佐々木慎七段の現在地「20年目の棋士は私１人だけ。頑張ろうという気持ちになりますね」 – スポニチ Sponichi Annex 芸能

ほぉ・・

2021年7月1日 17:20

第71期ALSOK王将戦2次予選準決勝進出を決めた佐々木慎七段（撮影・我満　晴朗）

将棋の佐々木慎七段（41）が第71期ALSOK杯王将戦（スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催）の２次予選１回戦で佐藤康光九段（51）を退け、準決勝進出を決めた。６勝１敗と好成績をキープする2021年度は、プロ生活20年目の節目の年。佐々木が今期にかける思いとは――。

6月30日、王将戦２次予選１回戦。佐々木がプロ20年目にして初めてたどり着いた２次予選の舞台だった。本局の戦型は「この展開は想定していなかった」という相振り飛車へ。

「2、3年前はよくやっていた戦型なんですけど本譜のような左穴熊はやっていなくて、全く想定はしていない将棋でした。昔、佐藤先生との研究会に呼んでいただいた時に、似たような将棋をやったことがあったんですよね。佐藤先生と指したときのことを思い出しながら対局しました」

過去の記憶をたどり、中盤でリードの糸口を手繰り寄せる。

「感想戦で佐藤先生が（67手目）△5七桂成と切って強襲はちょっと無理筋っぽいとお話されていて、（68手目）▲8四歩で形勢は私の方が良くなりました。佐藤先生の終盤力、粘りはすごいですから、当然、勝ち切るのは相当苦労しました」

佐々木の目の前に座るのは、名人２期、竜王１期、棋王１期、棋聖６期、そして王将２期の経験を持ち、変幻自在な差し回しが光るレジェンド・佐藤康光。日本将棋連盟会長の重責を担いつつ順位戦はA級在籍、さらに王座戦挑戦まであと１勝に迫るなどその勢いは衰えを知らない。

「（ソフトの評価値での）形勢は負けようがないくらい開いていたと思うんですけど、そこは人間同士の勝負ですし、詰む詰まないまで読まないと怖いなと。ソフトは怖いとかないじゃないですか。ソフト（の数字的）には大差でも人間的には追い込まれているように感じるんですよね。（相手が）佐藤先生ということで気持ちの面でのプレッシャーもありました。時間がなかったら相当危なかったです」

過去の対戦成績は０―２。佐藤から初めて奪った白星、未踏の地だった２次予選での勝利に、興奮冷めやらぬ様子で一息に対局を振り返った。

プロ20年目の今年度は６勝１敗と好調をキープしている。通算成績を398勝として、こちらも400勝の節目が近づく。

「400勝の方はそんなに意識しないですね（笑い）。もっと早く達成しないといけなかった。でも、今年20年目の棋士は私１人だけになってしまったんですよね。やっぱり…、頑張ろうという気持ちになりますね」

わずかに言葉が止まった後、自分に語り掛け鼓舞するように深くうなずいた。

15日に予定されている準決勝では、「すごく仲が良い」という糸谷哲郎八段と対する。

「昔、対局日の昼休・夕休に外出できていた頃は、いつも一緒にご飯に行っていました。対局が東西で同じになったら、100％（笑い）。彼、頭が良いからいろんな話を聞けるのが面白いんです。久しぶりに将棋を指せるのをすごく楽しみにしています。もちろん糸谷さんの方が格上。私はチャレンジャー気分で気楽に指せる部分もあるんですけど、やるからには勝つつもりで頑張りたいです」

まるで少年のように澄んだ目を輝かせ、その胸の高鳴りが手に取るように伝わってくる。

「今期の一次予選、実は必敗の将棋ばかりだったんです。相当悪かったのになんとか（星を）拾ってきたので、すごくツイているなと思いました。今年の王将戦にはすごくツキを感じているので、願わくばあと2番くらいこのツキが続いてほしいですね。（挑戦者決定）リーグ入り…ここまで来たら狙いたいですよね」

２次予選３組に与えられた挑戦者決定リーグ行きの切符は１枚。暑い夏が終わる頃、切符を手にする強者は誰か。一戦一戦に期待が高まる。

佐々木　慎（ささき・まこと）　1980年（昭和55）1月21日生まれ、東京都中野区出身の41歳。故・関根茂九段門下。93年、6級で奨励会入会。2001年四段プロデビュー。07年度に公式戦13連勝を記録し連勝賞を獲得した。