加藤一二三(将棋棋士)

天才は「節目」をなんと読む? ひふみんが驚嘆した藤井聡太の”語彙力” | PHPオンライン 衆知|PHP研究所

ふむ・・・


2019年10月21日

加藤一二三(将棋棋士)

加藤一二三九段。「神武以来(じんむこのかた)の天才」と称され、中学生にしてプロ棋士に。藤井聡太七段(2019年現在)に破られるまで、62年間最年少棋士の記録を持ち続ける一方、2017年には最年長勝利記録も樹立。将棋界において数多の記録を樹立したレジェンド棋士である。

その一方、その天真爛漫なキャラクターと語り口から”ひふみん”の愛称で親しまれ、2017年の引退後も将棋の解説にとどまらず、各メディアに引っ張りだこの人気ぶり。

そんな加藤一二三さんが上梓した新著『感情の整理術123(ひふみ)』では、「怒ったら損だから絶対に怒らない」と決めて、勝負の世界で長年実践してきた「感情の整理術」を披露している。

本稿では同書より、加藤一二三さんが天才と認める棋士たちのエピソードに触れた一節を紹介する。

※本稿は加藤一二三著『感情の整理術123(ひふみ)』(PHP研究所刊)より一部抜粋・編集したものです。

佐藤天彦九段の「表現力」に感心した

棋士と話をしていると、将棋の天才はいっぱいいますけれど、普通に日常的に頭がいいなと思うのが佐藤天彦さんです。攻めが強いし、話の内容も話し方も頭がいいなと思うのです。

わたくしが引退する前に、佐藤さんとの対局がありました。簡単にいうと、わたくしが佐藤さんに勝てば、引退はかなり先になるという制度だった。

そのとき、佐藤さんは、ある番組で次のようなことを言っていまして、なかなか巧みな表現だと思ったのです。

「こういう状況の中で戦うわけですけれども、わたしは加藤先生のオーラを身に受けながら、勝つための将棋を指す」

偉いなあと思ったのは、その状況のなかであっても、自分は勝つための将棋を指そうと決意している、その言いまわしがやはりうまい。

それと、佐藤さんはクラシック音楽が好きで、番組でこうも語っています。「名曲『スコットランド』の出だしは静謐(せいひつ)な雰囲気から始まって、あと、魂のうねりとなっていくんだけれども、加藤先生の将棋というのはそういう将棋」であると。

わたくしは「静謐」という言葉を使えないので感心しました。「静謐」という言葉を何気なく使えるように、佐藤さんは表現力もひじょうに豊かで、なかなかいい言いまわしをなさいます。

彼の話は、ぶっきらぼうじゃない。一つのことを言うのに、二つ三つ表現を重ねていって、その結論を言う。テレビ番組で共演したときに、その言いまわしがやはりうまいなと思ったんですよ。

言葉と言葉と言葉がひじょうに巧みにつながっていくんです。つまり平凡な表現はしない。そうとう優れた表現力ですね。言いまわしや言葉がどこをとっても魅力的なんです。

大先輩を相手にしても「可愛い」と言えるすごさ

藤井聡太さん(当時、四段)のデビュー戦は、わたくしと戦いました。わたくしが負けたんだけれども、戦ったあとの感想をアナウンサーが求めたときの藤井さんの言葉はこうでした。

「加藤先生がおやつを取り出して食べたのを見て、その仕草が可愛らしいと思った」って。

わたくしはそれもまた仰天しました。だって、14歳の少年ですよね。わたくしは一応、将棋界のいわば長老で、しかも初対局です。普通は緊張しますよ。

緊張するのが当然なのに、わたくしがおやつのチーズを取り出して食べ始めたのを見て、それが可愛らしい仕草だと言う。この「可愛らしい仕草」というのを彼が使ったときに、わたくしはやはりある意味、感心しました。

いや、わたくしはね、14歳当時に、そんな大先輩の仕草を「可愛らしい」なんて思ったことはありませんでした。もっと緊張していましたから。
でも、それを皮切りに、藤井さんは一般の方々にも注目されていきました。

次にほかの棋士と戦って勝ったときに、藤井さんはね、「僥倖(ぎょうこ
う)でした」と言ったんですよ。

40歳くらいの棋士が、「いや、僥倖でした」と言ったら、それは普通かと思う。14歳の少年が勝って「僥倖だ」と言っているのには、また驚きました。

僥倖という状況でもし自分なら、「何とか一生懸命指して勝って嬉しい」という表現になりますが、藤井さんは「僥倖だった」と言うわけです。

ひふみんをびっくりさせた「楽しんで指す」

ほかにも感心させられたのが、われわれは普通に「人生の節目(ふしめ)
」という言葉を使いますよね。「人生の節目がありますよ」と。彼は「節目(せつもく)」という言葉を使ったことがあるんです。

「せつもく」なんていう言葉、わたくしはあるなんて知らなかった。新聞記者に聞いてもね、知らなかったって言っていましたよ。でも、彼は「節目(せつもく)」と「節目(ふしめ)」の両方、言い分けている。これにも驚かされました。

それから、これもおもしろかった。たとえば、将棋界のトップの棋士と戦う前の決意表明で、「対等の気分で楽しんで指したいと思う」と言うんです。

わたくしは将棋界の達人、名人たちのことを知っていますけれども、将棋の世界の達人の決意表明は、「最善を尽くして頑張ります」と言うのが通例です。

とにかく「何はともあれ、一生懸命頑張っていい将棋を指す」と。ある意味、それに尽きるんですよね。それしか言いようがないんだけれども、そこを藤井さんは、「楽しんで指したいと思って」と。

いやね、まだ彼は14歳で四段(当時)ですよ。それが、将棋界のトップと戦うときに「楽しんで指したい」と言われたら、相手は、びっくりしますよ。でも、それで勝つんだから。

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