「名人をこす」夢への第一歩 将棋界の頂点に真っ向勝負:朝日新聞デジタル

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将棋|名人への道 藤井聡太:朝日新聞デジタル

将来の夢は「名人をこす」。藤井聡太五段(15)が小学4年生の時に小学校の文集に書いた言葉だ。「当時はまだ小学生だったので……。いま振り返るとすごいことを書いたなと……」。この時のことを聞かれ、藤井五段ははにかみながら振り返った。

藤井聡太四段(当時)と対局する佐藤天彦名人(左)=1月14日、名古屋市東区の東桜会館、戸村登撮影

「名人」は将棋界で最も伝統のある称号だ。江戸時代から世襲や推薦で受け継がれ、実力者同士が戦って奪い合うタイトル戦になったのは昭和に入ってから。1937(昭和12)年、故木村義雄十四世名人が実力制初代名人になってから約80年、名人になったのはわずか13人しかいない。そんな重みを小学生にして分かっていたのだろうか。まるで、「名人に香車を引いて勝つ」と物差しの裏に書き残して家を出た故升田幸三・実力制第四代名人を思い起こさせる。

まだ四段だった先月、藤井五段にその名人と公式戦で戦うチャンスが巡ってきた――。名古屋市の東桜会館で行われた第11回朝日杯将棋オープン戦の本戦2回戦。相手は名人戦2連覇中の佐藤天彦名人(30)だ。藤井五段と同様、若くして才能を発揮した逸材。藤井四段が現役のタイトル保持者と公式戦で対戦するのは初めてで、いきなり棋界の頂点である名人と相まみえることになった。

佐藤天彦名人(手前左)と藤井聡太四段(当時)との感想戦を大勢のファンが見守った=1月14日、名古屋市東区の東桜会館、戸村登撮影

佐藤名人は5歳でルールを覚え、10歳でプロ養成機関の奨励会に入会。14歳で三段に上がり、2006年10月に18歳でプロとなる四段に昇段した。順位戦では初参加から8年でA級に上ると、1期で名人挑戦権を獲得。初挑戦の名人戦七番勝負では羽生善治名人(当時)を4勝1敗で破って、28歳で名人位に就いた。まさに藤井五段がこれから目標とする道筋を一足早く駆け上がった一世代上の先輩でもある。

今をときめく中学生棋士と現役名人との対戦。しかも公開対局とあって、対局場には多くの将棋ファンや報道陣が詰めかけた。

朝日杯は持ち時間がそれぞれ40分の早指し戦。序盤でじっくり考える余裕はなく、互いに指し慣れた戦型に持ち込みたいところだ。約180人のファンが見守る中、先手の藤井五段が初手▲2六歩と突くと、佐藤名人が△3四歩と応じて、「横歩取り」の戦型に進んだ。

佐藤天彦名人(手前)と対局する藤井聡太四段(当時)=1月14日、名古屋市東区の東桜会館、戸村登撮影

藤井五段はこの戦型を公式戦で3局指しているが、すべて負けている。一方、佐藤名人にとっては羽生竜王からタイトルを奪う原動力となった得意戦法だ。そんな戦型で藤井五段は名人を相手に真っ向勝負を挑んだ。藤井五段は「相手の得意戦法かどうかは普段から意識していない。苦手意識は特にありません。早指しでもあるので、序盤は決断良く指そうと思っていた」という。

佐藤天彦名人(手前)と感想戦をする藤井聡太四段(当時)=1月14日、名古屋市東区の東桜会館、戸村登撮影

激しい戦いになることが多い戦型だが、じっくりとした駒組みが続く持久戦模様になった。百戦錬磨の名人の土俵であるにもかかわらず、藤井五段が少しずつリードを奪っていく。佐藤名人が「決め手があるときには決めに来るイメージがあったが、無理に決めに来ない。手堅いなという印象」と話した通り、藤井五段がじわじわと圧力をかけ、追い詰めていった。最後は相手陣を制圧した形で押し切り、大金星を挙げた。現地で対局を見守っていた木村一基九段は「中盤、指しやすくなってからの指し方が完璧。ノーミスで完勝と言っていい内容だった」と驚きを隠せない様子だった。

終局後、2人は多くの報道陣に取り囲まれた。名人を初めて破ったことについて藤井五段は「今回は勝つことができましたが、まだまだ実力的には及ばないと思っていて、全く(名人を)超えたということはない。まずはしっかりと実力をつけて、その上でタイトルを目指していけたらと思います」。一方、佐藤名人は「10代半ばくらいだと粗削りなところも多いが、藤井四段は序中盤が非常に的確でしっかりしている。終盤の踏み込みが鋭いという以外にも、じっくりとした戦い方でも強さを持っていると感じた。藤井四段はこの将棋界に現れたスター。これからもいい将棋を指していける相手になるんじゃないかと思っています」と話した。

藤井四段も話した通り、「名人を超えた」というにはまだまだ実績が足りない。とはいえ、初対戦で結果を出せたことは大きな自信になったに違いない。さらに大きな舞台での対戦が待ち遠しい。

この勝負がついた時点で、前日に4強入りを決めた羽生竜王の対戦相手が、藤井五段となることが決まった。羽生竜王は名人9期を誇り、十九世名人を名乗る資格を持つ。公式戦初対決となる17日の準決勝。「ザ・名人」ともいえる将棋界の第一人者を相手に、昇段を果たしたばかりの藤井五段はどんな将棋を見せるのか。(村上耕司、動画=戸田拓撮影)

情報源:「名人をこす」夢への第一歩 将棋界の頂点に真っ向勝負:朝日新聞デジタル


屋敷伸之に勝って、深浦康市に負けた
屋敷さんは先日の順位戦で、B級1組への降級が決まったんだよな。