藤井新王将の偉業、師匠・杉本八段がたたえる　「大人になった」

杉本昌隆八段

2022/02/13 07:30

今年１月、将棋の竜王就位式で藤井聡太竜王（左）と記念撮影に臨む師匠の杉本昌隆八段（右）＝東京都渋谷区（春名中撮影）

１２日に行われた将棋の第７１期王将戦七番勝負を４連勝で初戴冠し、史上初の１０代５冠となった藤井聡太新王将（１９）＝棋聖・竜王・王位・叡王。わずか半年足らずで、現役の竜王と名人から３タイトルを奪取した。破竹の勢いに乗る愛弟子について、師匠の杉本昌隆八段（５３）が偉業をたたえ、成長ぶりも本紙に明かした。（取材構成・丸山汎）

王将位獲得と最年少での５冠達成、心から祝福します。師匠として本当にうれしく思います。

渡辺王将とは初の２日制でのタイトル戦。さすがに４連勝は予想していませんでしたが、藤井新王将は長い持ち時間になるほど将棋の精度が上がって力を発揮します。大崩れはしないはずと信じて見ていました。

第１局をものにしたのが大きかった。序盤の４１手目。藤井新王将が８筋の歩を突いた一手には、いまだ是非の結論が出ていません。相手の飛車先の８筋は低く構えるのがセオリー。歩を前に伸ばして高い位置に争点を作ることは理にかないません。従来ならば、疑問手の烙印（らくいん）を押される手です。

あのような手は事前研究もできません。渡辺前王将は、対策を立てられなくなったのではないでしょうか。シリーズの流れ、将棋の常識も変えてしまうような一手でした。

小学４年で弟子入りした藤井新王将は、７月で２０歳になります。

昨年１２月、竜王位獲得の祝賀会が行われた鹿児島県指宿市を一緒に訪ね、その帰りのこと。中部国際空港の駅から名古屋市内までの電車の指定券を「買っておきました」といって、私に切符を渡してくれました。

そんなことは初めて。でも電車代を払ってもらうわけにはいきません。「これくらい、いいです」という彼に「自分で払うよ」とお金を渡し、並んで座って帰りました。タイトル戦が増え旅慣れてきたこともあるでしょうが、大人になったなと感慨を覚えました。

藤井新王将に１人暮らしを勧めたことがあります。彼と同じ１９歳のとき、当時三段だった私は名古屋を離れ、大阪の将棋会館近くで１人で暮らし始めました。直後に師匠の板谷進九段が急逝され、棋士人生で最もつらかった時期です。自分の料理の下手さや洗濯の大変さ、自分を温かい布団に寝かせてくれた親のありがたみを知りました。

それで将棋が強くなったかは分かりませんが、たくましくはなりました。今の彼は進化し続けていて、すぐ環境を変える必要はないでしょう。でも「経験をしておくことも後々のためにはいいよ」と話しました。

昨年１１月１３日に４冠目の竜王となり、わずか３カ月で５冠。昔から彼を知っていながら、いまだ信じられないものを見ている気持ちです。大きく変わる時代の流れを間近で見られることを師匠として喜び、感謝しています。（談）

情報源：藤井新王将の偉業、師匠・杉本八段がたたえる　「大人になった」／将棋（1/2ページ） – サンスポ

2022年2月13日 06:44

第71期ALSOK杯王将戦第4局第2日（ 2022年2月12日東京都立川市・SORANO　HOTEL ）

藤井聡太竜王（19）＝王位、叡王、棋聖含む4冠＝の史上最年少5冠達成の快挙を受け12日までに、師匠の杉本昌隆八段（53）がスポニチ本紙の電話取材に応じ「3連勝の時点で必ず成し遂げてくれると思っていた。会う度にタイトルが増えていくので、ご褒美が悩ましい」とうれしい悲鳴をあげた。この日は愛知県内のホテルで中継をチェック。92手目△3六歩と桂頭に歩を打った辺りから新王将の誕生を確信したといい、「2日制の対局で抜群の安定感がある渡辺さんに4連勝。信じられません」と話した。

杉本と藤井にとって、2022年は節目だ。杉本一門恒例の新年会には未成年、もしくはプロになる前の弟子に杉本がお年玉を渡す慣例があり、19歳の藤井にとって今年が最後のお年玉だった。獲得タイトル分を加味し「金額は前年より増額です」と杉本は笑顔。「今までは頭を少し下げるだけだったのに、今回は深々とお辞儀。大人になったなぁとしみじみしました」と穏やかに振り返った。

各地を転戦する日々が続くが、対局の開催地に絡めたあいさつや料理の注文をすることが増えた。「元々好奇心が強い性格で、開催地の下調べをしていると思う。将棋が好きだからこそ、タイトル戦を楽しんでいるのでしょう」。タイトルホルダーになっても、自分の軸はぶらさない。その姿勢が強さにつながっている。

情報源：藤井竜王師匠の杉本昌隆八段祝福「ご褒美が悩ましい」― スポニチ Sponichi Annex 芸能