ふむ・・・
2019年7月25日(木) 11:00
継続して努力できる男
カープは交流戦から苦しい戦いが続いています。しかし、そういうときほど、みんなには感謝の気持ちを忘れないでほしい。カープは家族です。強い絆を胸にチーム一丸となって、この逆境を乗り越えてほしいと思います。
この連載では現役選手の話もしていきます。前回は石原慶幸選手でした。今回は、田中広輔選手にエールを届けることにしましょう。私が2015年にカープに帰ってきたころから遊撃で不動のレギュラーとなった広輔ですが、今季は苦しいチームを象徴する選手の1人になってしまっていますからね。
広輔がカープに入団したのは14年。当時、私はタイガースでしたが、「いい遊撃手が出てきたな。この子がカープの次の遊撃手なんだ」と思っていました。
カープに戻ってからは、同じ内野手だったこともあり、練習など一緒に過ごす時間が多くありました。食事もたびたび行っていましたね。普段からいろいろな話をしていましたが、広輔のバッティングの調子があまりよくないときなどはアドバイスを送ることもありました。
アドバイスと言っても、いいときと比べての変化を教えてあげるだけです。「もう少しこういうふうにタイミング取っていたよ」とか「今こんなふうになっているけど、自分ではどう?」といった具合ですね。
選手というのは、常に成長していくために、少しずつ新しいことをやっていきますが、そのときに無意識のうちに自分のいいところまで消えてしまうことがあります。だから、一声かけて気づかせてあげることで、いいところはそのままに成長することができます。
広輔は真面目な選手です。堅実で、コツコツと練習をするタイプ。私がカープに戻ってきた当初、広輔の課題と言えば「守備」でした。捕るほうよりも、どちらかと言うと投げるほうが今ほど安定してなかった。でも、コツコツと努力を継続できる選手なので、16、17、18年と、どんどんと上達していって、18年にはゴールデン・グラブ賞を獲得するまでになりました。
私の中では、鳥谷(鳥谷敬、阪神)にかぶる部分があるんですよね。鳥谷もプロの世界に入ってきたときは(私はまだカープにいたときでしたが)、決して守備がうまいと言われるほうではなかった。送球にミスが多くてね……。でも、鳥谷もコツコツと継続して努力できる選手でした。そういう才能があるから、少しずつ結果が出て、ゴールデン・グラブ賞を獲るまでになりました。15年だったと思いますが、広輔と一緒にオールスターに出たときに、鳥谷も選ばれていたんです。だから、広輔に「鳥谷はもともと守備がうまかったわけじゃないんだ。でも、いろいろと考えながら、コツコツと努力を重ねて、ゴールデン・グラブ賞を獲るような、名手と呼ばれるような選手にまでなったんだよ」という話をしました。そして、「鳥谷に、練習のときの意識など遠慮なしに聞きに行ったほうがいいぞ」とアドバイスしたんです。その後、いろいろと質問して、たくさん勉強になったようでした。
今年の経験を財産に
私と広輔との思い出と言えば、会話と言うより、16年の優勝のシーンですね。遊撃の広輔からのボールを一塁の私が捕って歓喜の瞬間を迎えました。あのときは不思議なことに「最後、自分が捕って決まりそうだな」という気配があったんですよ。その予言(?)どおり、遊ゴロを広輔が捕って、投げて、自分が捕るまでの瞬間は、今でも鮮明に覚えていますし、まるでスローモーションでした。送球はバッチリいいところに来ましたよ!
守備に関しても、打撃に関しても、広輔なりにいろいろと考えながら取り組んでいる中で、今季は苦しんでいます。でも、この経験は野球人生において、ものすごく大きな財産になると思います。あとで振り返って感じることだと思いますが、すごく苦しかった分、たくさんの勉強にもなっているはずです。苦しいこと、悔しいことが大きければ大きいほど、自分も強くなれます。
635試合連続でフルイニング出場を果たした、体も心も強い選手です。私も386試合フルイニングを続けてきましたが、試合に出続けるのは本当に大変なこと。ましてや広輔の場合、遊撃手です。単純に動く量もすごく多く、体力的にも重労働で、小さなケガもたくさんしてきたことでしょう。それでも、もともとの体の強さに加え、トレーニングをしっかりやって、肉体的にも、精神的にも強くなった。だから、今回の不振も必ずや乗り越えられると信じています。そして、その経験が後々の野球人生において、すごくプラスになると思います。
若い選手が少しずつ出始めてきて、チームもだんだんと新しく変わってきています。レギュラーとして責任あるポジションを任され、年齢的にも30歳を迎えた。広輔にはキク(菊池涼介)と一緒にチームを引っ張っていって、後輩たちに「カープはこういうチームなんだよ」というものを教えていってほしい。それは彼らの義務だと思っています。頑張れ、広輔!
PROFILE
田中広輔/たなか・こうすけ●1989年7月3日生まれ。神奈川県出身。171cm82kg。右投左打。東海大相模高から東海大、JR東日本を経て2014年ドラフト3位で広島入団。15年から遊撃のレギュラーに定着すると、同年4月1日から今年の6月21日まで、フルイニング出場を果たした。17年は最多盗塁と最高出塁率の2冠とベストナイン、18年はゴールデン・グラブ賞と個人としてもタイトルを獲得する中で、16年から連覇を続けるチームの原動力となっている。
新井貴浩/あらい・たかひろ●1977年1月30日生まれ。広島県出身。広島工高から駒大を経て99年ドラフト6位で広島入団。4年目の02年に全140試合に出場し、05年は43本塁打で本塁打王のタイトルを獲得。07年オフ、FA権を行使して阪神に移籍した。11年には打点王になるなど活躍するも、14年は出場機会が減少し、オフに自ら申し出る形で自由契約に。15年に8年ぶりに古巣・広島に復帰。16年には四番打者として25年ぶりのリーグ優勝をけん引し、リーグMVPに輝く。17年途中からは代打が多くなったが勝負強さは健在で、球団史上初のリーグ3連覇に貢献した。18年限りで現役を引退。通算成績は2383試合、2203安打、319本塁打、43盗塁、打率.278。
情報源:私の中で広輔は、鳥谷にかぶる部分があるんです/新井貴浩コラム(週刊ベースボールONLINE) – Yahoo!ニュース(コメント)
情報源:新井貴浩コラム 今週の感謝人 田中広輔選手(広島)「私の中で広輔は、鳥谷(敬、阪神)にかぶる部分があるんです」 – 野球:週刊ベースボールONLINE
ほぉ・・・