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第76期将棋名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催、大和証券グループ協賛)は、佐藤天彦名人(30)が羽生善治竜王(47)の挑戦を4勝2敗で退け、3連覇を果たして閉幕した。前半は黒星が先行する苦しい戦いだったが、前期と同様、第4局から3連勝して抜き去った。激闘となった七番勝負を佐藤名人に振り返ってもらった。(聞き手・村上耕司、村瀬信也)
■黒星も、高い「作品性」残せた第1局
――第1局は横歩取りの戦型になりました。
後手番なら横歩取りにしようと思っていました。ただ封じ手あたりは間違えずに指すのはかなり大変で、自信はありませんでした。
終盤で▲4八銀(A図)と打たれたのが超絶難解な局面でした。その前に馬を切ったところも、自玉が詰むかどうか、ものすごく読まなきゃいけなくて、難易度の高い局面が続けて出てきて、これだけ膨大な変化が多い将棋は珍しい。
A図で△5九金は自然な手ではあるんですが、6八に角や銀を打つ手もありました。本譜は△5九金以下▲同玉△6八金▲4九玉△5八金▲3九玉△4八金▲2八玉と進んで、△6一銀と打ったんですが、たぶんこれが敗着です。△4四歩の方がよかった。
――初戦を落としたわけですが、手応えがあったとおっしゃっていました。
自分の中では最善を尽くせた。結果が幸いしなかったという認識です。いい将棋が指せたという満足感はありました。棋譜に作品性があるとすれば、非常に高いものが残せたのではないかと思いました。
――第2局は先手番の角換わりで快勝でした。
局面をよくする決断の一手が指せた。相手の角銀を働かせないという意味で、わりとスムーズに決断できた気がしますね。
――第3局はちょっと変わった角換わりでした。
お互い位を取り合って、角を打ち合った。羽生さんが銀取りに歩を打ち捨てた手が実戦的に素晴らしい手で、愚形を作らされた。無理な仕掛けをせざるをえなくなりました。負けはしましたが、気持ちを切らさないように第4局に臨めればと思っていました。
■紙一重で決まる、全局が濃密だった
――第4局は、直前に羽生さんが先手番で勝った横歩取りで、羽生さんが逆に後手番で指してきました。
2日前の羽生―松尾(歩八段)戦を勉強として見ていました。その対局はB図で▲2三歩ではなく▲7七角と打ったんですが、△8九馬▲1一角成に△3三桂と跳ばれたらいやかなと思ったので、8九の桂を取らせない意味で本譜の▲2三歩を思いつきました。
今は先手の「青野流」や「勇気流」に後手が苦戦している状況があって、この形は後手の画期的な対策として研究していた。お互いにとって関心の高い局面だったということですね。
▲2三歩以下は△4四馬▲同飛△同歩▲1六角△4三香▲8五飛△8二歩▲3八銀と進んで、結果的に先手がよくなりました。負けて1勝3敗になると厳しかったので、いい内容で勝てたのは大きかったですね。
――第5局では後手番で初めての勝利でした。
横歩取りで似た前例がある将棋でした。終盤、玉を怖い場所で維持しながら、踏み込みよく戦えたのがよかったと思います。
――第6局は初手▲2六歩に△6二銀と珍しい出だしに。
後手が7四の歩を取らせるのは羽生さんも僕も先手番で経験があるし、昨年の藤井(聡太七段)―深浦(康市九段)戦もあって、深い研究はもちろんないですが、認識はありました。
お互いに考えることがたくさんあって、それが2日目の夕方まで続き、結局差がつかずに秒読みのスプリント勝負に入りました。悪い局面もあり、終盤で1筋を受けられたら、実戦的には厳しかったと思います。
――改めて七番勝負を振り返っていかがですか。
一局一局がすごい濃密でした。どちらかがすごいミスをしたという局はなく、紙一重で決まった将棋が多かった。この結果は恵まれたと思います。
■七番勝負の結果
第1局 第2局 第3局 第4局 第5局 第6局
佐藤 ● ○先 ● ○先 ○ ○先 防衛
羽生 ○先 ● ○先 ● ●先 ●
情報源:将棋名人戦、佐藤名人が防衛振り返る:朝日新聞デジタル
ほぉ・・・