのは見ましたが、独り言というよりも素直な心の声という気がします。
棋は対話なり。私たちは無言の対局でも、指し手を通じて会話をしているのです。
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すぎもと・まさたか 1968年、名古屋市生まれ。90年に四段に昇段し、2019年2月に八段。第20回朝日オープン将棋選手権準優勝。藤井聡太七段の師匠でもある。
情報源:
情報源:(杉本昌隆八段の棋道愛楽)棋士のつぶやき 静寂の対局、無言の対話:朝日新聞デジタル
村)杉本八段が30代の時に対戦したある棋士は、対局中にこうつぶやいた(?)そうです。何となく想像が…→「こうやる、こう来る、取る、取る、打ち込む……、うーん分からん。ええい、行けぇ!」
(杉本昌隆八段の棋道愛楽)棋士のつぶやき 静寂の対局、無言の対話 https://t.co/JvUII0MaSc— 朝日新聞将棋取材班 (@asahi_shogi) September 7, 2019
ほぉ・・・