活字に触れて、広がる世界 新聞週間に寄せて 羽生善治さん、佐藤亮子さん、佐々木圭一さん:朝日新聞デジタル

へぇ・・・


2019年10月13日05時00分

日本新聞協会と全国の会員新聞・通信・放送社は、15日から始まる「新聞週間」に合わせ、将棋棋士の羽生善治さん、教育アドバイザーの佐藤亮子さん、コピーライターの佐々木圭一さんの3人に、活字と触れ合うことの重要性や日ごろの情報収集、新聞に対する思いを聞きました。

■論理思考、将棋の「読み」にも 将棋棋士・羽生善治さん

羽生善治さん
羽生善治さん

将棋を始めたのは小学1年生だった。時を同じくして新聞を読むようになった。新聞には「将棋欄」があり、プロが指した次の一手を考えることが日々の楽しみだった。

最初は将棋欄だけだったが、次第に社会面の漫画、スポーツ面なども読むようになった。「更迭」とか「玉虫色の決着」とか、子どもの時にはわからなかった言葉の意味が大人になるにつれわかるようになり、新聞の活字に触れながら自然に語彙(ごい)力がついた。

外国で対局をしたり、海外旅行をしたりするようになった20歳ぐらいからは国際面をじっくり読んでいる。インターネットニュースは速報性が最大の武器。それに対して新聞は、ニュースを俯瞰的(ふかんてき)にみることができて、世界でいま何が起きているのか、動向を把握しやすいという良さがある。

新聞紙面は限られたスペースや、ある程度決まった文字数で記事がまとめられているので、読んでいるうちに理路整然とした文章力が身につけられると思う。ロジックを積み上げるという意味では、将棋の「読み」と共通するところもある。小中学生は、自身が興味を持っている分野の記事から新聞に触れることで、まとまった文章を読む力がつくのではないか。

将棋界に関する記事で言うと、ここ3年くらいで大きく様変わりした。最年少棋士の藤井聡太七段が29連勝という新記録を打ち立て、将棋の話題が1面に載るようになった。本当にありがたいことで、今後は記事を通して勝敗だけではない将棋の価値や文化的な側面を伝えることが棋士の役割だと考えている。

はぶ・よしはる 1970年埼玉県所沢市生まれ。15歳で四段、中学生棋士に。89年、19歳で初タイトルの竜王を獲得。96年には将棋界初の七冠となった。通算タイトル獲得数は99期。2017年、「永世七冠」を達成した。49歳。

■15分でもいい、使い尽くして 教育アドバイザー・佐藤亮子さん

佐藤亮子さん
佐藤亮子さん

毎朝、新聞を読んでいる。戦争の記事は、泣きながら読むから、子どもには「ママ、また泣いてる」と、よく言われた。

子どもに「読みなさい」と言ってもだめ。「この人は93歳で、戦争の時にね……」と、記事を示して語りかけていた。すると、子どもも読む。「ママはこう思う」と言うと、「ママはそうだけど、僕は……」。自分の意見が出てくる。

新聞は鍋物と一緒。色とりどりの具材(情報)が入っている。読み切るまでが短くて、分かりやすい言葉で書いてある。子どもが読んで考え、親と意見を交わすのにちょうどいい。

時代はものすごいスピードで変化している。親自身もアップデートしないと。何となくでいいから、時代の流れを知るためにも、読んでほしい。新聞は多様な人に出会える場でもある。自分の生き方を微調整できるのも魅力だ。

構えなくていい。私が新聞を開く時間は1日15分。忙しい時は、気になった記事を破ってかばんに入れて隙間時間に読んでいた。料理をしながら読んで、読み終わったらコンロ周りの油を拭き取ってポイ。で、次の日にはもう新品が届く。

子どもが四字熟語を覚えるのが面倒と言うから、赤ペンで四字熟語を囲んだ新聞を見せたら、「まじか」と驚いた様子。テストのためでなく、今の勉強が社会につながっていることを伝えるのにも、新聞は格好の材料だと思う。

