名人戦の立会人として、羽生善治三冠(右端)に「封じ手」を示す加藤一二三さん(左端)。かつての最年少棋士も今や将棋界の重鎮だ=2014年4月、東京都文京区

(人生の贈りもの)わたしの半生 将棋棋士・加藤一二三:7 76歳:朝日新聞デジタル

7/全9回


2016年11月22日 16時30分

名人戦の立会人として、羽生善治三冠(右端)に「封じ手」を示す加藤一二三さん(左端)。かつての最年少棋士も今や将棋界の重鎮だ=2014年4月、東京都文京区
名人戦の立会人として、羽生善治三冠(右端)に「封じ手」を示す加藤一二三さん(左端)。かつての最年少棋士も今や将棋界の重鎮だ=2014年4月、東京都文京区

■18歳羽生と初対戦、新しい感覚に驚く

――1989年、NHK杯将棋トーナメントで羽生善治三冠と初めて対戦しました。羽生三冠は当時18歳で五段でした。

「落ち着いていて、シャキッとしているな」というのが第一印象です。今でも情景が、まぶたに浮かんできます。

――自信はありましたか。

羽生さんが天才だとは知っていましたが、「最善を尽くせば負けないだろう」と思っていました。私は、羽生さんと同じ「中学生棋士」だった谷川浩司九段、渡辺明竜王との初対戦では勝っているのですよ。

――この将棋は終盤、羽生三冠が「▲5二銀」という妙手で勝った、有名な一局です。

私の考えでは、この手は奨励会の初段があれば指せる手です。それより、そのしばらく前の「▲4八玉」という手に驚きました。相手の攻め駒から遠ざかるのではなく、近づくことになるこの手は誰も指せない手です。新しい感覚の持ち主だな、と感じました。

――初対戦では敗れましたが、2局目は勝ちました。

私のぶっちぎりの勝利でした。対戦成績は、初めの6局は私の4勝2敗だったんですよ(通算では加藤の6勝14敗)。

――羽生三冠の将棋の特徴は。

とにかく研究熱心で、作戦を練ってくるタイプだと思います。私が別の人に勝った将棋と全く同じ形を羽生さんが選んできたこともありました。恐らく事前に研究して、こちらにスキがあると思ったのでしょう。

――93年、羽生三冠と一緒に順位戦でB級1組から、名人挑戦権を争うA級に昇級しました。ご自身にとっては5回目のA級昇級でした。

若い頃は、A級から落ちてもまた楽に上がれると思っていました。その頃とは違い、この時の昇級はうれしかったです。

――羽生三冠は翌年、名人を奪取。そして96年には史上初めて七タイトルを独占しました。

七冠は文句なしに素晴らしい。私は三冠にもなったことがありませんから。

――羽生三冠は今も王位、王座、棋聖とタイトルを三つ持っています。昨年、加藤さんの記録を抜き、勝ち数が歴代2位になりました(21日現在で羽生1361勝、加藤1323勝)。

羽生さんの勢いが止まらないから抜かれちゃった。本当は「抜きつ抜かれつ」になれば面白いと思っていたけれど、そうならなかったのは不本意です。ただ、史上1位の私の対局数を抜くのは難しいのではないでしょうか(羽生1901局、加藤2493局)。

――立会人として、羽生三冠のタイトル戦の現場にも立ち会ってきました。

一つ思い出がありましてね。王位戦で立会人を務めた時、私が心の中で引っかかっていたささいなことを会食の場で話したことがあります。すると対局後、羽生さんが「加藤先生、あの話はこういうことではないでしょうか」と説明してくれたのです。対局中は将棋に集中するのが当たり前ですが、羽生さんのそんな思いやりに感激しました。最近は将棋の強さだけでなく、存在感の大きさも改めて感じます。会った時に緊張するのは羽生さんだけですね。(聞き手・村瀬信也)=全9回

情報源:(人生の贈りもの)わたしの半生 将棋棋士・加藤一二三:7 76歳:朝日新聞デジタル


加藤一二三九段 vs 羽生善治五段

羽生善治四冠 vs 加藤一二三九段

https://www.youtube.com/watch?v=Al0jpBuNsk4&hd=1



ほぉ・・・