（月刊将棋）Ｃ級２組の新鋭、好調折り返し　名人戦・順位戦、昇級３枠かけて：朝日新聞デジタル

第80期順位戦C級2組

2021年11月6日 16時30分

将棋の名人戦につながる順位戦には五つのクラスがある。最も下のＣ級２組には今期５３人が在籍し、三つしかない昇級枠を巡って戦いを繰り広げている。昇級戦線の先頭集団の中から、２０歳前後の新鋭の戦いぶりを紹介する。

■瞬発力、相手の狙い封じる妙手　服部慎一郎四段、５勝０敗

昨年４月にプロ入りした服部慎一郎四段（２２）は１０月２８日、第８０期将棋名人戦・Ｃ級２組順位戦（朝日新聞社、毎日新聞社主催）の６回戦で瀬川晶司六段（５１）と対戦した。服部の先手で、戦型は相懸かり。服部の攻めに対し、瀬川が反撃して力のこもった攻防が繰り広げられた。

図１・△７二同玉まで

先手が８一の角で７二の金を取り、後手が７一の玉で取り返して図１を迎えた。ここで服部は▲２九歩と歩を打った。後手から２八に飛車を打たれる隙を消した手だ。瀬川は「チャンスが来たかと思ったが、狙いを消されてやはり苦しいと感じた。ノータイムで指したところに、服部さんの才能を感じた」という。

▲２九歩以下△３五歩▲８五香△２五角に対し、取ったばかりの桂馬を打つ▲４七桂がぴったり。△８五桂に▲６六飛と飛車を活用し、この後は攻めがつながって服部が押し切った。服部は５勝０敗、瀬川は３勝２敗になった。

攻めの手段を考えたくなる終盤で、受け一方の▲２九歩のような手は浮かびにくい。服部は「数手前の局面に比べて盛り返されていると感じた。複雑に指していこうと思った。最善かどうかはわからないが、勝着になったかもしれない」と振り返る。今年は加古川青流戦で優勝して、勝数ランキングでは２位（２５勝、今月４日対局分まで）につけるなど勢いに乗っている。「順位戦の５局は中盤で苦労しているところもある。前半戦の反省を生かし、内容の精度を上げて強くなりたい」

■最年少「上位陣にプレッシャーを」　伊藤匠四段、４勝１敗

藤井聡太三冠（１９）と同学年で現役最年少の伊藤匠（たくみ）四段（１９）。昨年１０月にプロ入りし、今年１０月に新人王戦で優勝するなど頭角を現している。同２８日、Ｃ級２組６回戦で高野智史六段（２８）と対戦した。

図２・△６八角まで

図２は、高野が△６八角と打った局面。次に△６七成桂▲同玉△８六角成の狙いがある。ここで伊藤は▲８七金と引いた。後手の狙いを防ぎつつ、△同成桂なら▲６八玉と角を取れる。高野は△７八成桂としたが▲８八金が継続手。成桂と金の追いかけっこのような面白い手順だ。以下△６九銀▲同飛△同成桂▲同玉△８六角成に▲７七銀と打ち、後手の攻めは続かない。勝った伊藤は４勝１敗、高野は３勝３敗になった。

うまい手に見えた▲８七金だが、△同成桂▲６八玉に△７一金打と粘られると、後手陣の攻略は容易ではなかったという。伊藤は「少し前の局面で明快な寄せを逃してしまった。やや後味が悪い一局になった」と反省する。

前半戦の５局は、全て相手が２０代だった。「開幕前はそこで４勝１敗以上は取りたいと思っていたので、最低限の成績で折り返したという印象。（前期成績で決まる順位が低いため）昇級にはかなり厳しい位置だが、星を伸ばして少しでも上位陣にプレッシャーをかけられれば」

Ｃ級２組は服部の他、本田奎（けい）五段（２４）、西田拓也五段（３０）も５勝０敗。渡辺和史四段（２７）が５勝１敗で、伊藤や牧野光則六段（３３）ら７人が４勝１敗だ。７回戦は今月１１、１８日にある。（村瀬信也）

情報源：（月刊将棋）Ｃ級２組の新鋭、好調折り返し　名人戦・順位戦、昇級３枠かけて：朝日新聞デジタル

村）昨年プロ入りした服部慎一郎四段と伊藤匠四段。若手棋戦で優勝した２人の順位戦での戦いぶりに注目しました。才気あふれる将棋が見られました。
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— 朝日新聞将棋取材班 (@asahi_shogi) November 6, 2021