今、人とやり取りする中心はSNSになった。読み書きはこれからの時代こそ大事だ。だから、子どもが18歳までは新聞を近くに置き、使い尽くしてほしいな。

さとう・りょうこ 大分県出身。津田塾大学卒業後、私立高校の英語教師に。結婚後は奈良県で3男1女を育て、全員が東大理3(医学部)に合格した。「佐藤ママ」の愛称で、受験や子育てについて各地で精力的に講演を行う。

■読まないのは、もったいない コピーライター・佐々木圭一さん

佐々木圭一さん
佐々木圭一さん

コピーライターで言葉を扱う仕事をしており、新聞は身近な存在だ。子どものころも新聞が家にあるのが当たり前の環境だった。今は気になるニュースがあるときに、一般紙からスポーツ紙まで複数の新聞をまとめ買いして読み比べることが多い。

人間は情報をとり続ける生き物だ。ニュースを伝える新聞の機能がいらなくなることはありえない。「紙」という媒体もそう簡単に消えないと思う。インターネットで新聞を読むと検索機能などで便利さを感じるが、パソコンでも画面は小さくて作業しにくい。紙の新聞は大きく、情報を一気に発信する力がある。

新聞は文章の磨き方もすごいと感じている。練り上げた文章が多い。

一方で新聞の特長は世間にあまり伝わっていないのではないか。日本の企業は実力は高いのに、その伝え方がうまくないというギャップがある。

日本新聞協会のプロジェクト「新聞科学研究所」で調査をしてみて、新聞の良さを改めて強く実感している。例えば子どもに将来の夢があるという回答の割合は新聞を読む家庭では52・6%。新聞を読まない家庭に比べて10ポイント以上も高い。ロケットの打ち上げのように、新しく面白いニュースを子どもが吸収できるからだろう。

新聞購読者は防災に関する意識も20ポイント近く高い。やはり情報量が多いからと考えられる。毎朝宅配で届くことで生活のリズムができるからか、寝坊が少なくなるというデータもある。新聞は人生をちょっとよくするきっかけになりえる。読まないのはもったいないと強く思う。

ささき・けいいち 1972年横浜市生まれ。上智大学大学院を修了後、博報堂入社。国際的にも活躍。2014年、株式会社「ウゴカス」設立。著書「伝え方が9割」は134万部突破のベストセラーに。47歳。

■新聞よんでやってみた、ツイッター・インスタで募集

新聞協会は「学生×新聞科学研究所」キャンペーンを実施している。新聞を読んで実践したことを、感想とともにツイッターもしくはインスタグラムに投稿する企画で、大学・大学院生と専門学校生が対象。

新聞の魅力が伝わる応募作品に賞を贈る。最大40件を入選作品(商品券5千円)とし、うち1件をMVP(賞金10万円)に選ぶ。特設サイトおよび新聞科学研究所の公式ツイッター(@np_labo)、インスタグラム(newspaper_labo)で発表する。

募集期間は10月30日まで。応募の際は、新聞科学研究所の公式SNSをフォローし、新聞記事を参考に実践したことを感想や写真とともに投稿する。読んだ記事のURLか、紙名・日付・見出しも記載する。

問い合わせは「学生×新聞科学研究所」キャンペーン事務局np-labo@pressnet.jpへ。特設サイトは(https://np-labo.com/special2019別ウインドウで開きます)。

■新聞科学研究所とは

さまざまな調査結果を通じ、新聞を読むメリットを伝える新聞PRキャンペーンで、新聞協会が2018年4月から始めた。勉強や就職、結婚や育児など多面的な切り口で新聞の有用性を検証・発信している。調査結果はウェブサイト(https://np-labo.com/別ウインドウで開きます)やSNS、新聞広告で紹介する。

情報源:活字に触れて、広がる世界 新聞週間に寄せて 羽生善治さん、佐藤亮子さん、佐々木圭一さん:朝日新聞デジタル



まぁ、読むのは朝日新聞である必要はないよな。