【新井の伝言】<1>引き際 下水流や堂林に出番を | 広島東洋カープ | 中国新聞アルファ

ほぉ・・・


逆転サヨナラ2ランを放った下水流(35)を最前列で迎える新井(25)=7月20日
逆転サヨナラ2ランを放った下水流(35)を最前列で迎える新井(25)=7月20日

広島へ復帰後の4年間、新井貴浩が最も心に残る一打は、自らの手で放ってはいない。「下水流(昂)の一発。強いチームになったよね」。7月20日のマツダスタジアム、巨人戦で飛び出した逆転サヨナラ2ラン。笑顔で出迎える新井は、すでに引退を決意していた。

広島が甚大な被害に見舞われた西日本豪雨から2週間。被災後、初めての本拠地試合だった。7連勝中の2位巨人を5ゲーム差で迎え、7―0から追い付かれて延長へ突入。1点を勝ち越された十回、途中出場の伏兵が劇的勝利を決めた。

「相手は抑えのマシソン。その外角高めの直球だからね。すごいよ。めちゃくちゃうれしかった」。ダイヤモンドを一周する後輩の姿を心の底から喜んだ。

選手ロッカーでは、下水流の寂しげな背中ばかりを見てきた。堂林翔太の背中も。ベンチを温める日が続くと、荷物をまとめる日が訪れる。2軍行きのあいさつを済ませ、去っていく。「見送るのが心苦しかった。自分が1軍にいることで、彼らの出番を奪ってしまっている」

4月末には、中堅の丸佳浩が右太ももを痛めて約1カ月間、戦列を離れた。代役を務めた野間峻祥が台頭し、丸の復帰後も外野の一角をつかんだ。「下水流や堂林も、出場機会さえあれば…」。思いは募るばかりだった。

プロ20年目、衰えは全く感じなかった。まだやれる。でも、もう辞める。「僕にとっては『あと1年』かもしれないが、彼らにとっては『この1年』。もうこの赤いユニホームを着られなくなる。寂しさはある。そんなことよりも、カープの未来が大事」と迷いはなかった。

四半世紀ぶりのリーグ優勝、37年ぶりの連覇、そして球団史上初の3連覇。カープを「家族」と呼んで愛した男は、弟のような下水流の一発を見届けた直後、球団へ現役引退を申し入れた。

猛練習で育てられ、どん底を味わい、阪神移籍を経験し、古巣への復帰後は3連覇でゴール。新井が振り返るプロ20年の歩みには、後輩たちやファンへ伝えたいメッセージがちりばめられている。(山本修)

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