羽生さんは本当にすごい・・・
【勝負師たちの系譜】羽生善治三冠
歴代の棋士でタイトルを独占したことがあるのは、三冠時代の升田幸三実力制第四代名人(1957)、五冠時代の大山康晴十五世名人(62)、そして七冠時代の羽生善治現三冠(96)の、3人だけである。
いつの時代でも独占というのは、本人が強いだけでなく、周りの棋士から「あの人にはとても勝てそうにない」と、最初から勝負を諦めさせる凄みが必要だ。特に大山と羽生にはそれがあった。
羽生のタイトル獲得数は、今年の棋聖位防衛で98。現在戦っている王位戦、秋から始まる王座戦を防衛すると、一気に100の大台に乗るのだ。
これは時代が違うとはいえ、大山の80、中原誠十六世名人の64を抜き、第1位。現役では谷川浩司九段の27が次だから、いかに羽生が抜けているかがお分かりだろう。
羽生の同年代にも当然、素晴らしい才能の持ち主はいる。森内俊之九段は名人戦で、3年連続羽生を破ったし、佐藤康光九段や後輩の渡辺明竜王は、竜王戦でしっかり羽生を退けている。
にもかかわらず羽生がこれだけ他の棋士と成績が違う理由は、まず生涯勝率の差が挙げられる。
優秀な若手棋士は長嶋茂雄巨人終身名誉監督の言う「ロケットスタート」よろしく、勝率8割くらいからスタートするが、上位の棋士と当たるようになると、自然に勝率が下がってくる。
ところが羽生はもうすぐ対局数が二千局になろうというのに、まだ7割1分5厘という、驚異的な数字を残しているのだ。
これは同じ、竜王や名人になった同世代のライバルと、8~9分も違うのである。渡辺でさえ、千局に満たない時点で、6割6分台なのだ。現在対局数500局以上で7割を超えているのは、羽生以外には豊島将之八段がただ一人、7割ギリギリの所にいるくらいである。
私は棋士の強さは、生涯勝率に現れるという持論を持っているが、もはやその意味では、羽生にライバルはいない。
他の棋士と羽生がどう違うかを、次回は検証してみたい。
■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。
情報源: 羽生善治三冠、“生涯勝率”に現れる無双の強さ 同世代のライバルと一線画す驚異の成績:イザ!
しかもいまだに46歳、何歳まで現役でいるのかな・・・