探求者・藤井猛九段「戦法は悪くない。負けているのはおれのせい」振り飛車との生き様に後輩棋士が感動

探求者・藤井猛九段「戦法は悪くない。負けているのはおれのせい」振り飛車との生き様に後輩棋士が感動 【ABEMA TIMES】

ほぉ・・・


2020.09.27 11:00

将棋界の「藤井」と言えば、今でこそ最年少でタイトルを獲得し日本中の話題となっている藤井聡太二冠(18)を想像する人も多いだろうが、藤井二冠がデビューする前は藤井猛九段(49)だった。現在でも、解説やイベントでの軽快なトークで人気なベテラン棋士だが、なんといっても支持される理由は、アマチュアに人気の振り飛車で戦い抜いていること。一世風靡した「藤井システム」を考案し、その後も研究を絶やさない姿勢は、まさに“探求者”。成功と苦悩を振り返る言葉に、憧れていた後輩棋士は感動に目を輝かせた。

藤井九段は、竜王のタイトルを3期獲得、棋戦優勝も8回を誇る。1996年度は、先述した振り飛車の戦法「藤井システム」で、新手・妙手を指した棋士に贈られる升田幸三賞を受賞。その後のタイトル獲得にもつながった。まさに藤井九段の代名詞とも言えるものだ。ただ、どんな戦法も研究され、流行り廃りがあるのが将棋界の常。藤井システムの対策も進み、一時は振り飛車を諦めようとしたが、今度は角交換振り飛車に活路を見出し、2012年度にまたも升田幸三賞を受賞。獲得こそならなかったが、王位のタイトルに挑戦するなど見事な復活劇を演じた。この姿に感銘を受けたのが、生粋の振り飛車党・山本博志四段(24)だった。両者は9月24日に行われた王座戦五番勝負の第3局で、解説として共演。ここで振り飛車ファン、藤井九段ファンにとってはたまらないトークが展開された。

藤井九段

僕が8年ぐらい前、王位戦に出たころの将棋に影響を受けたそうで。角交換振り飛車を多用していた時の「藤井将棋」ですよね。間違いないですか。

山本四段

はい!そのとおりです。

藤井九段

珍しいね。普通は「藤井システムに影響を受けて」というのだけど。角交換振り飛車の時代を見て、影響を受けた人は初めて。新鮮な気がしました。

山本四段

当然藤井システムも知っているんですが、歴史上の出来事というか、伝記のような感じで(笑)自分が小学生のころは、藤井先生が(順位戦)A級でやられていたんですけど、藤井システムというよりも四間飛車穴熊とか「藤井矢倉」をやられていた時期でした。

「藤井矢倉」とは、振り飛車党の藤井九段が一時期、居飛車を指していた時期に用いていたもの。この時期が、後の角交換振り飛車での復活につながってくる。

藤井九段

思い出したくもない苦しい時期でした(笑)その苦しんでいるところを見て、それなりに感じるところがあったんですね。

山本四段

A級から降級されたんですけど、そこから角交換振り飛車という斬新な戦法で快進撃をされた。自分は奨励会員でリアルタイムだったし、将棋の内容もわかったので、すごく感動しました。

プロを志していた時期だからこそ、一度苦しみ始めたトップ棋士が、新たな戦法を自ら作り上げて復活していく姿は、ヒーローのように見えたことだろう。そして、ここから藤井九段が当時の心の葛藤を語っていく。

藤井九段

角交換振り飛車も偶然だよね、俺が指すようになったのは。今だから言いますけど。本当に僕は1回、振り飛車を辞めたんだから。辞めてもいいかなぐらいの気持ちで、矢倉を始めたんです。矢倉を始めた時は、このまま居飛車党になってもいいかなと。それぐらい成績が悪かった。本当に今までのものをバーンと捨てて、藤井システムだけじゃなくて「振り飛車はもういいや」と、居飛車をやってみようと思った。

現在でも、振り飛車党から居飛車党に転向するプロ棋士は多くいる。将棋ソフトでの研究が当たり前になった今でも、それを活用しての研究は居飛車の将棋が圧倒的に多く、対して振り飛車は少ない。ところが藤井九段は、一度は諦めたことが活路を見出すことにつながった。

藤井九段

(やめようとしたのに)なぜかやっている(笑)偶然なんだよね。居飛車側を持ってみたら、角交換振り飛車のようなものを相手にすることが多くて、「これ有力じゃん」と。自分は指すつもりがなかったんだよ、大した戦法じゃないと思ってなかったから。でも1回、居飛車の方に向きを変えてみたら、非常にいい戦法だと。何が成功するかわからない。ノーマル振り飛車に難しさを感じて、じゃあ角交換振り飛車だった、という話じゃない。まさかの矢倉を始めたら、角交換振り飛車の優位性に気づいた。

振り飛車を諦め、居飛車を指すようになってみたことで、自分が低く評価していた戦法の良さに気づく。そうして藤井九段は、また振り飛車に“帰ってきた”。藤井システムに続き、またしても将棋界に新たなトレンドを生んだ藤井九段。それでも一瞬の流行りに終わらせることなく、成熟させるところまで持っていくあたりが探求者だ。

藤井九段

だいたい新しい戦法というのは、おもしろいとみんなが飛びつくんですよ。そして、すぐやめちゃう。ちょっとやって不安があるとすぐやめちゃう。だいたいそう。でも、そこをやる以上は、ちゃんとやらないとダメ。本当にダメだなと思うくらい。私も負けまくっているから(今の戦法を)やめてもいいんだけど、負けているのはおれのせい。悪くないからやるんです。私が負けるから悪い戦法に見えるし、ソフトが厳しい判定を下すから流行らないけど、私の目で見て悪くない。

プロの棋士である以上、勝敗にこだわるのが当たり前ではあるが、藤井九段からすれば、自分がとことん調べていい戦法だとわかれば、とにかく指す。そしてまた調べる。仮にソフトの評価が低くても、改良を重ねればその評価すら覆るかもしれない。実際、そうして厳しい世界を生き抜いてきた。

藤井九段

今はノーマル振り飛車が流行っているけど、俺が負けていた時なんて見向きもされなかった。ノーマル振り飛車がダメになったから、藤井システムが出てきた。藤井システム全盛期は、ノーマル振り飛車の評価はすごく下だったし、藤井システムが苦しくなった後も上がってこなかった。それからゴキゲン中飛車と角交換振り飛車が流行って、でも今はなぜかノーマル振り飛車が流行っている。ソフトの評価もあるんでしょうけど、復活してきている。また変わるかもしれない。

かつて流行し、その後に廃れた戦法が再評価されて現代に蘇るというのも将棋のおもしろさ。実際、最年少タイトル保持者・藤井二冠が指した「土居矢倉」は、80年前に指されたものだったと話題にもなった。

歴史は変わるし、そして繰り返す。長く、プロの世界で劣勢になっている振り飛車も、力強く復活する未来があるかもしれない。その時、藤井九段はどんな新戦法を生み出そうかと、また研究に没頭する。
(ABEMA/将棋チャンネルより)

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