ロングインタビュー 藤井聡太七段「隘路を抜けて」~将棋世界 2018年7月号より|将棋情報局

ほぉ・・・


指し手決定に至る思考の過程について尋ねた時、藤井はいつもの笑顔のまま言った。

「読んでいるうちに隘路(あいろ)に嵌(はま)っている、おかしな方向に行ってしまっているという時もあります。計算力との兼ね合いもありますが、力の許す限り(選択肢を)拾えるように、とは思っています」

隘路とは、通行困難な狭い道を指す。今時、大人でもあまり用いることのない言葉である。だからこそ彼らしい、彼ならではの言語でもあった。

一方、6月号掲載の『熱局プレイバック』のために本誌が行った棋士アンケートで、2017年度の名局第1位に順位戦A級の豊島将之八段対羽生善治三冠(当時)戦を挙げたのは藤井さんだけでしたよ、と伝えた瞬間のこと。彼は陽だまりのような顔を崩さないまま、聞こえないくらい小さな声で「おおっとぉー」とつぶやいた。

「私だけでしたか……なるほど……」

ヴォリュームこそ極小だが、リングサイドの古舘伊知郎を思わせる「おおっとぉー」の一言。もしかしたら、休み時間にクラスメイトと交わす会話の途中、何気なく発しているリアクションのひとつが自然と出たのかもしれない。

史上最年少棋士・藤井聡太。

通年度のルーキーイヤーとなった2017年度に放った光芒は、遠い先まで射し貫くような輝きだった。史上最多の公式戦29連勝、史上最年少での六段昇段、史上最年少での棋戦優勝、将棋大賞で記録部門四冠、特別賞、新人賞。今春、高校一年生になったばかりの十五歳が刻んだ足跡である。

唯一選んだ最高の名局

――順位戦の▲豊島八段対△羽生三冠戦(豊島勝ち)を、17年度最高の名局として挙げた理由は何なのでしょう。

「羽生先生と豊島先生の将棋観の差が出たように感じられたことが興味深かったからです。△6四桂(第1図)の局面で▲同角△同金と角を切ってから▲9六歩と香を取りにいくのは全く思いつかず、これで難しいというのは私にはない感覚だったので非常に印象に残りました。先手は3五の歩が大きいので桂香を持つと(玉頭に)打ち込んでいけるので、指されてみるとなるほどの一手なのですが、こういう指し方があるんだなあと。その後、本譜は攻め合いになりましたが、豊島先生が自玉の安全度を正確に判断されていたのも印象に残ります」

――自身の将棋を挙げるならば、どの一局になるのでしょう。

「そうですね……竜王戦の増田さん(康宏四段=当時)との将棋でしょうか。29連勝の将棋ということもありますが、内容に関しても、▲3五歩と仕掛けてまずまずという安易な認識に基づいてしまった辺りの序盤の甘さが出た一方、中盤で(第2図)▲7七桂△8二飛▲6五桂と跳ねていったところは一見軽そうだけど攻めになっていて、うまく指せた気がしています。良くも悪くも自分らしさが出た将棋だったと思います」

――あの一局は、テレビ各局のワイドショーが会館前から中継したり、特別対局室に120人以上の報道陣が入る異常事態の中で行われました。国民的関心事の中心にいて、何を思っていたのでしょう。

「比較的にリラックスして自然体で臨めたのかなと思っています。(注目によって)パフォーマンスが下がるということはなかったと思います。どんな舞台であれ、将棋を指すということに変わりはありませんので」

続きは将棋世界 2018年7月号

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情報源:ロングインタビュー 藤井聡太七段「隘路を抜けて」~将棋世界 2018年7月号より|将棋情報局


へぇ・・・