挑戦者決定三番勝負第1局は藤井二冠(左)が永瀬王座に勝った。永瀬王座の作戦は大方の意表を突く三間飛車だった(8月12日、将棋会館で)

な、なんと! 準決勝進出4人中3人が幼なじみ[山口恵梨子の将棋がちょっと面白くなる話] : 竜王戦 : 囲碁・将棋 : ニュース : 読売新聞オンライン

2021/08/19の記事


2021/08/19 10:00

竜王戦本戦も挑戦者決定三番勝負が始まり、いよいよ佳境に入ってきましたね。準決勝の左の山では永瀬拓矢王座が梶浦宏孝七段を破り、右の山では藤井聡太二冠が八代弥七段に勝ちました。タイトル保持者が貫録を見せつける結果になりましたが、準決勝の将棋がどちらも序盤からぐいぐいリードを奪いに行く激しい展開でとても面白かったんです。読売新聞の観戦記でじっくり読めるのを楽しみにしています。

同じ道場出身、月日の流れの速さよ…

準決勝の永瀬王座(手前)対梶浦七段戦。大接戦の将棋を永瀬王座が競り勝った(7月28日、将棋会館で)
準決勝の永瀬王座(手前)対梶浦七段戦。大接戦の将棋を永瀬王座が競り勝った(7月28日、将棋会館で)
準決勝の藤井二冠(右)対八代七段戦。藤井二冠が鋭い攻めで勝利を収めた(8月6日、関西将棋会館で)
準決勝の藤井二冠(右)対八代七段戦。藤井二冠が鋭い攻めで勝利を収めた(8月6日、関西将棋会館で)

将棋道場とは、席料を払えばお客さん同士で将棋を指すことができる場所のことです。友達同士で指すこともできますし、手合係さんがいるので、一人で行っても誰かと指せるように手合をつけてくれます。いまはオンラインで将棋を指すツールが普及していますが、基本的に棋士、女流棋士のほとんどが、小さい頃から通いつめた「出身道場」を持っています。たくさん指すことが一番の上達の近道ですもんね。

ただ、棋士、女流棋士、奨励会員になると、アマチュアの方々にお金を頂いて指導対局として将棋を指す立場になるので、一般道場で席料を払ってアマチュアの方々に交じって将棋を指すことは推奨されません。

じゃあ、どこで誰と将棋を指せばいいんだ!?となってしまうのですが、私たちは基本、同じ立場の人と研究会やVS(1対1の研究会)という形で将棋を指して勉強しています。関東だと棋士、女流棋士、奨励会員が集まって勉強しやすいように応援してくれている道場があって、それが蒲田将棋クラブや将棋サロン荻窪、両国将棋センターです。

「パソコンで1回見た棋譜は覚えられるんだよね」…永瀬王座

蒲田将棋クラブで将棋を指す永瀬王座(2015年6月撮影)。東竜門のツイッター担当をしていた時に撮らせていただきました
蒲田将棋クラブで将棋を指す永瀬王座(2015年6月撮影)。東竜門のツイッター担当をしていた時に撮らせていただきました

私も16歳の時に渡辺弥生女流に蒲田将棋クラブに連れて行っていただいてから、十数年以上お世話になっています。人見知りでほとんど話せなかった私に、席主さんが「将棋が強くなりたいのなら」と、たくさんの人と将棋が指せるように手合をつけてくださいました。蒲田将棋クラブの席主さんがいなかったら、私はいま女流棋士を引退していてもおかしくないくらい! 本当にいろんな人を紹介していただき、鍛えていただいた恩を感じています。

で、そこでよくお会いして、将棋を教えていただいたのが、永瀬王座、八代七段、梶浦七段です。

特に永瀬王座は、毎週水曜日の午後5時から永瀬研という後輩を鍛える研究会を開いてくださり、当時小学6年生だった梶浦七段と一緒に修業させていただいていました。永瀬先生はその当時、土曜日に子供教室の講師もされていたんですよね。16歳にして後進の育成も自身の勉強も全力を尽くされていて、すごいなぁと思っていました。

