藤井聡太竜王、最年少四冠達成に向けてブーストした棋聖戦ストレート防衛「内容的には際どい将棋が多かった」 | ニュース | ABEMA TIMES

2022年新春インタビュー（ABEMA）

2022/01/01 11:00

今は将棋界の最高峰タイトルも保持し、名実ともに棋士のトップに立ったと言われる藤井聡太竜王（王位、叡王、棋聖、19）。昨年の1月は王位・棋聖の二冠で、このタイトルを守れるか、さらには1つでも増やせるかというのが周囲の見立てだったが、8タイトルの半数を占めるという、予想をはるかに上回る結果を出した。本人も「実力以上の結果が出た」と振り返るが、最年少での四冠達成へのブーストとなったのが、ヒューリック杯棋聖戦五番勝負で、渡辺明名人（棋王、王将、37）に3連勝のストレート防衛を果たしたこと。「内容的には際どい将棋が多かった」と語るが、このタイトル初防衛が後の快進撃の呼び水となった。

昨年6月に開幕した棋聖戦の五番勝負。一昨年は藤井竜王が渡辺名人の持つ棋聖のタイトルに挑戦するという、全く逆の立場だった。その時は藤井竜王が3勝1敗で奪取に成功し、最年少でのタイトル獲得記録を更新。当時「現役最強」とも呼ばれていた渡辺名人からの奪取は大きなインパクトを残した。ところがリターンマッチとなった昨年の五番勝負は、激戦が予想された中で、スコアだけ見れば3勝0敗。渡辺名人にとっては、タイトルをかけた番勝負で初のストレート負けということでも注目を集めた。藤井竜王の、この五番勝負の感想はこうだ。

藤井竜王　渡辺名人とは棋聖戦で対戦して、その結果は幸いしたんですけど、内容的には際どい将棋が多かったですし、序中盤のプランという面で、うまくペースをつかまれてしまった将棋も多かったので、改めて渡辺名人の強さを感じたシリーズでした。

昨年の春先から夏場にかけて、藤井竜王は特に序盤が課題だと、頻繁に口にするようになる。プロデビュー以来、ずっと高い評価が変わらない終盤力には、本人もそれなりの自信があるのかもしれない。ところがタイトルホルダー同士という超ハイレベルの将棋においては、序盤で作戦負けをしようものなら、その差をひっくり返すのは終盤で逆転するより難しい。白星こそ得られてはいるものの、危うい時間が長い将棋は、次に勝てる保証がない。この後に続いた豊島将之九段（31）との、3つのタイトル戦を戦っている最中にも、序盤の精度を高めることは続いていったが、この渡辺名人に3連勝したことが、自信にもつながりつつ、改めて努力すべきポイントが示されたことにもなっただろう。

多くの対局をこなすというスケジュール面でも、このストレート勝ちは大きかった。7月3日に棋聖防衛を果たしたが、7月13日からは豊島九段を挑戦者に迎えての王位戦七番勝負が始まった。もし棋聖戦で3連勝していなければ、第4局は7月18日と、時期が重なった。また棋聖戦が第5局の7月29日までもつれていた場合には、7月25日からの叡王戦五番勝負第1局とも重なり、3つのタイトル戦を同時並行するという超ハードな日々になっていたところだ。ファンとしては1局でも多く名局を楽しみたいところでもあったが、勝つべき将棋を落とさず、確実にものにしたことが、日本中を盛り上げる大記録につながっていた。
（ABEMA／将棋チャンネルより）

【動画】藤井聡太竜王が渡辺明名人を下して棋聖位を防衛した一局