藤井六段戦、師匠が語る「相手が弟子だと忘れていた」:朝日新聞デジタル

ふむ・・・


杉本昌隆七段の棋道愛楽
杉本昌隆七段の棋道愛楽
弟子の藤井聡太六段との対局を振り返る杉本昌隆七段=8日夜、大阪市福島区、井手さゆり撮影
弟子の藤井聡太六段との対局を振り返る杉本昌隆七段=8日夜、大阪市福島区、井手さゆり撮影

将棋の師弟を例えると、「親子」のような関係です。私の師匠、板谷進九段は47歳の若さで亡くなりました。当時、私は修業中の19歳。「恩返し」とも言われる師弟対局はできませんでした。30年経った今でも悔いを残しています。それだけに、3月8日に大阪であった藤井聡太六段との対戦は特別な思いがありました。

対局日の朝、控室で棋士数人と顔を合わせます。藤井六段もいました。あいさつ以上の会話はなく、ピリピリした空気が流れます。決して仲が悪いわけではありません。相手が誰であろうと、将棋盤の前に座れば目の前の勝負に全力を尽くす。これが棋士の性(さが)だからです。

藤井六段は、師匠と対戦している感慨など全くなかったでしょう。私も途中から相手が弟子であることを忘れていました。

対局中は会話こそ交わしませんが、盤を挟んでいると伝わってくる気持ちがあります。

丹念に手を読む時間の使い方、相手のミスを期待しない、最善を追求する姿勢。藤井六段の考え方は、私が長年追い続けているものと同じです。勝負を争っていても、心地よい気持ちになるのはこんなときです。

対局を振り返る藤井聡太六段(右)と杉本昌隆七段=8日午後6時48分、大阪市福島区、井手さゆり撮影
対局を振り返る藤井聡太六段(右)と杉本昌隆七段=8日午後6時48分、大阪市福島区、井手さゆり撮影

勝負は負けました。弟子の成長を実感したとはいえ、悔しいに決まっています。ただ、弟子に負けたから普段より悔しい……という感情はありません。それは相手を一人前に見ていない「上から目線」だからです。

対局後は一緒に新幹線で帰り、いつものように将棋の話をして春休みに研究会をする約束をして別れました。藤井六段もいつもの人懐っこい笑顔になっています。2人が「勝負師」から「師弟」に戻った瞬間でした。

新たな出発や出会いがある4月。師弟対局の2日後、数年ぶりにプロを諦めた元弟子2人から立て続けに「大学に合格しました」とメールが届きました。それぞれ文学と医学の道に進むようで、「元師匠」に報告したいと思ってくれたことが私には何よりの喜び。成長していく若者を見るのはうれしいものです。

すぎもと・まさたか 1968年、名古屋市生まれ。90年に四段に昇段し、2006年に七段。01年、第20回朝日オープン将棋選手権準優勝。藤井聡太六段の師匠でもある。

情報源:藤井六段戦、師匠が語る「相手が弟子だと忘れていた」:朝日新聞デジタル


ほぉ・・・