真田圭一八段【写真:本人提供】

藤井対羽生の”天才対決”、4戦目にして羽生が初勝利、羽生を「本気にさせた」戦いだった | ENCOUNT

ふむ・・・


2020.09.23

将棋の藤井聡太2冠(18)が、22日に都内で行われた第70期王将戦挑戦者決定リーグの初戦で、羽生善治九段(49)に敗れました。今回は、注目を集めた一局を振り返りたいと思います。

真田圭一八段【写真:本人提供】
真田圭一八段【写真:本人提供】

第70期王将戦挑戦者決定リーグ開幕局を総括
将棋の藤井聡太2冠(18)が、22日に都内で行われた第70期王将戦挑戦者決定リーグの初戦で、羽生善治九段(49)に敗れました。今回は、注目を集めた一局を振り返りたいと思います。

まず、本局の背景ですが、王将戦の挑戦者を決めるリーグ戦が新たに始まるタイミングで、リーグ戦自体の開幕局という位置づけ。藤井2冠は2019年、この王将戦のリーグ最終局で挑戦者決定戦を行い、敗れてその時点での最年少タイトル挑戦者の記録達成ならず、という悔しい思いをした棋戦。「今年こそは」の思いも強いはず。ご存じの通り、この王将戦挑戦者決定戦の後、20年春から夏にかけてたて続けにタイトルを2つ取り、藤井「2冠王」となって今や押しも押されもせぬ超一流棋士に。

一方の羽生九段はどうか。最盛期を知る者としては、近年の成績は不思議としか言いようがないものですが、実は直近に竜王戦の挑戦を決めたばかり。羽生さんにとっての最大のモチベーションは、タイトル数100の記録。現状99なので、あと1つのタイトル獲得での達成なのです。そのためのタイトル挑戦者の権利を手に入れたばかり。羽生さんの調子も意欲も、上向いている状況です。

これまでは藤井2冠の3連勝だった

中学生棋士という天才を証明する経歴を持つ2人の対戦。ここまでの公式戦での戦績は藤井2冠の連勝。意外にも偏っていて、全ての対局で藤井快勝という内容。今回の対戦は藤井2冠として、羽生さん相手に対局時に「上座」に座るという状況。藤井2冠にとって、いやが上にも第一人者であることを認識する状況ですが、これは今後も続いていくので慣れるしかありません。

ちなみに対局時の上座と下座の関係は、年齢や棋士年数より実績が優先されるので、今や藤井2冠の上座に座れるのは基本的に同等のタイトル2冠以上の棋士だけなので、圧倒的に上座に座る機会が増えることになります。

好調同士の一戦は、リーグ戦という負けたら終わりのトーナメント戦ではない状況も合わせ、余計なプレッシャーを両者が感じなくて済む、内容に専念しやすい状況での対局で熱戦が期待できました。

藤井2冠が一方的に攻めまくる展開に

その肝心の対局は、後手の羽生九段が横歩取りという戦型に誘導する展開に。対する藤井2冠の構想は非常に攻撃的で、攻めの力が問われる組み立てとなりました。あらゆる展開を苦にしない藤井2冠ですが、一方的に攻めまくる展開でどのように指すのか、これもまた楽しみな内容となりました。

ひとつ、特徴的だったのが46手目後手の羽生さんが△5五歩と突いた局面。ここは藤井2冠の指し手が、プロの目から見ても3通りはある局面で、どの手を選ぶかで後の展開が全く変わってくるという、非常に重要な局面。結果、ここで藤井2冠が選んだのは一番穏やかな選択肢。逆に激しく攻め合う順がどちらに分があったのか、プロでも意見が分かれそうな難解な変化であったことは確かです。

藤井2冠が穏やかな変化を選んだ結果、羽生九段の「強気」を引き出すことになりました。自陣に手を入れず、攻め合いに活路を見いだす展開で勝負をかけました。と言っても、基本的に藤井2冠の攻めが一手早く見える展開で、かなりの対応力と勇気がなければ選べない順です。

それを可能にしたのが54手目△4八歩。突如藤井玉の真横に飛んだ手裏剣。この手を見て私は直感的に、羽生さんが勝ちやすくなったのではと思いました。いかにも羽生さんらしい、才能を感じさせる一手だったからです。

藤井2冠が羽生九段の手のひらの上で踊らされる内容に

果たしてここからは、羽生さんが強さを見せました。「好きに攻めてこい」と言わんばかりの指し口で、藤井2冠に自由にやらせながら、結局、一手遅かったはずの攻めを間に合わせて、いつの間にか羽生勝勢になっていました。我々プロが表現するところの「強い勝ち方」というやつです。

これを実践するためには、あらゆる攻め筋をいなせるという判断力と読みの力、そして度胸が必要で、1か所でも読みに穴が開いていれば即負けとなります。現実的には羽生さんとはいえ全ては読み切れないので、感性と判断力も総動員しての選択だったと思いますが、まさに羽生将棋ここにありというような、非常に強さを感じさせる指し回しでした。

藤井2冠はどう感じたでしょうか? このような、まるで手のひらの上で踊らされるような内容は、これまで経験したことがなかったはずです。この懐の深さというような、円熟の至芸を経験したことは、今後の大きな財産となるはずです。これまで3戦3勝で、羽生さんの「怖さ」を知らなかった分、勝ちっぱなしであるより良かったと言えると思います。将棋には怖いものがいくらでもある。そのことを「天才の先輩」が教えてくれたと言ってもいいでしょう。

遂に羽生さんが本気を出したか…!

ここだけの話、私は今回の内容と結果を見て、「遂に羽生さんが本気を出したか」と思いました。もちろん、羽生さんがこれまで手を抜いていたという意味ではなく、相手が相応の立場と実績になれば、それに合わせて強い将棋を指してみせるという超一流にしかできない対応力を砕いて表現した言葉で、棋士の世界では昔から内々で使われているものです。いずれにしても今回の対戦では、新旧天才対決でようやく先輩が初勝利。羽生健在を強烈に印象付けました。

敗れた藤井2冠は、全く失うものはないでしょう。王将リーグもまだ始まったばかり。挑戦の可能性は全く失われてませんし、何より「強い羽生さん」を体感したことはむしろ喜んでいるかも知れません。今後はまだいくらでも2人の対戦はあるでしょう。いずれ両者にとってはるかに重要な、共に負けられない状況での対局もあるかも知れません。まだまだ成長するであろう藤井2冠と、円熟期で凄みを増す羽生九段、2人の対戦は名局の期待しかありません。

情報源:藤井対羽生の“天才対決“、4戦目にして羽生が初勝利、羽生を「本気にさせた」戦いだった(ENCOUNT) – Yahoo!ニュースコメント

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藤井聡太二冠 vs △羽生善治九段(棋譜DB棋譜

80手 2四金打まで、△羽生九段 の勝ち



  



羽生九段さすが、藤井聡二冠は残念でした。