当時「パソコンで1回見たデータベースの棋譜覚えられるんだよね。将棋だからかな」と真顔で言っていたのが忘れられません。努力の人のイメージですが、尋常じゃない記憶力の持ち主だと思います。トークが面白いです。

シンデレラ・エクスプレス…八代七段、35手詰めを一目で…梶浦七段

対局前にのどを潤す八代七段。気合十分で藤井二冠にぶつかったが……
対局前にのどを潤す八代七段。気合十分で藤井二冠にぶつかったが……

八代七段は、奨励会員の仲間と土日によく研究会をされていたのですが、ある時、静岡に住んでいて、新幹線で研究会に来ていると聞いてびっくりしました。10代の時に静岡から毎週、新幹線に乗って東京に勉強しに来るって相当大変ですよね。

「午後8時過ぎに道場を出ないと家に帰れない! あぁ、でも、めっちゃいい勝負!」なんて言いながら明るく練習将棋を指し続けていて、「シンデレラみたいだな」と思っていました。地元静岡での普及活動にも尽力されていて、棋士仲間の信頼も厚い、明るい棋士です。22歳の時に全棋士参加の朝日杯という棋戦で優勝している、実力派棋士でもあります。お酒も強いです。

挑戦者決定三番勝負進出を逃した梶浦七段。本戦では青嶋未来六段、佐藤天彦九段、羽生善治九段を破り、今年も台風の目となった
挑戦者決定三番勝負進出を逃した梶浦七段。本戦では青嶋未来六段、佐藤天彦九段、羽生善治九段を破り、今年も台風の目となった

梶浦七段は、永瀬研の帰りの電車が同じ方向で、たまに一緒に帰っていました。とにかく真面目で優しく、トークが面白いです。師匠の鈴木大介九段、大師匠の故・大内延介九段も目に入れても痛くないほど、かわいがっていらっしゃる様子でした。

しかも将棋が強い! 東竜門という若手棋士グループの公開対局20秒将棋で、かなり難しい35手詰めを即座に読み切って勝利し、会場にどよめきが起きたのが忘れられません。終盤がめちゃくちゃ強い要注目の棋士です。

藤井二冠対永瀬王座、挑決三番勝負は力戦型か?

挑戦者決定三番勝負第1局は藤井二冠(左)が永瀬王座に勝った。永瀬王座の作戦は大方の意表を突く三間飛車だった(8月12日、将棋会館で)
挑戦者決定三番勝負第1局は藤井二冠(左)が永瀬王座に勝った。永瀬王座の作戦は大方の意表を突く三間飛車だった(8月12日、将棋会館で)

そして注目と言えば、藤井二冠と永瀬王座による挑戦者決定三番勝負。お互いにタイトル保持者かつ研究パートナーで、手の内を知っている仲。対局で当たったときは、流行から少し外れた力戦になりやすい気がします(山口恵梨子調べ)。

第1局は先手となった永瀬王座が三間飛車を採用するまさかの展開! 184手の大熱戦となりましたが、藤井二冠が王手をかけた2局目はどうなるのでしょう。藤井二冠が角換わりを選ぶのか? それとも永瀬王座の 雁木がんぎ ……? いや相掛かりか?
いまからどんな戦型になるか、楽しみにしています。
挑戦者決定戦、ぜひ読売新聞オンラインで追いかけてみてくださいね。

プロフィル

山口 恵梨子( やまぐち・えりこ )
日本将棋連盟所属の女流棋士。堀口弘治七段門下。16歳で女流棋士となり、2010年に初段、16年二段に昇段。白百合女子大学卒。将棋が好きな人のためになる情報満載の「 女流棋士 山口恵梨子ちゃんねる 」をYouTubeに開設。ツイッターは @erikoko1012

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30日に挑決三番勝負第2局